39話 モフモフとバロバロスの戦い
「お頭! 料理にするより毛皮にした方がよさそうですぜ。見てくださいあのモフモフ。きっと枕とかにしたら気持ちいいですぜ」
「馬鹿野郎! この俺様のアジトに侵入したんだ。生きて返さないのは当たり前として、見せしめとして食うんだよ」
見せしめって誰に見せるんだ? そう思いながらも俺は壁を駆け上り、バロバロスが振る斧を躱す。
遅い遅い。バロバロスの斧の一振り一振りは洞窟の壁を抉る高威力だが、いかんせん振りが襲い。これならバネ形態にならなくても余裕で躱せる。
「ちっ、すばしっこいやつめならこれでどうだ」
そういうと俺の目の前に土の壁が生えてくる。バロバロスの魔法だ。俺の進路をふさぎそこに斧を当てようという魂胆らしい。
だがあまい俺は壁を駆け上るだけじゃなく空も飛べる。俺は壁からくるりと離れて空中で斧を躱す。
「そこだぁ! おら!」
空中に回避した俺を狙うバロバロスの攻撃だが、俺はそれを空中で舞う事によって交わした。
「なっ、こいつ空を飛べるのか」
二人組の一人が驚きの声を上げる。
「関係ねぇ! ただぶっ潰すのみよ!」
斧をめちゃくちゃに振り回し、さらには地面からもつららのように尖った土の槍が俺を狙う。
俺は全て器用に回避しようと思ったがさすがに無理だ。白銀色に体毛を変えて俺はバロバロスの斧を弾く。
「ぐっ」
「きゅー!(そこだ!)」
斧を弾かれ隙のできたバロバロスの脇に俺はしっぽフレイルをぶつける。
バロバロスは吹き飛ばされ壁に叩き付けられた。
「ぐふぅ」
よし、今の内だ。俺はその間に角ウサギの煮込みに近づく。
その時である。急に洞窟全体が揺れ天井が崩壊した。土雪崩と砂埃が舞い、バロバロスの部屋がめちゃくちゃになる。それを俺は白銀色になることで回避し、バロバロスや二人組は魔法で防いだ。だが土ぼこりの中でさらに衝撃が伴い。秘密基地が崩壊していく。
一体何が起きているんだ。そう思いながらも俺は白銀色の体毛でガードするしかなかった。
「きゅーちゃん大丈夫かな?」
ロルルは草陰に隠れながらきゅーちゃんの行方を心配していた。きゅーちゃんが入ってからもう十分は経つ。
その時、ロルルの肩をポンと叩く一つの影があった。
「きゃぁ、ってなんだ師匠じゃないですか。家から出て来て腰は大丈夫なんですか?」
ロルルが驚き後ろを振り返るとそこにはロルルの魔法の師匠であるおばあちゃんのハルルがいた。肩には白いカラスを乗せ、箒に乗ってフワフワと浮いていた。
「大丈夫じゃないわい! 届け先から来てないって連絡があったから無理して家からあんたを探しに来たんだよ! まったく世話の焼ける孫だねぇ」
そういってハルルはロルルを叱った。
「ごめんなさい、師匠。でも今はそんな場合じゃないんですよ。ここバンダナ盗賊団のアジトの近くなんですよ」
「盗賊団のアジト? 何でまたあんたそんなところに? まぁ、いいわい。久しぶりに外に出たし人暴れするかねぇ」
そういうとハルルはカッカッカと笑った。
「違うよ師匠! 目的は盗賊団の討伐じゃなくてお届け物の奪還でしょ。戦う必要はないよ」
「そんなこといったってねぇ、どうせ届け物を盗賊にとられたとかそんなだろう。だったら戦いは回避できないじゃないかい」
「うっ、確かにそうだけど。今はきゅーちゃんが潜入してくれていて……」
「きゅーちゃん?」
そこでロルルはきゅーちゃんについて話した。それを聞いてハルルは、
「まさかあんたそれは聖獣フェルエーラのことじゃないだろうね。聞いてる限りそう聞こえるんじゃが」
ハルルは博識で聖獣フェルエーラの事もよく知っていた。
「聖獣!? さすがきゅーちゃん、凄いと思ってたけど聖獣だったなんて!」
とその時である。盗賊団のアジトに何かが墜落し、アジトのある崖が崩れていったのは。
「あわわわわわわーー!! 何これ、地震!?」
「まさか! もう魔人に目を付けられたのか!?」
そういうハルルの顔からは冷汗が垂れる。
そして盗賊のアジトがさらなる衝撃で崩れ、全ては破壊し尽くされた。そしてその崩れた瓦礫の中心に立っていたのは、一人の魔人だった。




