38話 盗賊団のアジトの中のモフモフ
「よし、こっそり侵入して角ウサギちゃんを奪取しよう!」
それが悩んで手に入れたロルルの回答だった。
そうか、そうと決まれば、俺もそれに従おう。
「まずはあの二人を追跡するよ」
俺たちはバンダナを左腕に付けた二人組を、追跡した。といっても一分もしない内に秘密基地に到着し、二人はその中に入っていった。
秘密基地は崖に穴を掘って作ったもので、とても簡素な作りだ。
それゆえに入り口らしきものが見張りがいるひとつしかない。
これは困った。こっそり侵入するも何も見張りがいるんじゃ、侵入できない。
俺だけ透明になって侵入するか?
うん、それがいい気がしてきた。
俺は身振り手振りと目の前で透明になることでその意図を伝えた。
「うーん、危険だと思うけど、きゅーちゃんがいいなら。大丈夫?」
「きゅー(大丈夫大丈夫)」
と俺はこくりと頷いた。
盗賊がどれだけの物か知らないが、魔力探知に長けているものが居なければ大丈夫だろう。
「あ、きゅーちゃん気を付けてほしんだけど、頭にバンダナを巻いた頭領のバロバロスっていう奴は相当の手練れ、危険度Aランクって聞いてるよ。土の魔法が得意なんだって、だからバロバロスには気を付けてね」
バロバロスか、きっと魔力探知にも長けているだろう。気を付けなければ。
「きゅー(分かった)」
そう答えるとともに俺は早速透明になる。
「気を付けてね。きゅーちゃん」
ロルルが草陰に隠れながら言った。
「きゅー(任せとけ)」
俺は透明な状態で答えると、トテトテと歩き出す。そして見張りがいる根城にたどりつく。
「あいつら、あの変な角ウサギを食べれるか相談してたが、それ以前に食べようとするなよ」
見張りは入り口でぼやいていた。その横を透明な状態で堂々とトテトテと通り過ぎる。
余裕だぜ。
そして俺は中を見て回った。
盗賊たちの数は全員で三十人って所か、全員が男で左腕にバンダナを巻いていた。そして俺に気付く様子はこれっぽっちもない。
あの二人は食べれるかどうかを相談していたからいるなら食堂のはずだ。そう思い俺は食堂らしき場所を目指し歩いた。
しばらくして俺は食糧庫らしき場所に辿り着いた。ここに角ウサギが置いてあるといいんだが……。
中を見てみると狩猟された魔物や果実が置いてあった、しかし角ウサギの姿はない。
(あれは!)
だが、リンゴリンならあった。それも熟してとても美味しそうな奴だ。
(今はそんなことをしている場合じゃないが、ちょっとぐらいならいいか)
俺は熟したリンゴリンを手に取るとむしゃむしゃと食べた。
「おい、だれだ! 勝手に盗み食いしてるやつは!」
(ギクッ)
俺の食べる音に誰かが気づいたらしい。やばい……見つかるかもしれない。
「あれ、誰も居ねぇじゃねぇか気のせいか」
(ほっ、セーフ)
盗賊の一員は俺が透明になっていたこともあって気づかなかったようだ。
そして俺がリンゴを食べ終えたとき、洞窟内に怒号が響き渡った。
「おい、こんなもの食べれると思ってんのか! ああ!? お前らはこの俺様をなめてんのか?」
声のする方に向かうと、そこには煮込まれた角ウサギとそれを前に激高する二メートルを超える巨大な男と、俺たちが後を追った二人組の姿があった。
「いや、お頭。でも食べれるかもしれないじゃないですか」
「食べれるか、ドアホ! 見てみろこの煮込んだスープを、真っ黒じゃねぇか! それにこのウサギ半分ほど鉱石の様なものに覆われてるよな。俺の歯が砕けろとでも思ってんのか? ああ?」
あいつらそのまま調理して、しかもバロバロスに出したのか、確かにドアホだな。
「だがしかし、お前らよりドアホな奴がいるようだな」
そういうとバロバロスは背負っていた斧を俺のいる方向へ投げつけた。
やばい! ばれてる!
とっさに俺は体毛を白銀にして防ぐ。斧は弾かれ壁に刺さった。
「ほう、人ではなく魔物だったか。誰かの差し金か?」
そういってバロバロスは壁に刺さった斧を抜き取る。
ばれてしまってはしょうがない。戦闘は避けられないようだ。
「この変な角ウサギの煮込みよりはうまそうに調理できそうじゃねぇか。今日の晩飯にしてやるぜ!」




