32話 モフモフとアレクの戦い
魔人アレクとの戦いが始まった。
アレクははめた魔王の籠手に黒い靄を纏わせながら、俺に殴りかかって来る。
白銀色で今までなら受けるところなのだが、魔王の籠手の攻撃は俺に少なからずもダメージを与えてくる。俺はバネ形態になり回避することを選んだ。
ばいんっとその場から跳ねて、アレクの攻撃が空を切る。
「ああ? なんだそりゃ!?」
アレクは目を丸くしていた。アレクの知る聖獣はこんなことをやらないのだろう。そういう俺の中のイメージの聖獣も、尻尾を巻いて跳ねるなんて妙なことはやらないのだが。
「きゅー!(くらえ!)」
俺は宙に浮いたままくるりと回転し、しっぽフレイルをアレクに向けて叩き付けようとする。だが、命中しない。するりと横にスライドしただけで回避されてしまう。そのまま伸びた尻尾を籠手で掴まれて、こっちが地面に叩き付けられてしまった。
といっても俺はゴム体質なので叩き付ける分にはダメージはない。
「そりゃ、よ!」
そしてアレクは俺を空中に投げ、魔王の籠手で俺に殴り掛かった。咄嗟に白銀色になるが、普通に殴られたような鈍い痛みが体を走る。
「きゅー!(痛ぇ!)」
意識が揺らぐとか、呼吸が苦しくなるとかいうほどのダメージではないが普通に痛い。だがそれは相手も同じはず、俺が白銀色になって魔王の籠手にしっぽフレイルを叩き付けたときは少しだけ魔王の籠手は欠けた。ということは白銀の俺を殴ることで魔王の籠手にもダメージが入っているはずだ。
「オラオラオラ!!」
地面に墜落した俺に、容赦なくアレクが魔王の籠手で殴る。一撃で地面にヒビが入り、二撃目で広場は砕け、三発目で広場が陥没する。
そのたびに俺は鈍い痛みに襲われる。
「どうした、時間稼ぎするんだろ! そんなものなのか聖獣の力ってのはよ! あ?」
ここで俺は疑問に思った。
(こいつ、自分から広場を破壊して、魔法陣の中心で最も壊したらいけない部分じゃないのか、ここは? それとも水路じゃないと別にいいのか?)
俺は真相を確かめるべく、しっぽフレイルで牽制しながらも水路の方に移動する。
だがアレクはお構いなしにと俺を攻撃してきた。衝撃で俺の体に痛みが走り、水路の一部が崩壊する。
「きゅーきゅー!(お前、この水路は魔法陣になっているんじゃないのか!)」
そういうとアレクはおおっ、と声を上げてニヤリと笑った。
「気づいたか、そうだ。この魔法陣はもう用済みだ。破壊すれば何とかなるとか言ったのはあのバカ女の思い込みだ。本当は俺が言った通りこの籠手を破壊するしかない。時間稼ぎをするべきはお前らじゃなくて、俺の方だったんだよ。キヒヒヒヒ!」
何てことだ。俺は空を見上げると皆既日食もかなり進んでいた。アレクとの戦いですでにそれなりの時間が経過している。残り時間は十分もないだろう。
どうすればいい?
俺の魔王の籠手狙いの攻撃はすべて躱される。それに魔王の籠手にダメージが攻撃するたびに入るなんてあっちも気づいているだろう。
あれ? ならあいつは何で他の方法で攻撃して来ないんだ?
さっきから魔王の籠手で攻撃するばっかで、他の攻撃手段はとらない。とっても意味がない? それとも取れない?
俺は一方的に殴られつつもそんなことを考えていた。
刻一刻と時間は迫る。
相手の連撃が激しすぎて白銀色の体毛を解除して、攻撃に転じる暇もない。
あと残りわずかで皆既日食も終わる! このまま終わるのか、そう思った時だった。
小さな炎球が飛んできて、アレクの目に命中した。
「うおっと、何だあ?」
しかし、アレクにダメージはない。アレクは小さな炎球が飛んできた方を見る。そこには、息も絶え絶えなヒスイの姿があった。
「きゅーちゃんに……手を……だす……な」
そういうとヒスイは気絶し地面にばったりと倒れる。
「何だったんだ? まぁ、いい」
とアレクが呟く。その隙に俺は宙に舞っていた。
一か八かだ! 俺はくるりと回転し、白銀色のしっぽをアレクめがけて振り下ろした。




