27話 モフモフとネクロ
こどもたちとの鬼ごっこで俺は間もなく捕まえられた。バネ形態でばいんばいんして逃げたのだが、子供の運動神経はかなり良く、数も多かったために十分ほどで捕まった。
「きゅー(離せー)」
強引に逃げても良かったのだが、白銀色になって重くなると子供が怪我するかもしれないのでそれはやめた。
「よっしゃー捕まえたぞー!」
「よくやった子供たち、さぁその珍獣を私に渡すのだ」
こうして俺はネクロの用意した虫かごに入れられた。虫かごは木でできており、網目も狭い、そしてせまっ苦しい。
子供の手を離れたなら、白銀色になり虫かごを突き破ってもいいのだが、逃げても又追いかけられるだろう。それならメスか何かで解剖される瞬間に白銀色になって、解剖できないと諦めさせるのがいいのではなかろうか。
そうと決まれば、俺はせまっ苦しい虫かごの中で大人しくすることにした。
「よし、これは報酬の50ゴールドだ。みんなで仲良く使うんだぞ」
とネクロが50ゴールドを子供たちに渡すと、子供たちはわーいとどこかに去って行った。
「ふふふっ、さて時間に余裕がないが家に帰ってこの子を研究するか」
ご機嫌な様子でネクロが俺の入った虫かごを抱きかかえて、家に帰る。そこは思ったよりも普通の家で、ガチャッとドアを開けネクロは家の中に入っていく。
すると中から翡翠色の目をしたどこかネクロの面影を持つ少女が現れた。
「お姉ちゃん、おかえりー。また町で何か騒ぎとか起こしてないよね。変な陰謀論とか言ってさわいでないよね」
「騒いでいないいない。それより見てくれヒスイ。この珍獣を」
そういうとネクロは俺の入った虫かごをこれ見よがしに見せる。
「きゅーきゅー(いい加減狭いんだが、出してくれないか)」
「きゃー、何この子かわいい! お姉ちゃんどこで見つけたのこの子!」
「水路の縁をな、ふよふよと浮いていたんだ。そこを私がばしっと虫網でとらえたのさ。そしてそのまま虫かごに入れて持って帰って来たんだ」
おい、さらっと嘘を付くな。一回俺に逃げられただろ。
「ふーん、でもお姉ちゃんの運動神経だから、一回ぐらい逃げられたんじゃないの?」
さすが妹? と言ったところだろうか。しっかり姉の行動を見ていなくても把握しているらしい。
「ねぇ、ふわふわして柔らかそうだけど、抱きしめてもいい?」
「いいが、逃がすなよ。その子は解剖して私の研究に使うんだからな」
「えーーー!! ダメだよ。お姉ちゃん! こんなかわいい子を解剖するなんて! 私は断固反対!」
「いや、まぁ、ヒスイがそういうのなら解剖はなしにするか」
そういって俺をネクロは虫かごから取り出し、ヒスイに渡す。
「きゅーきゅ(やっと狭いところから脱出できたぜ)」
俺はなされるがままにヒスイに抱きしめられてなでなでされた。
「お姉ちゃん凄いよこの子、すっごい毛触りがいいよ。ほら!」
「うん、ほんとだな。毛皮にしたら高く売れそうだ」
「だから解剖はダメだよお姉ちゃん! この子は家で買うんだから」
「きゅっ!?(待て、俺は家で飼われないぞ!?)」
俺には天空の島へといく目的があるのだ。ずっと家で飼われているわけにはいかない。まぁ、皆既日食が起こるという一週間までならいいが。
「そうだな。ヒスイがちゃんと世話するなら……ってまだ私たちはこの子の事を何も知らないからな。文献で該当するのがないか調べてみよう。なにを食べるのかすら分からないし」
こうして俺の一週間ペットライフが幕を開けたのだった。




