26話 王都サザンロックのモフモフ
第四章 始まり
王都サザンロックは町中が水路で満たされているファンタジーな都市だ。移動もボートでしていたりするのが目に見えていた。
さらには馬と魚を融合させたような魔物が馬車の様に水上を泳いでいた。
「きゅーきゅっ(ここが王都サザンロックか)」
トテトテと水路の縁を歩きながら、俺は思っていた。
「きゅー(きれいな街だな)」
完備された水路、前世で画像だけ見たベネチアを思い出させる綺麗な街並み、至る所にあるマーライオンの噴水。
歩いているだけでも飽きず、観光をしている気分だ。しばらくはこの町に滞在しようか。
そう思いながら、街をトテトテと歩いていると、人の噂話が聞こえてきた。
「知ってるか、あの研究者の話、また町の陰謀論を唱えて牢にぶち込まれる寸前だったらしいぜ」
「ああ、またいつものか。それよりあの研究者、ネクロのあの話は本当か?」
「どうやら本当らしいぜ、一週間後に皆既日食が起こるって話。まぁ、本当っぽいなのはそれだけだけどな」
ほう、皆既日食か。前世では直に見れる機会があったにもかかわらず、見逃してしまったんだよな。
ちょうどいい、一週間後の皆既日食をみてからこの町を発つとしよう。
そうと決まればどうしようか、観光の続きでもしようか。
いや、ただ観光するだけでは勿体ない。せっかく飛ぶきっかけをマリーのおかげで掴んだことだし、飛ぶ練習をしながら町を見て回るか。
俺はあの時、一瞬だけ空を飛べたときの感覚を思い出す。自分自身の周りに魔力が渦巻いている感じだ。周りの魔力をコントロールしてその影響で空を飛ぶ。意識してみると案外簡単に浮かぶことが出来た。
ふよふよと地面から一メートルくらいの所を飛ぶ。しかしすぐに魔力のコントロールが上手くいかなくなり、どてっと地面に落ちた。
「きゅーきゅ(案外できそうで、完全に空を飛ぶには長そうだな)」
そこから俺は気のいい八百屋さんにリンゴリンを貰ったり、空を飛ぶ練習をしながら観光を続けた。
「きゅっきゅー(おっ、ちょっと安定してきたかな)」
俺が十秒ぐらい飛べるようになった時である。
「せいやっ」
という声と共に俺は虫網でとらえられた。
虫網で俺を発捉えた主を見るとそこには、くせっけのある黒髪を肩まで伸ばした美人の女がいた。
「珍獣、ゲットだ! まさか研究が上手くいかず気分転換にぶらぶら歩いていた時に、こんな見たこともないレアな魔物に出会うとは!」
そして次に女はとんでもないことを口走った。
「これは解剖して研究するしかない。この町の陰謀を何とかするカギになるかも知れないし」
「きゅー!(物騒なこと言うな!)」
俺はくるりとその場で回転し、虫網から脱出する。
「あー! またネクロが面白そうなことやってる。何やってるの、ねぇねぇ」
声の方角をみるとそこにはこの町の子供たちがネクロと呼ばれた、俺をさっき捕まえた女性に群がっていた。
「丁度いいところに来た。そこにいる珍獣を捕まえるのだ。捕まえた子には50ゴールドやろう!」
50ゴールドとは、それなりの額だ、リンゴリンが十個買える。
「よっしゃー、俺が捕まえるぜ!」
と町の子供の一人が俺に手を伸ばす。
俺はその場で魚の様に跳ねて、その手を躱す。
こうしてどうしたものか、街の子どもたちとネクロによる俺を捕まえる鬼ごっこが始まったのだった。




