24話 モフモフと殺人鬼の戦い
まず仕掛けたのはバベル船長の方だった。黒い靄で出来た手の様な形をした翼で俺を攻撃する。しかし、白銀色になった俺の体を吹き飛ばすどころか、動かすことさえできない。
「ちっ、本当に聖獣だったらしいな。ならこれでどうだ?」
そういうとバベル船長はサーベルを構える。そして振るとそれに呼応するかのように水圧カッターが俺を襲う。しかしやっぱり、効かず俺の体が水を弾く。
「ほう、どうやら白銀色になっている間は攻撃が効かんらしい。だがその状態だと動けないようだな。攻撃手段がそっちにないならほっておいていいだろう」
そう言ってバベル船長は視線を俺からファボック副船長へと向けた。
「長いよしみだ。まずはお前から殺してやる」
ターゲットが俺から離れた所で俺は攻撃に転じることにした。まずは白いモフモフの通常状態に戻り、尻尾をブンブン振り回す。そして俺は先端だけを白銀色に変えた。それによって俺のしっぽはフレイルやモーニングスターの様に振り回せる。攻撃距離は最大で五メートルまでだ。三十センチのしっぽが五メートルまで伸びるのだからこの体は不思議である。
俺はしっぽフレイルをバベル船長めがけて振り下ろした。バベル船長は初見の攻撃ながら、俺のしっぽフレイルを体を捻ることで簡単に躱した。
「こいつ……! こんな攻撃が出来るとは」
まだまだだ!
「きゅゎわわわわ!!(オラオラオラオラ!!)」
雄たけびと共に俺のしっぽフレイルがまたもやバベル船長を襲う。連撃だ。それをバベル船長は紙一重で躱していく。剣術、魔法、体術、すべてに長けている船長には敵わないというのか。
「だがな攻撃が遅すぎる。攻撃とはこうするものなのだ!」
と言った次の瞬間、黒い翼が俺の死角からドリルのように回転して襲ってきた。死角からの攻撃にとっさに全身を白銀にすることが出来なかった。俺の呼吸を読み絶対無敵の穴を突く攻撃。これはやばい。
俺はもろにバベル船長の攻撃を喰らった。だが白銀色でなくとも闇魔法をこの体はある程度緩和してくれるようで、致命傷にはならなかったもののかなり痛い。ジンジンと体中が軋むような痛さと共に、俺は甲板を跳ね飛ばされた。
そして船から吹き飛ばされそうになる。すんでの所で船の縁を掴み、何とか船の上に戻ってくることが出来た。
船の外、つまりは海の中を見るとエビルクラーケンの死骸にサメが群がって捕食していた。
あぶねぇ、あんな中に落ちたら丸のみにされてどうなるか分かったことじゃない。
「終わりだな。貴様は海に落ちて、サメの餌になるのだ」
つかつかと俺を海に突き落とし、とどめを刺すべくバベル船長が歩いてくる。
これはかなりやばい。この世界に来てから初めてのまともなダメージで俺は、上手く動けないでいた。またさっきの様な攻撃が来たら、上手く躱せないだろう。絶体絶命のピンチだった。
その時、ぴたっとバベル船長の動きが止まる。
「ぐっ、何だ!? 体が動かぬ!」
バベル船長の方を見るとそこにはマリーと甲板から伸びる無数の手が、バベル船長をがんじがらめにしていた。
「きゅーちゃんは殺させない! 幽霊だからって舐めないでよね!」
あれはマリーとこの船で殺されていった怨念たちだろうか。バベルには見えていないようだが、しっかりと俺の目に写り、そしてしっかりとバベル船長の動きを止めていた。
今しかない! 俺はしっぽフレイルを振り回すと、動けないバベル船長の胴体めがけて振り下ろした! 攻撃は動けないバベル船長の脇腹にクリティカルヒットし、めきっと骨を砕くような音と共にバベル船長は吹き飛ばされる。そしてバベル船長はあえなく、船の上から落とされた。
そしてイルカの様に巨大なサメが跳ねて、バベル船長を食いちぎった。バベル船長はまもなくしてサメたちの餌になるだろう。
こうしてバベル船長との戦いは終わった。
そしてマリーとの別れの時間がやって来た。




