22話 モフモフとエビルクラーケン
エビルクラーケンは通称海の死神と呼ばれる危険度Sランクの魔物だ。その危険度は何より、二階建ての家一軒ほどはある巨大さと海の上という不安定さによるところが大きい。
陸で戦えばAランクというから、海の上というのは恐いものだ。
そしてエビルクラーケンに襲われた時の船の沈まないない確率はたったの三割しかない。それが海の死神と呼ばれる由来だ。
船員がエビルクラーケンの話をしていたが、まさかあれがフラグだったとは。この船を沈められては、俺もお陀仏だ。
急いで加勢するべく俺は甲板に向かう。
そこではもう戦闘が始まっていた。
無数の触手が蠢き、船員を取って喰らおうと触手を伸ばしてくる。そして不幸な一人が掴まれ、食べられてしまった。
やばい、あっという間に犠牲者一名だ。
さらに追い打ちをかけるように、この船に嵐が接近してきており、暴風雨が甲板を襲う。
俺が甲板を見渡すと、バベル船長が触手を魔法で作った水のベールで弾き、触手をサーベルで切り付けていた。さらにファボック副船長が炎弾を放ち、触手を焦げさせる。そこへデリラ水夫が雷を纏わせたレイピアで触手を突き刺す。するとまるで大砲の弾でも当たったように触手に穴が空いた。
どうやら五年間この船を守って来ただけ合って三人の実力は相当のもの様だ。最悪船を沈められることはないだろう。
だったら俺がすることは人命救助だ。触手に振り払われ、海に落ちた人を助けるために、俺は海に飛び込んだ。
うねうねと、水ヘビの様に俺は荒波を潜り、海中へと進む。
そして落ちた人を見て俺は驚愕した。
(喉を切り裂かれて死んでいるだと!?)
それはまさに殺人鬼の手口だった。
一体いつ、どうやって!?
俺は先ほどまで容疑者三人の場所とこの憐れな被害者の位置関係を知っている。全員が離れており届かない位置だったはずだ。
いや、待てよ。
と俺は考えを改める。もしかしたら行けるかもしれないあいつなら。
俺は殺人鬼に目星がついた。そして今なら戦闘にまぎれて、犯人の日記を盗み見ることが出来るかもしれない。
俺は水中から抜け出し、犯人だと思う奴の部屋に向かう。その際、エビルクラーケンと戦闘員たちとの戦いを見たが何とか勝てそうだ。中でもあの三人が手慣れていて強く、安定感がある。だが、あの三人の中に犯人はいる、そして殺人鬼だと判明した時、戦う事になるかもしれない。
俺は犯人と思う人の部屋に入る。そして時間がないために乱雑に部屋を調べた。すると航海日誌とは別に違う日記を見つけた。航海日誌の方にはごくありふれた当たり前の事しか書いていなかったが、別のタイトルも書いていない方の日記には証拠となるべき文章が乗っていた。
それはまさに殺人手帳とでもいうべき代物で名前が分かる奴には名前とそしていつ殺したのかが書いてあった。最初のページにはマリー・ルトルネット、深夜。と書いてある。
「間違いない。これは殺人鬼の日記ということは……」
とマリーが呟く。
とそこで甲板の方から歓声の声が聞こえてきた。どうやらエビルクラーケンは討伐されたようだ。だが、まだ戦いは終わっていない。
これから殺人鬼との戦いが始まるかもしれないのだ。
嵐の真っただ中のなか、甲板ではエビルクラーケンから切り落とした触手を戦果の様に見ているあの三人の姿がある。
全員ほっとしている様子だ、だが、ここからが本番かも知れないのだ。
俺は殺人鬼の日記。バベル船長の日記をデリラ水夫に向かって投げつけた。
デリラはいち早く察知すると日記を空中でぱしっとつかみ取る。それをみたバベル船長が「なっ、それは私の!? なぜ!?」と口に出した。
「きゅーちゃ……いや、珍獣。これはいったい何なのだ?」
日記を投げつけた俺に対しデリラが呟く。
そしてパラパラと日記の中を覗いた。
「いったい何が書かれているんです? 船長のなんでしょう?」
とファボック副船長が問いを投げかける。
「こ、これは!」
日記の中を覗いたデリラの顔が驚きの表情に変わる。
「これは殺人鬼の日記!?」
とその瞬間日記をバベル船長のサーベルが貫いた。デリラは間一髪のところでその一撃を躱す。
「ばれてしまってはしょうがない。そうだ、俺が殺人鬼、この船の死神さ!」




