20話 モフモフと三人の容疑者
「また首を一切り、間違いない殺人鬼の仕業! 今回の航海にも乗っていたか!」
マリーがそう言った。
首を鋭利な刃物で切られた死体を見た俺たちは、その後、元の物置へと戻って来た。
詳しい事情をマリーから聞くためだ。
壊れた檻に座りながら俺はマリーの話を聞いた。
「きゅーきゅー(さっそくだが、三人の容疑者を教えてくれ)」
「わかったわ。まず容疑者はバベル船長、ファボック副船長、デリラ水夫の三人よ」
そこから詳細な容疑者の説明がなされた。
まず、容疑者を三人に絞り込んだ方法だが、これはマリーが死んで五年間の間で地道に調査したらしい。具体的にはまず五年間で船に乗り続けている人物、そして魔力探知にかけている人に絞り込んだという方法だ。五年間で船に乗り続けている人物とはそのまま、だがなぜ魔力探知にかけている人かというと、これはマリーが魔力が意思を持ったような生命体だからだ。魔力探知にかけてる人にはマリーの姿は見えずともそこに何かがいることが分かる。マリーが今だに殺人現場に遭遇せず、人の目を掻い潜れているからという訳だ。
バベル船長は黒ひげを蓄えた海賊船の船長の様なイメージのおっさんである。船員が全員常備しているサーベルの達人でもあり、水の魔法に長けている。
ファボック副船長はこれまたおっさんで、肩眼鏡をかけている。サーベルの腕はなかなかだが、バベル船長には及ばない。そのかわりナイフの扱いがかなり得意で、海底から引き揚げた宝箱の開錠などもできる盗賊の様なやつだ。そして火の魔法に長けている。
最後はデリラ水夫だ。水夫というよりは傭兵の立ち位置のような女で、海賊船に襲われた時や魔物に襲撃されたときに、戦う戦闘員である。サーベルは持っていないが代わりに、レイピアを常備しており、バベル船長を超える剣の腕前である。そして雷の魔法に長けていて、レイピアと他に短剣を所有している。
そして今までの被害者は全員喉を鋭利な刃物のようなもので一撃と、そこまでの話を聞いて俺はマリーの首元を見た。そこにはやはり避けたような跡があった。
「きゅーきゅーきゅう(マリーは直接殺人鬼に殺されたのなら顔とか見てないのか?)」
その言葉にマリーは黙って横に首を振った。
まぁ、見てたら犯人は分かっているだろうしな。
「きゅーきゅー(それでどうしたらいいと思う?)
「航海、今回は東の大陸に行くから一か月ぐらいかかるんだけど、船の上はやることが余りないから、日記を付けている人が多いの。そしてこの三人ももれなく日記を付けてるの、それを調べれば何か分かると思っているんだけど」
「きゅーきゅーきゅー(分かった。部屋を教えてくれたら何とか隙を見て盗み見てくるぜ)」
そしてその日は、就寝……することにはならずマリーと一晩中話していた。
この船にはマリー以外の幽霊はおらず、五年間ほど会話もできる相手も居らず、たった一人でこの船にとらわれているそうだ。他の皆も亡霊としてこの船に憑りついているらしいが、意識はマリーほどなくまた薄い靄のような姿をしているのだとか。
だからかマリーは俺と話せることをとても喜んでいた。
そして夜明けとともに俺は透明になって活動し始めた。しかし、容疑者の三人はガードが固く、一週間たっても俺は日記を盗み見れないでいた。




