2話 モフモフとゴリラ
巨大なゴリラは俺を見ると吠えながら拳を突き出してきた。それは凄まじいスピードで、俺が来世短かったなっと、思った次の瞬間には俺に命中していた。
凄まじい衝撃が俺を襲い、俺は吹き飛ばされた。十本は大木を貫通し、崖にクレーターを作りながら直撃する。
「ガハッ」っと血を吐き出し、俺は絶命した。と思ったのだがそうはならなかった。崖にクレーターを作るまでは想像と同じだったが、そこからが違った。
なんと俺は無傷だったのだ!
体は白銀の様な色に体毛は変色し、極度の硬度を持っていた。どうやら俺には体毛を固くするという特技があったらしい。空から落ちて来た時、無事だったのもこの特技のおかげの様だ。ただ体がかなり重くて動けない。いつでもどこでもカチンコチンでいれるチート性能の体毛と言う訳ではないようだ。
ゴリラは数十秒後にまた俺の前に現れた。激高した顔で体毛だけじゃなく顔まで赤い。どうやら俺がミンチにならなかったのが気に喰わないようだ。
ゴリラはそこから猛烈な攻めを見せた。
拳をボクサーのように連打! そして俺は無傷。
持って地面に叩き付けまくる! そして俺は無傷。
踏みつけ、踏みつぶし、大地に亀裂が入る! そして俺は無傷!
攻めずして完勝である。ゴリラは手も足も出ず、というかこっちが手も足も出さずに、勝利した。こっちも動けないが、相手も疲労困憊と言った感じである。
さぁ、負けを認めてさっさと帰るがいい。俺の気が変わらんうちにな! というか帰ってくださいお願いします。体を硬質化していると体が重くて動けないんです。
それでもゴリラは何をやっても無傷な俺に腹を立てているのか、攻撃を続ける。
「キューキュー!(無駄だからやめてくれー!)」
あっ、始めて声が出た。そうか俺の泣き声はキューキュー、というのか。そんな事を考えていられるほど、余裕の面持ちで居たらゴリラが予想外の事をし始めた。
何と俺を持ち上げてブンブンと振り回し始めたじゃないか。
「キューキュー!(やめろー、目が回る!)」
そして次の瞬間……俺はぶん投げられた。俺の重い体をものともせずに、空中に吹き飛ばす。まるでフリスピーのように、クルクルと飛んで行く俺。
あっと言う間にゴリラの姿が小さくなり、山なりに飛んで行く。
ひゅーんと空を飛びながら、俺は下の景色を見る。どうやら俺がいたのは山の頂上付近だったらしい。
「きゅーきゅぅ?(これどこまで飛んで行くんだ?)」
硬化を解除使用にも空を飛んでいる怪鳥が恐くてできない。いっそのこと天空の島にまで飛ばしてくれたらよかったものを、方向は違うし高さは足りていないしダメダメだ。
飛ぶこと数分俺はついに地面に墜落した。
凄まじい衝撃が体を襲うが、地面に小さなクレーターが出来ただけで痛みやけがは全くない。取りあえず白銀の体毛を元のふわふわした白い毛に戻して辺りを見渡す。
ここはどうやら花畑の様だ。それも庭園といった感じの、お金持ちの家にありそうな花畑だ。
棘のないバラの様な花や、様々な色のチューリップの様な植物、紫色の菜の花の様な草。様々な植物が植えられているそれはそれは凄い庭園だった。どれくらい凄いのかというと植物の知識が一切ない俺がおお、凄い庭園だ! と思うくらいには凄い庭園だった。
これは自分が作ってしまったクレーターが景観を損なっている。俺はちっちゃい手を利用して、えっさほいさと周りの土をかき集めてクレーターを埋めた。
幸い道の部分だったようで、潰してしまった花々はない。
「きゅーきゅー?(それにしてもどこなんだここ?)」
庭園らしきとこというのは、すなわちそれを作ったものがいるはずである。知性を持った人間かはたまた宇宙人の様なやつか。人間だったらいいなぁ、と思いつつもファンタジーな世界だからグロテスクな宇宙人な線も否定できない。
と、そんな時だった。どこからともなくトテトテと歩く足音の様なものが聞こえる。
これは誰かが来たのか? 俺はクレーターを作った際にかなりの音を出したはずだ。誰かが聞きつけてやって来てもおかしくはない。
そして物陰から現れたのは……。