19話 モフモフと幽霊
青白く半透明な少女を見た俺は
「きゅーっぅぅぅ、きゅーー!(うぁああああああ、おばけだぁああああ!)」
と俺が叫び声を上げた。
隣の檻にトサカが青い鶏の様な魔物が、うるせぇっと言わんばかりに壁ドン、いや檻ドンする。いや、でも待ってください青ニワトリさん、幽霊ですよ。
「あれ、あなた私の事が見えるの?」
俺の声に反応してお化けの少女が、いや幽霊の少女がこっちに振り向く。そこには十歳ぐらいの金髪の女の子がいた。
「きゅーきゅーきゅー(見えるけど、俺お化けとか幽霊は苦手なんだよね)」
「そうなの? でも私は悪い幽霊じゃないから安心していいよ」
「きゅー(そうか、なら安心だな)」
「そうだよー、安心だよー」
ん? 待て、今ナチュラルに会話したような。もしかしたら聖獣様と同じように俺は幽霊とも会話できるのか。
不思議がる俺の姿を見て少女が話しかけてきた。
「どうしたの、えっと何て呼べばいいのかな?」
「きゅーきゅーーきゅー(俺は良くきゅーちゃんって呼ばれるからそう呼んでくれ)」
「そっか、じゃあきゅーちゃん。私はマリーっているのそれで、どうしたの?」
「きゅーきゅーきゅ(いや、何でもない。会話できることに驚いただけだ)」
この世界で幽霊をというか、前世から幽霊を見るのは初めてだ。さらに会話できるなんてさすがファンタジー世界と言ったところか。
マリーと言った少女の幽霊は、慎重な面持ちで俺の入ってる檻に近づく。
「あのね、きゅーちゃん。できればでいいんだけど、お願いがあるの」
お願いか、こうして直々に何かを頼まれるのは現世では初めてだ。いったい何だろうか?
「殺人鬼をね。倒してほしいの」
いきなり物騒だな。殺人鬼だなんて。
「この船で私を殺した犯人なの。それでその人はもう数十人はこの船で殺人を犯してる」
おい、俺は何て船に乗っちまったんだ。この船がそんな物騒な船だったなんて。知ってたら絶対に乗らなかったのに、なんてことだちくしょー。
「三人までは検討はついているんだけど、私は幽霊だから何もできなくて。だからあなたにお願いをしたいの。って檻から出られないか、ごめんね」
この少女三人まで殺人鬼のことを絞り込んだのか、すごいな。
「きゅーきゅー(いや、檻からは出られる)」
といって俺は檻からすり抜ける。
「すごい! これなら本当に犯人も……でも倒せる力がないよね。ごめんね、無理言って」
「きゅーきゅきゅー!(そうか、なら見せてやろう。俺の真の力を!)
そういって俺はバネ形態になり高く跳ね飛ぶ。そしてしっぱだけを白銀色にすると俺が入っていた檻に叩き付ける。すると俺の檻ははひしゃげてぶっ壊れた。
「すごい! すごい! これなら殺人鬼も、それだけの力が有ればもしかしたら……。協力してほしいんだけど、どうかな、きゅーちゃん!」
と俺にマリーは真剣な表所で迫る。
なんか少女に乗せられた気がするが、力が有るって証明してしまったし。何より、そんなに真剣な表情をされたら、断るのも無下な気がする。
「きゅーきゅー(わかった、協力するよ)」
「……ありがとう! きゅーちゃん!」
マリーは笑顔になり、俺に抱き着こうとする。が、するりとすり抜けてしまった。さすがに触れることは出来ないらしい。
とその時である。どこからともなく男の叫び声が船内にこだました。
「まさか、もう殺人鬼が!」
そういうとマリーは壁をすり抜けて叫び声の方に向かっていった。俺も続いて透明になり、部屋の鍵を開けて続く。
マリーを追いかけ、そして俺たちは遂に叫び声が上がったと思われる現場に到着した。そこには腰を抜かしている男と、野次馬、そして……首を鋭利な刃物か何かで切り裂かれたと見える水夫の死体があった。




