13話 モフモフとフォレストタイガー
フォレストタイガーはドギル族が普段狩りをしている森からさらに奥深くの通称、災いの森と呼ばれる場所に生息しているらしい。生態ピラミッドとしては、危険度E,D、C、そして滅多にいないがBの魔物がいる。
その為に、一人前の狩人となるフォレストタイガー狩猟の試験には一人の狩人が付きそう。今回はウルカの兄、であるアルスが付き添いに来ていた。
「いいか、フォレストタイガーを狩猟すると言っても、何も真っ向から討伐しろというわけじゃない。生肉を置き、その傍に気付かれないようにトラバサミを設置し、動けなくなったところを遠方から矢で仕留めればいい。狙うは喉だ。わかったな?」
「分かってるよ、お兄ちゃん。というかその話、もう十回目だよ。どれだけ心配なのさ」
どうやらアルスはシスコンという奴らしい。災いの森に行く最中、こんな話ばかりだ。例えば聖獣様の門番も立派な仕事だぞ、とか別にもっと修行してからでも遅くはない、とか。
前世が一人っ子だった俺には、微笑ましく映る。
そんなこんなでとうとう災いの森に到着した。
災いの森が何故災いの森と呼ばれているのかというと、それは災厄の山と呼ばれる生態ピラミッドの底辺がCランクという魔境に繋がっているかららしい。そこには一流の狩人も滅多には近づかない。年に一度の聖獣様への供物を探す時にだけ、チームを組んではいるらしい。私語を一言も発せないほどには、やばい山なのだとか。
災いの森の良さそうな場所を探して数十分。弓を討てて尚且つ隠れられる場所と、フォレストタイガーが罠に引っかかりやすそうな地形。それらを満たしている場所に到着した。
ウルカが生肉を設置し、その傍にトラバサミも仕掛ける。そして一行は草陰に隠れた。
物陰で忍耐強く待つことしばし、三時間ほどたった時、お目当てのそいつは現れた。
深い緑色の体毛を持つ虎、フォレストタイガーである。一匹のフォレストタイガーは無警戒で生肉に近づいていく。
「よし、そのまま罠にかかっちゃえ!」
小声でウルカが歓喜の声を上げる。
そして次の瞬間、ガシャンっという音と共にトラバサミが起動した。
「ぐるぁあっ」とフォレストタイガーが悲痛に叫ぶ。
しっかりと罠は作動し、トラバサミがフォレストタイガーの前足を捉えた。
「いまだ!」
「分かってるよ、お兄ちゃん!」
フォレストタイガーが現れていた時には、構えていた矢を放つ。矢は一直線に飛んで行き、気づかれることもなく、フォレストタイガーの首を貫いた。
「よし! これで私も一人前の狩人かな!」
「気が早いぞ。皮を剥ぎ、村に帰るまでが試練だ」
「きゅーきゅー!(とにかくやったぜ!)」
「ぐぅるあああっ」
とその時である。俺たちの真後ろから雄叫びが聞こえたのは。
反射的に全員が後ろを振り返る。
そこにはもう一匹のフォレストタイガーがいた。
どうやらフォレストタイガーはつがいの虎だったらしい。一匹を仕留めたことに夢中で全員がフォレストタイガーの接近に気付かなかった。
ピンチだ。いきなり背後を捉えあっちは臨戦態勢に入っているがこちらは、弓を降ろしている。
フォレストタイガーが前足を大きく振りかぶった。それを見て咄嗟に俺が前に出て飛びかかる。
フォレストタイガーは前に飛び出してきた俺に狙いを定めたようで、その前足を俺に向かって振り下ろした。
その瞬間、俺の体毛が白銀色に変わる。鋭くとがった爪が俺の白銀の体毛に命中し、衝撃で俺が地に落とされる。同時に余りの硬さのものを殴打した衝撃でフォレストタイガーの爪がぱきっと欠けた。
「ぐぅるうああああ」
爪が割れた痛みにフォレストタイガーが悲痛の声を上げる。
その隙にウルカが持っていた弓に矢を装填し、フォレストタイガーの首元を狙って矢を放った。




