11話 村の中のモフモフ
森でウルカに抱きかかえられながら、進むこと数十分後、夜中の村に到着した。民族的な村でモンゴルの集落を想像すると分かりやすい。そんな風景だった。
たいまつで照らされる村をウルカは進んでいく。
「おや、今日は珍しくウルカが獲物を持って帰ってきたようだの」
そう呟いたのは、白髪のひげを蓄えたお爺さんだ。ウルカが言っていた爺やで間違いないだろう。
「違うよ。この子はきゅーちゃん、獲物じゃないよ」
「まったく、かわいい魔物が居たらいつも連れ帰って気負って、その子はいつまで集落にいさせるつもりだ。見た所怪我はしていないようだが」
「さぁ、この子が私の肩に乗って来たの、それはきゅーちゃんが決めることだわ」
どうやらウルカは怪我をした魔物を連れて帰って来ては治療して、やったりしていたらしい。そして俺みたいな魔物をよく連れて帰って来るそうだ。
その日の夜。布のハンモックでまるまってウルカに寄り添いながら、俺はウルカの話を聞いていた。
それによると彼女は一流の狩人になりたいらしい。理由は親も一流の狩人で自分もなりたいという憧れからだという。だが、弓も罠も下手でおまけに、獲物を逃がしてしまう癖まであり、村の皆からは無理だと言われているのだとか。
まぁ、あんな見え見えの罠に引っかかるのは相当警戒心のない魔物だけだろう。つまりは、俺だ。自虐である。
まずは狩人と認められるためにフォレストタイガーという魔物を狩らなければならないらしい。フォレストタイガーは名前の通り森に棲む虎の魔物で、体躯は大きいものだと五メートルはあるのだとか、俺のあったゴリラよりもでかいとかこの村の狩人の一般ラインは相当高い様だ。
それでもフォレストタイガーの危険度はCランクだというから驚きである。危険度は冒険者ギルドが決めたもので最低がEでそこからD、C、B、A、S、SSと上がっていくのだとか。Cランクが一人前の冒険者になるために倒さなければいけないラインらしい。これは屋敷でお嬢様から聞いていたことだ。
その日は、ウルカと一緒に眠り、翌日。俺は聖獣様とやらの所に行こうとして村をさまよった。
その過程で村の人に、またウルカが小動物を拾ってきたのか、とかどんぐりみたいな木の実を貰ったりした。ちなみに聖獣様の場所は分からなかった。都合よく聖獣様の場所を話している会話が聞けることもなく。俺は村をうろちょろしただけで、ウルカの元に帰っていった。
帰るとそこには弓を持ち狩人スタイルのウルカがいた。今から狩りにでも行くのだろうか。
「あ、きゅーちゃん。どこにいってたの? 今から弓の練習に行こうと思うんだけど、きゅーちゃんも一緒に来る?」
俺はこくりと頷き、弓の練習場までウルカの肩に乗って行った。
ウルカはそこで案山子が持っている的に相手に弓を構え撃った。
すると案山子の的の中心の部分に矢はピンポイントで命中する。
全然下手じゃないじゃないか。これならオリンピックも目指せるのでは?
そんな面持ちであんぐりしていると、何かを察したのかウルカが答えた。
「そんなびっくりすることじゃないよ。村の皆ならできて当たり前なんだから。止まってる的に位私だって当てられるよ。問題は動く的何だよね。練習しようにも獲物に直接出会うしかないから、練習しようがないし」
そうか、動く的がないとダメなのか。ふーむ、と俺は少し考えてある妙案を思いついた。
それは……俺自身が的になることだ。




