10話 モフモフと狩人見習い
「何だ、この生物。見たことない奴だな」
それが彼女の第二声だった。そして第三声が、
「銀色でまずそうだけど、ちゃんと食べれるのかな?」
である。
これはやばい、完全に食べる気だ。俺は抵抗とばかりに重い体をひねひねしながら、鳴き声を上げた。
「きゅーきゅーきゅー!(俺はゴム質で美味しくないぞー、あっちいけー!)」
「か、かわいい。でも私は一人前の狩人になるためにもあなたを逃がすわけにはいかないの。それに今日、というかここ一週間で一度も獲物を捕らえられてないから。なおさら逃がせない、ごめん!」
そういうと彼女は腰に持っていたナイフを取り出す。
「きゅーきゅーきゅー!(ヤメロー、シニタクナーイ、シニタクナーイ!)」
といってもあのゴリラ相手にノーダメージだった俺だ。傷一つ付けられないと思うが。
ふるふると震えながらきゅーきゅー、言い続けていると、次第に彼女がナイフを持っている右手が下がった。
どうやら俺をご飯にするのは諦めてくれたらしい。彼女は、はぁ、とため息をつくとトラバサミを解除し、しっしっと追い払う様に手を動かした。
どうやら見逃してくれるらしい。
「ほら、家へ帰りな。私にはあなたを獲物にする度胸がなかったのさ」
はぁ、とまたため息をつく彼女。
「いったいいつになったら一人前の狩人になれるのかしら。それとも爺やの言う通り、聖獣様の門番でもするべき? でも退屈なのよね。聖獣様の門番」
「きゅー!(聖獣様だと!)」
その言葉は聞き捨てならなかった。聖獣というともしかしたらフェルエーラにまつわることかもしれない。俺はまだ東に天空の塔というフェルエーラにまつわる塔があるという事しか知らない。なので少しでも情報が欲しいのだ。
俺は白銀の体毛を元に戻すと、彼女の肩に上った。そして、まぁ、元気だせ的なニュアンスでぽんと彼女の頭にのせた。
「あり? 白銀色から白色になってる? それに私を慰めてくれてるの?」
そんなところだ。打算はあるけどな。
彼女は俺を抱きかかえて上に持ち上げると、
「私はウルカ。ドギル族の狩人見習いだよ。よろしく!」
「きゅー(よろしく)」
「あなたは何て呼べばいいのかしら、名前とかある?」
その言葉に俺は首を縦に振る。するとお嬢様の時動揺、驚いた風にウルカは声を上げた。
「あなた名前があるの!? っていうか言葉分かるのね。まるで聖獣様みたいだ。でも私あなたの名前分からないし、きゅーちゃんって呼んでいい?」
どうやらお嬢様と狩人の完成は一致したらしい。俺はその問いに首を縦に振って答えた。
「じゃあ、よろしくね、きゅーちゃん!」
俺はお嬢様の時のごとく、抱きかかえられた。たぶんこの子はこのまま聖獣様とやらがいる村に行くことになるだろう。
そこで何とかフェルエーラの知識を手に入れられないだろうか。
やばい、もうネタがなくなって来た。




