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カルタゴ帝国奪還作戦 その7

闘魂継承!?


先ほどまでの喧騒が嘘だったかのような静寂が【バウンディ村】を包んだ。

ライオンマスクはピクリとも動かなかった。

「クソッ!!全然ダメだ。かろうじて息はあるが、意識が返ってこない」

ジャンは脈を測ったり、瞼を開いて眼球を見たりしていた。

「アニキ、どうすればいいですかっ!!」

グリフォンは、状況に焦ってオロオロする。

「落ち着け、グリフォン。それよりも誰か頼む!!!水を持ってきてくれ!!!!!!!」

ジャンが【バウンディ村】の人々に対して大声を上げた。

しかし、動きもなければ、声も返ってこなかった。

「頼む、緊急だ。誰か水を用意してくれ!!!!!!!!!」

ジャンは再び叫んだ。

しかし、【バウンディ村】の人々は、【ライオンマスクの危篤】と【マーヴェリック盗賊団】に対して、

完全に萎縮してしまったのか、だれも行動しようとはしなかった。

「みんな、あれだけ応援してたのに旗色が悪くなったら動かないって、そんな事って」

グリフォンは失望の眼差しで村人達を見る。


「おい、そこをどけ!!!」

村人の中から威勢の良い女性の声が上がる。

気になるのは柄の悪そうな言葉遣いだった。

怒鳴られた人々は急いでその場から離れて道を作った。


そこから身長が低い女の子が出てきた。

銀髪ストレートのキレイな髪、その髪は腰近くまで伸びていた。

服も、上はチェックのポンチョマントを羽織り、赤いロングスカートに皮のブーツを履いていた。

お洒落な雰囲気を漂わせた・・・子供だった。

パッと見は、10歳~12歳ぐらいの子供らしい整った顔の女の子だった。

同年代の男の子がいたら恥ずかしくて声を掛けれないか、照れ隠しでいたずらをしてしまいそうなぐらいに

人気がありそうだった。


「おい、これでいいか」

ぶっきらぼうにバケツをジャンの横に置いた。

「ありがとな、嬢ちゃん」

ジャンは一度女の子の方を見て、笑顔を返す。

「じょうちゃん・・・だとぉ、お・・・おい、そこの愚者」

ジャンの言葉を聞いてワナワナ震えだす女の子。

しかし、ジャンはその抗議を受け入れずバケツを持った。

「グリ、水を掛けるぞ」

(バシャ)

バケツの水を勢い良く掛ける。

ライオンマスクが苦しそうな表情を浮かべる。

「よし!!!師匠、起きてくれ。師匠、師匠!!!」

「目を覚ましてください。お願いですから」

ジャンとグリフォンが苦しそうな呻き声を出しているライオンマスクに話しかける。

ライオンマスクの目がうっすらと開く。


「ぐ・・・ジャン・・・・か・・・」

弱弱しい声を上げるライオンマスク。

「ああ、ここにいる」

ジャンはライオンマスクの容態が思った以上に危ない事を悟った。

「僕もいますよ。そしてレオさんも」

一生懸命に話し掛けようとするグリフォン。

「師匠、何があったんですか。完全に動きがおかしかったじゃないですか?」

「えっ、どういう事ですか、アニキ?」

「動きのキレが悪かった。いつもの師匠なら3倍近い損害を与えていたハズ」

「言い訳・・・・のつもりは・・・ない・・が、アーネスリア・・・大陸の・・・・・北東の森」

弱々しく、そして、ゆっくりとしたしゃべり口調で、言葉を紡ぐライオンマスク。

「北東の森?」

グリフォンがライオンマスクの言葉を聞き返す。

「その森で・・・異変が・・・・・多発していると・・・言う・・噂を聞きつけて・・向かった」

「北東の森か、あの辺は何処の国も管轄においていない村々があったハズだ」

ジャンは思案しながら、ライオンマスクの言葉を待つ。

「そこで・・・動物達の・・・・大量・・死、大量に枯れ・・・た植物の・・光景が・・・・・広がっていた」

「アニキ、動物の大量死って・・・」

「ああ、ただ事じゃないな」

「そんな・・森の・・・・中で・・黒い人・・・・がいた」

「師匠、黒い人って?」

グリフォンが黒い人について、さらに説明を求めた。

「目もない・・、口もない・・、鼻もない・・・、黒い・・・、いや、闇が 人の形に・・・・なろう・・としているかのようだった

 この世・・・・のものでは・・ない・・・と咄嗟に悟った」

「人の形をした闇?」

ジャンはライオンマスクの言葉を口にしたが、ピンとこなかった。

「おい、ご老体、その黒い人ってのは、ゴブリンと移動していなかったか」

嬢ちゃんと呼ばれてふくれっ面になっていたが、ライオンマスクの話を聞いて思わず口を挟んでしまった。

「ちょっと待て、じょうちゃん。ちょっと黙っ・・・」

「黙れ、愚者」

間髪いれずにはっきりとジャンに言い放つ女の子。

「ア・・・アニキ・・・」

「こ、ここは耐えよう」

ジャンは唇を噛み締める。

その様子を見て困り果てるグリフォン。

「ああ・・・、その黒い人らしき者を・・・囲むように・・一緒の方角に・・・・・向かって・・歩いていた」

「なるほど、それはまずいぞ」

女の子は、1人状況を確認しては頷く。

「どう、まずいんだ?」

ジャンは何としてもライオンマスクが見た者の真実を知りたかった。

「二度と【じょうちゃん】と呼ぶな」

「へっ!?」

女の子の言葉を聞いて、思わず間抜けな声がもれる。

「だから、何度も言わ・・・」

「何て言う名前なんだ?」

「っ・・・・・ナディア・・・・・」

「わかった、ナディア。黒い人ってのは何なんだ?」

「おい、なれなれしいぞ、愚者よ」

「頼む」

ジャンは頭を垂れる。

ライオンマスクも、ナディアの言葉を待っていたように見えた。

「仕方がないな。まずは、黒い人。全身が黒い闇で人の形を成していると思われる奴は、ナイトウォーカー、地獄の狩人さ。

 証拠にゴブリンを使役している。おそらく、間違いないぞ」

「ナイトウォーカー・・・」

ジャンは、その名前を忘れないように、何度も呟く。

「そして、そこのご老体はおそらく連中と接触した時点で、肺を病んだ可能性が高い」

「どういう事ですか、ナディアさん」

グリフォンが質問する。

「おそらくは・・・」

「はぁ、はぁ、ジャン、グリフォン、レオ」

「師匠の様子がおかしい」

「レオさん、急いでください」

レオは先ほどまで解説していた所で固まったままでいたが、グリフォンに呼ばれて我に返る。

「今行く」

レオはそういうとライオンマスクに駆け寄った。


雨がポツリポツリと降り出した。

雲が太陽を隠した事で辺りが暗くなっていた。

ライオンマスクを動かす事は出来ないと判断して、その場で、その時を迎えようとしていた。

「ジャン・・・、もっと、いろいろ・・・・教えて・・やりたかった・・・・のだが、時間・・・切れだ」

所々、聞き取れなくなるぐらい声が小さく細かった。

「師匠!!」

「忘れるな・・・・力を身に・・付ける修行を・・・したつもりは・・・ない。

 力を・・・制御する・・・・・為・・の力を・・・・教えてきたつもりだ」

「はい、わかっています」

「驕るな、怒るな、恐れるな、その感情は・・・制御とは・・真逆の位置に・・・・・いる」

「胸に刻みます」

涙を零れるのを拭かずに、自分の手とライオンマスクの手を合わせる。

自分が幼き時から、目の前にあった大きく力強い手は、とても弱々しく感じた。

それが余計に涙を溢れさせた。


「グリフォンjr・・・、お前に・・・・言う事は・・ほとんどない・・・・、あえて・・言う・・・・・ならば」

「はい!!」

「ジャンを頼む」

「はい、アニキは自分が支えます!!!」

「グリフォンjr・・・、忘れる・・・な。お前の・・実力は・・・ジャンに・・・・・匹敵するレベルまで・・・・高まっている事を・・・・、な」

「僕が、ですか?」

「ああ・・・、力に・・・使われ・・・・・るな、力は・・使い・・・・・こなせ」

「はい、必ずや、この力使いこなしてみせます!!!!!!」

グリフォンは自分の拳を見つめて、硬く握って見せた。


「レオ・・・、お前は・・・・ジャンと・・グリフォンを・・・・・・見守って・・やってくれ」

「はい・・・・、ライオンマスクさんの実況を出来なくなると思ったら、悲しいやら、悔しいやら」

「レオ・・・・、脳ある鷹は・・爪を・・・・隠す。お前の出番が・・・・・来る事は・・永遠にないと・・・・・・願いたい」

「わかりました。バカな連中との旅も悪くありませんよ。

 何よりも暇をしないです。

 安心してください、あいつらの面倒は俺がみます」

「レオ・・・、もし・・も、2人が・・・・・

 黒い感情に飲み込まれ・・た時は、

 レオが最・・・後の1手になるハズ・・・・・だ。覚悟・・・しろ」

「わかりました、後はまかせてください」

レオの声も涙まじりの声になっていた。


「ジャン・・・・」

「はい・・・・・」

ジャンはライオンマスクの言葉を待った。

「マスクを・・・・外してくれ・・・・」

ジャンはライオンマスクの言葉に一瞬驚いたが、すぐにライオンマスクを外した。

外したマスクはライオンマスクの胸の上に置く。

マスクの下には、顔に切り傷やあざが勲章として消えずに残っていた。

髪も髭も白くなっていた。

決して、白くなったと言えど、決して弱くなったと言う事ではない。


ただ、口端から血が止まらず溢れ続けていた。

ライオンマスクは何度か咳き込みだす。

口を押さえていた手を見ると、血がベッタリと手の上に広がっていた。

「師匠!!」

「落ち着け・・・、ジャンよ・・・・最後の願いが・・ある

 ・・・・・聞いてくれるか」

辛うじてジャンを見るライオンマスク。

「なんなりと」

自分の胸の上に置いてあったライオンマスクを手にとって、ジャンの前に掲げた。

そのマスクは震えていた。

もはや、マスクすらも持つ事が辛い状態だと悟る。

「ジャン・・・・次の・・・ライオン・・マスクを・・・・、やって・・くれるか?」

「あなたほど上手に歩けないかもしれませんが、俺は俺なりの戦いをしてみせます」

そういうと、ライオンマスクを受け取った。

かつて、ライオンマスクだった男は、ジャンがマスクを受け取った光景を見て静かに笑った。



その後、静かに目を閉じて、再び、開く事はなかった。


雨の音だけが響いていた。

しかし、ライオンマスクの弟子達、ナタリー一行、村人達、

すべての人達が涙を流し、拭っていた。


この日、英雄は伝説となった。


ただ、その状況を面白そうに見ていたマーヴェリック盗賊団がいた。


次回更新予定日は2016年5月6日の12時ごろです

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