カルタゴ帝国奪還作戦 その6
ライオンマスクの意地。
弟子達の意地。
マーヴェリック盗賊団のブルディの意地。
いろいろな意地が入り混じりながら、1つの決着へと辿り着こうとしていた。
「おい、そこの5人、ブルディと一緒になって遊んでこい」
マーヴェリック盗賊団のボスが近くに居た部下の5人に声を掛けた。
「うひょ!!いいぜ、いっちょ遊んでやらぁ」
待ちくたびれたと言わんばかりに、ライオンマスクに向かって走り出す5人。
「マーヴェリック盗賊団のボスが1対1の勝負に水を掛けたぁ!!
形勢不利になったのを認めたようなものだ!!
しかし、満身創痍のライオンマスクにとって厳しい展開になりそうだ」
レオはそう叫びつつ、ジャンの方を見る。
「アニキ、連中が割って入ってきました。俺達も乱入しましょう!!」
「くっ・・・・・・、わ・・・わかっ」
ジャンは一瞬躊躇ったが、飛び出そうとした。
「おい・・・、ワ・・・シの・・・神聖なる戦場に・・・土足で・・・・上がる・・・んじゃねぇぞ」
ライオンマスクの相変わらずの通った声が聞こえた。
「ちっ・・・・・・、グリ、待機だ」
歯ぎしりをしながらその場に留まるジャン。
「だけど、アニキ!!」
「師匠の生き様を目に焼きつけておけ、そしてこの光景とこの空気、草の匂い、皆の表情1つ、絶対に忘れるな」
「こんなのって、こんなのってないですよ!!」
ジャンに一生懸命抗議するグリフォン。
そして、気付く。
ジャンの口から唇をかみ締め過ぎて血が流れ出している事を。
「やっぱり・・・、こんなのってないですよ・・・」
目の前には、ライオンマスクが乱入してきた5人に向かって、力を振り絞って立ちはだかっていた。
『おい、お前らにはプライドって奴がないのか!!』
『俺たちの英雄に、お前らの力自慢が負けるのが怖いのか!!』
『ボス自らでてこいや!!!』
『負けを認めろ、マーヴェリック盗賊団!!』
「おい、【バウンディ村】の連中、何を勢いづいて面白い事を口にしているかはわからないが、
言いたい事があるんなら、俺の前に出てきて言ってもらおうか」
マーヴェリック盗賊団のボスが【バウンディ村】の野次に耐えかねて、口を開く。
そして、殺気に満ちた視線を送られたら、野次は一気に収束へと向かった。
「ライオンマスクに雑兵1が飛び掛ったぁ!!!」
レオはそのやり取りを目の端で見つつ、ライオンマスクから視線を外さなかった。
「ワシの・・・・残りの命・・・・、全て・・・・を・・・かき集めて、あと・・・何回語り合える・・・の・・・か」
「死ね、ジジィ」
雑兵1が殴りかかる。
(パン!!!!)
乾いた音が鳴り響く。
「出たぁ、ライオンマスクの伝家の宝刀、手刀だ!!!!
手のひら小指側の側面で、狙った部位に叩きつける技だ。
この威力は【バウンディ村】の皆さんはご存知、木の樽を破壊する事が出来る一撃だ!!!」
雑兵1は叩かれた部位の皮の鎧が弾け飛び、赤くなった地肌を見せながら、口から血の混じった胃液吐き散らして倒れこむ。
そして、痛みでもがき苦しんでいた。
「じじぃ、よそ見をしてるんじゃねぇぞ!!」
雑兵2、3が同時に踏み込んでくる。
それを見て、ライオンマスクは雑兵2に向かって走り出す。
「なんとぉ!!!!!ここでライオンマスク、受けから攻めに転じた!!!!」
「こ・・・の、ジジィ・・・、どこに、こんな力がぁ」
(パン!!!!)
再び乾いた音が鳴り響く。
あっけに取られた雑兵2の胸部に深々めり込む手刀。
そして、そこに割り込んできた雑兵3に対しても、
攻撃を避けつつ、手刀を胸部に深々めり込ませる。
ほぼ同時に、雑兵2、雑兵3は地面に崩れ落ちた。
「ライオンマスク、危ない!!!!!!」
レオの声に反応して、その場から飛び去ろうとするライオンマスク。
(ゴッ)
「な・・に・・・」
ライオンマスクは自分の腹に太い拳が刺さるのを確認すると、
同時にとてつもない痛みが体中に駆け巡り、胃液を吐き出す。
地面に膝をつき、両手で倒れるのをこらえるように四つんばいの姿勢をとる。
そして、視点が定まらないまま、攻撃の主の顔を見る。
「悪い。俺達にも引けない理由がある」
勝負を決する一撃を放ったブルディの顔には悔しさが溢れていた。
「おい、処刑の時間だ。残ったお前らはオッサンが逃げないようにしろ。
そして、ブルディ。恐怖をこの村の連中に植えつけてやれ」
マーヴェリック盗賊団のボスが非情な命令を下す。
すぐさま、雑兵4、5が四つんばいになったライオンマスクの両脇に立った。
「お・・・おっと、これは、ちょ・・・っと・・・・」
レオは言葉を失う。
ライオンマスクの右手を雑兵4が踏みつけ、反対側の左手を雑兵5が踏みつける。
ライオンマスクは意識が朦朧としているのか、逃げ出す素振りを見せなかった。
ライオンマスクの前に立ちはだかるのは、ブルディ。
「ボス、さすがに・・・・、これは・・・」
ブルディも戸惑い、ボスの方を見る。
「ブルディ、お前の心に戸惑いを植えつけたライオンマスク。さすがは英雄と呼ばれた男だ。
だが、俺達も生きるためだ。ここは鬼になってもらおう」
その言葉にブルディは目を閉じる。
そして、ライオンマスクに向き直った時には、ブルディの表情から迷いが消えていた。
ここからはただの残酷な処刑が始まった。
四つんばいになって、頭を垂れていたライオンマスクをブルディが蹴り上げる。
(ゴッ)
鈍い音が響く。
ライオンマスクの頭が再び下がった所を、さらに蹴り上げる。
(ゴッ)
「なんと言う事でしょうか・・・。こ、これは、ただの処刑・・・、ライオンマスクは意識を保っているのだろうか」
「アニキ!!!!!!!!!!!!!!!」
グリフォンが叫ぶ。
町の連中の中には、無残な光景から顔を背けたり、顔を手で覆ってみないようにしていた。
「グリ、師匠の肩を見ろ。まだ、踏ん張っている」
「だとしてもですよ。この状況から逆転の目は・・・・」
「なぁ、グリ、師匠は勝つ戦いだから挑むのか。違うだろ、戦わないといけない戦いだからこそ挑むんだろ」
「だけど、このままじゃあ、師匠が死んで・・・・」
「ああ、師匠の意識が・・・・・、肩の力が抜け落ちたら、行くぞ」
「はい!!!!!」
ジャンとグリフォンとレオは、目を真っ赤にして状況を見守っていた。
「ヘルムート、もう、何を言っても聞かないわよ」
ナタリーは、涙でクシャクシャになった顔を一切拭わずに、ライオンマスクの処刑を見ていた。
「ナタリー、何度も言わせるな。人同士の戦いには極力・・・」
「わかっているわよ、その上で、何を言っても聞かない・・・っと、私は言ったのよ」
「ナタリー・・・」
「今回ばかりは、ナタリーの意見にのるしかねぇーな」
「おい、クラッシュ、お前まで・・・」
ヘルムートは完全に歯止めが聞かなくなった2人を見て、対策を考える。
「2人とも止めておいた方がいいかもしれない」
2人の話に割って入るビッグフィッシュ。
「ビッグフィッシュ、あなた、さっきまであれだけライオンマスクさんの事を応援していたじゃない」
「だからこそだよ。ライオンマスクさんが戦いに挑んだ理由、ただ、この村を守るだけじゃない気がする」
「わかんねぇよ、ビッグフィッシュ、わかんねぇよ」
ビッグフィッシュの話の意図を理解できずに困惑するクラッシュ。
「もしも、この村を守るだけなら、弟子の方々と共に戦えば良かった。それをしなかった理由は、
他にあると思う。よくはわからないけど・・・。そして、もしもこの戦いに介入する権利があるとすれば
弟子の方々しかいないと思う」
ビッグフィッシュは、確信こそなかったが思う所はあった。
そして、ナタリーとクラッシュは納得いかない顔のまま、黙り込む。
2人共、拳をプルプルと震わしながら我慢していた。
(ゴッ)
何度目になっただろうか、ライオンマスクを蹴り上げる音が鈍く響く。
ブルディ自身もライオンマスクの意識が残っている事を本能で悟っていた。
だから、意識を刈り取る為に攻撃を続けていた。
ブルディの心の中の戸惑いは、大きくなっていき、攻撃する力が入らなくなってきた。
そして、やがて立ち止まる。
「ブルディ、最後にやれ。全力のカカト落としでも見舞ってやれ。
そして、その攻撃でフィニッシュだ」
マーヴェリック盗賊団のボスがトドメを命令する。
「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
泣き叫ぶような声を発しながら、ブルディはライオンマスクの後頭部に
全力のカカト落としを打ち込む。
(ゴンッ!!!!!!!!!)
何かが砕けるような音を響かせる。
ライオンマスクは地面にめり込んで動かなくなった。
「グィリフォオオオンンンン!!!!!!!!!」
ジャンが全力で叫ぶ。
「全員殺す!!!!」
グリフォンはジャンの声が聞こえた瞬間、内容を最後まで聞き取らずに走り出す。
ジャンはライオンマスクに駆け寄る。
(ゴッ)
雑兵4のわき腹に勢いづいた飛び蹴りが入れる。
勢い良く地面に倒れこむ雑兵4。
それを見た雑兵5はライオンマスクの手から足をどけて、
マーヴェリック盗賊団の群れに戻ろうと走りだす。
「遅い」
(ゴンッ)
雑兵5の背中から追って走り、飛び膝蹴りを後頭部に打ち込み、
勢い余ってそのまま一緒に地面に倒れこむ。
しかし、グリフォンはすぐさま飛び起きて、ブルディに対する。
「あんたらがライオンマスクの弟子か」
「そうですね。そして、あんたを潰す男達だ」
そう言うと同時に、腰を捻って威力を載せた右蹴りをブルディの左肩に打ち込む。
(バンッ)
高い音が鳴る。
ブルディは顔を苦痛で歪めつつも、その場で耐えて見せる。
「良い蹴りだ・・・な、え・・・・っ!?」
目の前でブルディの体を駆け上がっていくグリフォン。
その光景に呆気に取られるブルディ。
グリフォンは駆け上がってブルディの頭上を飛ぶ。
「これで詰みですよ」
グリフォンはその一言だけを呟いて、カカト落としの姿勢に入る。
ブルディはその姿を、獲物を捕らえようと空から滑空してくる鷲のように見えた。
次の瞬間、自分が獲物だと悟り、左手で防御しようとするブルディ。
「な・・・なるほど、先ほどの蹴りで左腕が痺れて防御の姿勢が取れない。
ここまで見越しての一撃か・・・・、さすがはライオンマスクの弟子だ・・・・」
グリフォンの動きに見惚れるブルディ。
(ゴン!)
頭にグリフォンの一撃が突き刺さり、地面に両膝をつくブルディ。
地面に着地したグリフォンは、すぐさま、ブルディの首を締め上げる。
「ぐっ・・・ぎ・・・ぃ」
ブルディは、一生懸命グリフォンの腕を引き剥がそうとするが一向に外れない。
グリフォンの瞳に狂気の色が混じる。
そして、引き剥がそうとするブルディの手がダランっと、力が抜け落ちる。
しかし、グリフォンは一向に絞めている腕を外さない。
レオを含めて、ナタリー達ですら、
グリフォンの電光石火の攻めを見惚れてしまい、完全言葉を失っていた。
【バウンディ村】の人達で、状況に追い付けたのは一部だったらしく、
ほとんどの人は何が起こったのか、理解できずにいた。
「グリフォン!!!!!もういい、そこまでだ!!!」
ジャンが事態に気付いて叫ぶ。
「アニキ、こいつ、師匠を殺した奴なんですよ。ならば、自分も命を取られる覚悟は決めていたはずだ!!!」
涙目で声を上ずりながら叫ぶグリフォン。
「グリフォン!!!!」
「さすがに、アニキの命令でも無理ですよ。僕はこいつを殺す!!」
ブルディは力が抜けたためか、失禁していた。
「バカ野郎!!違う!!師匠の息がまだある!!!」
ジャンはありったけの力で叫ぶ。
グリフォンはその言葉の内容を聞いて、腕の力を緩めてブルディから離す。
そして、ありったけの力を持って、ライオンマスクの元に駆けつけた。
次回更新予定日は2016年4月29日の12時ごろです