表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/29

カルタゴ帝国奪還作戦 その17

ジャンとロンバルト共和国の獅子将軍アドバンスとの戦いが決着した。

それに不平不満がある連中が不穏な空気を撒き散らす。

その空気すらも消し飛ぶ、さらなる嵐が近づいていた。

「アニキ!!!!!!!」

グリフォンが倒れてピクリとも動かないジャンの元に駆けつけたと同時に、

ジャンを仰向けにして、呼吸の確認、ついで、心臓の音を確認する。


「どうだ、空飛ぶ愚者」

ナディアも息を切らせながら、ジャンの側に駆けつける。


「息はしていますが・・・・・・」

「脳を派手に揺らしたからな。しばらくは動かさない方が良いぞ。

 ふふふ、安心しろ!!俺は回復魔法の心得もあるからな」

そう言うと、両手を両腰において、胸を張るナディア。

「さすがっ、ナディア姉さん!!!!!」

グリフォンは心の底からナディアを尊敬する。


【これ・・・・・は、アドバンス将軍が・・・・・・負けた・・・・事になるの・・・・か】

【そう・・・・いえば、そんな・・・取り決めを初めに・・・・した気が・・・・・・・・】

【・・・・・・・・・・・・・我らの大将軍・・・・が負けた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・】

目の前で起きた予想外な結末を目の当たりにして、驚愕するロンバルト共和国の兵士達。


【こんな勝負、成立すらしてないだろうが!!!!!!!!!!!!!!!!!!!】

【そうだ!!意識を失った人間と、まだ動ける人間、どちらが勝者か、なんて子供でもわかるだろ】.

【そもそもアドバンス大将軍は我らを使えば、連中の死体をすべて並べてみせただろうに】

【勝手にこの結果に尾びれ、背びれを付けられ、大陸中に広められたりする前に・・・・やるか】

目の前で起きた予想外の結果を受け入れられず、なかった事にしようとするロンバルト共和国の兵士達。


「くっ・・・・、とんだ騎士道を持った連中ですね、ナディア姉さんはアニキの治療を続けてください」

グリフォンがジャンの側から立ち上がり、ロンバルト共和国騎馬隊に向かい合う。

「空飛ぶ愚者よ、無茶はするな」

ナディアはジャンから目を離さずにグリフォンを心配する。


「この場にいる皆さん、アツイ試合を見て体の芯がアツクなったのでしょうが、

 まずは、その戦いを見せた両雄を褒め称えるべきではないでしょうか。

 そして、意識があるアドバンス将軍の言葉を待ちましょう。

 何よりも、この尊い戦いを汚す真似は、誰にもさせません!!!!!!!!!」

レオが叫ぶ。

その声はこの広場全体にいるロンバルト共和国の兵全体に届いた。

そして、その声が静寂を呼び込む。


その静寂にようやく、腰を上げる男がいた。

「勝利条件を提案したのは俺だ。完敗」

アドバンスが低い声で、ハッキリとした口調で話す。

「敗因は、この男の実力を見極め損ねた事が理由」

アドバンスの言葉を聞いて、剣を抜こうとしていた兵士の戦意を砕いた。


「この戦いはアドバンスの負けだ。その男に伝言」

グリフォンに向き合って、ジャンに伝言を残そうとしていた。



『ぅぅぅぅぅぅぅぅうううううぅううぅぅっぅぅぅぅぅおおおおおおおぉおおおお!!!!!』

村の西側から何十、何百の雄叫びが重なり、村全体を包み込む。


「これは、ゴブリンの雄叫び」

アドバンスが呟く。

「えっ!?」

グリフォンはアドバンスの言葉に驚く。

「くっ、こんな時にゴブリンの襲撃だと、ふざけるな!!!!」

ナディアの手から出ている優しい光がジャンの頭に降り注ぎながら、叫ぶ。


「タデ長老!!!!!!!!急いで村人を家から出して広場に集めてください!!!!」

グリフォンは広場から、自分の家の前で立ち尽くしている長老タデに向かって叫ぶ。

その言葉を聞いて、長老タデは我に帰り、すぐさま非難指示を出す。


次の瞬間、村の北側にある裏山から次から次へとゴブリンが飛び出て、一部が村人の家に入りこむ。

別のゴブリンが広場に逃げようとする村人を襲いだす。

しかし、半分以上のゴブリンは、家の脇をすり抜け広場に下りてきていた。


ロンバルト共和国とジャン達に向かいあい、トゲトゲの付いた棍棒を構えたまま、威嚇の体勢を取っていた。

向かい合った間の距離は約20m。


「この村に対する攻撃は中止、ゴブリンどもを排除」

ロンバルト共和国のアドバンス大将軍が3000近くの軍に命令を下す。


「これはもう、何が何だかよくわからない事になりましたね」

グリフォンの横に歩いてきたのは、レオだった。

「レオさん、アニキとナディア姉さんをお願いします」

グリフォンはレオがいてくれる事に、少し安心していた。

「あまり期待されると困るけど、2人を守る努力ぐらいはしてみるよ」

レオは緊張した面持ちのまま、周りを見渡した。


「ナディア姉さん、この状況は人間とゴブリンで、別れた形になっていますよね」

「ああ、このゴブリンの集団の数は、いたとしても1000が良い所だろう」

「それだけでも結構な数値ですけどね」

「だが、アドバンス大将軍が味方なら心強いだろ」

ナディアはジャンの顔から目を離さずにグリフォンを元気付ける。


「突撃!!!!!!!」

アドバンス大将軍が叫ぶ。

同時に騎馬隊がゴブリンの群れに突っ込む。


(ドォオン!!!!!!!!!!!!)

鈍い衝突音が広場に響く。

ゴブリンが何体か、宙を舞っていた。

宙に舞わなかったゴブリンは騎馬隊の槍に貫かれていく。


「これは圧倒的ですね」

グリフォンの声に安堵の色が混ざる。

「それにしてはゴブリンどもが、逃げる素振りを見せていないのが気がかりだ」

ナディアがゴブリン達の様子を見て呟く。

「まさか、連中の裏に誰かいる・・・・可能性が考えられるかもしれませんね」

「レオさん、そもそも裏山から出てきているゴブリンの数は止まっていませんよ」

未だに、次から次へと裏山から這い出てくるゴブリンを見て、どうしようもない不安を抱くグリフォン。


「きぃぃいいいいいい」

ゴブリンが威嚇をして、騎士団の馬の腹を棍棒で叩く。

叩かれた馬は崩れ落ち、悲鳴にも似たいななきをあげる。

そのいななきは、周りの喧騒にかき消されていく。

その馬の主は、ゴブリンによる渾身の一撃により絶命した。


「たすけてぇ!!!!!!!」

村から連れ出された女性が1人ゴブリンに担がれて、裏山に連れ込まれようとしていた。

しかし、その叫び声も喧騒に消されて、誰の耳にも届かなかった。

1人を除いては。


「くっ・・・・・・・・・・・・そ・・・・・・・・・・・」

グリフォンが舌打ちをしながら、ジャンに向かってくるゴブリン達を蹴り飛ばす。

次々と別のゴブリンがグリフォンに襲い掛かる。

軽やかに攻撃をかわしては、蹴り上げたり、蹴り落としたり、何十体近くのゴブリンの意識を刈り取る。

しかし、全然途切れないゴブリンの数、裏山からまだ湧き出してくるゴブリン。

その流れに逆らって、村の女性を担いで村から離れようとするゴブリン。


ロンバルト共和国の騎兵隊も強く、ゴブリン達の死体の山をそこかしこに気付いていたが

減らない数を前に少しづつ、被害を出し始めていた。

「このままではきりがない・・・・・・」

アドバンス大将軍は戦闘に参加せずに、騎士団に攻撃をまかせていた。

ジャンとの戦いは、何気にアドバンスの体力を奪っていたのだった。


「アドバンス将軍、急報です」

アドバンスの前に軽装の鎧を来た若い男がやってきていた。

「どうした」

「北の港、ロスルがゴブリンの大規模な襲撃あり!!!!

 略奪、女さらい、虐殺と好き放題されております!!!!」

「なにっ!!!!!」

アドバンスは驚きと同時に怒気を含んだ声をあげた。

その声を聞いた騎士団に動揺が走る。



「何かあったみたいだぞ」

ナディアはアドバンスの表情が曇った事を、素早く察知していた。

「どうした、空飛ぶ愚者よ、何を気にしている」

「姉さん、この村の女性がゴブリンにつれて行かれそうになっているんですよ」

「空飛ぶ愚者よ、お前、俺や愚者の為にこの場から離れられなかったのか」

「私だけだと、もれなく、ジャンの元にゴブリンを招待してしまいそうですけどね」

レオはそう言いながら、ゴブリンを殴り飛ばしていた。


「おい、グリ、バカか・・・・・」

グリフォンの背中に待ちくたびれた声が掛けられた。

(ばぁああぁん)

ゴブリンが7体に宙に舞う。

「本当にイチイチかっこ良いんですから・・・アニキは」

「グリのお陰で意識が回復した、ありがとな、ここは気にせず助けにいけ」

ジャンは体を起こしながら、笑顔を作る。

「アニキ・・・・」

「お前は正義のライオンマスクの弟子だろうが!!!!!!

 こういう状況の時にこそ、正義を見せる為に今まで頑張ってきたのだろうが、

 行け!!!!グリフォン!!!!」

「はいぃぃぃぃいいいい!!!!!!!!」

グリフォンはそう叫ぶと、高く高く飛ぶようなジャンプして、村人の屋根の上に着地する。

屋根伝いに飛び移りながら、裏山を一直線に目指す。

正確には、女性を担いでいるゴブリンを目掛けて、屋根から飛びかかった。

そして、グリフォンはゴブリンの中に消えていった。


「空飛ぶ愚者は敵ど真ん中に飛び込んだが、大丈夫なのか」

ナディアは少し心配そうな表情をする。

「ナディア、ありがとな。回復呪文のお陰で手遅れにならずにすんだ」

「私の力が万全だったのなら、すぐに完全回復させれたのだがな」

「いや、十分だ」

「愚者よ、どういう意味だ」

「まだ、メインディッシュが出てきていないみたいだからな」

ジャンが裏山の方を見る。

ナディアもつられて裏山の方を見る。

木々が激しく揺れたり、折れる音が聞こえてきていた。

その音が村にドンドン近づいてくる。

同時に重い振動を体に感じるようになってきていた。


次の瞬間、裏山から顔を出したのはトロルと呼ばれる巨人たちだった。

「ハッ、今日は毛むくじゃらの巨人が4体一緒の行動でもありえないのに

 ゴブリンと一緒に行動、ふざけるな。夜に昼がくるようなレベルであり得ない話だぞ」

ナディアは目の前の絶望的な状況に深いため息をついた。

「怪力で、超回復力でタフで体格は5m近くあり、極太の棍棒で数人まとめて

 吹っ飛ばすつもりだろうな」

ナディアの横で空笑いするジャン。

「ちょっと、ゴブリン退治に少しは参加してくださいよ」

レオがゴブリンと混ざり合いながら、助けを求めていた。

次回更新予定日は2016年7月15日の12時ごろです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ