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カルタゴ帝国奪還作戦 その15

迫り来る【ロンバルド共和国】

今攻められようとしている仇の村

その仇の村には仇である男達は不在だった。


見捨てるべきか、手を差し伸べるべきか、

選択肢はその2つに絞られていた。

「愚者よ、状況が変わった。今すぐ、この村から離れるぞ」

ナディアは、ジャンの腕を引っ張る。


「アニキ、さすがに500人が3000人に増えた状況で、立ち向かう選択肢は狂気の沙汰ですよ。

 今すぐに、離れましょう」

グリフォンもナディアの引っ張っている腕の反対の腕を引っ張る。


長老タデは、何も言わずにジャン達を見送った。

どんどん地鳴りが大きくなる。

東に見えていた砂煙がいっそう大きく、広く上がる。

敵はこの村の目前までに迫っている。

敵の数は、一瞬でこの村を飲み込んでしまう。


長老の家とジャン達が歩いてきた街道の間には、広場があった。

今、その広場の真ん中をジャンを引きずって、元来た道に向かって歩いていた。

ナディアも、グリフォンも、レオも一言も口にせず、

一刻も早く、この場を後にしようとしていた。

しかし、ジャンは立ち止まった。


「おい、愚者、立ち止まるな。行くぞ!!!!早くココを離れるぞ!!!!」

ナディアが叫ぶ。


「アニキ、急ぎましょう!!!!!!」

グリフォンも引っ張る力を強くする。


ジャンは広場の真ん中から一歩も動こうとしなかった。

それでも一生懸命に引っ張ろうとするナディアとグリフォン。

ジャンは必死に抵抗しているのか、ビクともしなかった。


「グリフォンさんとナディアさん、もうさすがにわかっているのでしょう」

レオは陽気な声で2人に問う。

「いいや、まったくわかるわけないだろうが!!!!!!」

「さすがにアニキはそこまでバカじゃないですよね!!?」

自分達の言葉と顔の表情が、全く別である事に気付いてはいなかった。

「ナディア、グリ、レオ・・・・・・・・」

ジャンが呟く。


「待て、待て、待ってくれ、愚者よ、ダメだ」

ナディアは慌てふためきながら、ジャンの口から、ある言葉を言わさないよう必死に止める。


「アニキ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

グリフォンは悟った。


「それがジャンの選ぶ道ならお供しましょう、死地でも何処でも」

レオはジャンが初めから、こうする事を薄々気付いていた。


「俺はこの村を守る為に・・・戦うぞ」

ジャンは、ハッキリとした口調で宣言した。


「愚者よ、バカなのか、とんでもないバカなのか、わかっているのか?

 3000対4だぞ」


「1人750人ですね・・・・・。やってみますか、

 おそらく、この戦いの勝ち目はゼロっすね☆」

グリフォンは覚悟を決めて、陽気な声でジャンの意思に賛同をする。


「おいおいおい、空飛ぶ愚者よ、そこの愚者を止める方に回れ!!!!」

「ナディア姉さん、もう覚悟を決めたアニキを動かすのは無理っすよ」

グリフォンはあっけらかんと答える。

その返答に固まるナディア。


「ナディア、お前だけでも逃げろ。俺たちと運命を共にする必要はないからな」

ジャンはナディアの顔を真正面から見据える。

そして、ジャンは軽く笑って見せた。


「ふざけるな!!!!!!!!俺がいる方が勝率が上がるに、決まっているだろうが!!!」

ナディアも覚悟を決める。

そして、若干ぎこちない笑顔を作る。


「さすがはナディアさん、これで勝利する可能性が出てきましたね、ジャン」

レオは笑顔でジャンに話しかける。

「万に1つでも勝機があれば、勝ってみせる。

 だけど、くれぐれも皆、死ぬなよ」

ジャンは皆に向かって、最後の言葉を掛ける。

ジャン、グリフォン、レオ、ナディアの4人は、全員笑顔でマーヴェリック村の広場で、

【ロンバルド共和国】を待ち受ける事にした。


「女、子供は家から出ず、身を守るのだ」

長老タデは何が起こったのか理解できないまま、

ロンバルト共和国に挑もうとする4人を見つめるしか出来なかった。



10分後、ロンバルト共和国の先頭集団がマーヴェリック村に到着していた。

先頭集団の中から、ただならぬ雰囲気を持った男が進み出る。

着ている鎧の肩口には、獅子の顔を形取った肩当てを

両肩にしているガタイの良い男が、この大部隊の代表である事を、

ジャン達は、すぐに理解した。


「お前らがこの村の人間か」

獅子の鎧をまとった男がジャン達に向かって、愛想なく話しかける。


「ああ、俺たちは傭兵みたいな者だ。それよりもあんたは何者だ」

ジャンは自分達の立場を適当にごまかす。


「ロンバルト共和国アドバンス・アネスティージャ、役職は大将軍」

アドバンスはそう呟くと村を見渡す。

共和国の大将軍だと聞いて、ジャンは舌打ちした。


「見ての通り、村の男手は不在だ。女、子供しかいない村に何の様だ」

「つまらん。この村の女、子供はロンバルト共和国に連行」

「男はどうするつもりだ」

「歯向かうなら殺す、投降するなら労働力として然るべき場所に連行」

「ここの連中には、ここまで逃げ出さざるを得ない理由があったとしたら、どうする?」

ジャンはアドバンスの表情を一瞬たりとも見逃すつもりはなかった。


「関係ない、命令に従うまでだ」

「くっ・・・・、聞く耳はない・・・・か」

ジャンは再び舌打ちをする。


「愚者よ、あの男は危ない。

 巨岩に拳を突き立てるだけで、簡単に2つに割る。とか、

 自分よりも強い相手を探し続けていたが、

 一向に現れる気配がないから、

 本気を出す事さえ止めた・・・と言う噂が流れるほどの相手で、

 何よりもロンバルト共和国の英雄だ」

ナディアは視線をアドバンスから外さずにジャンに話しかける。


「ナディア姉さん、確か東のロンバルト共和国のアドバンス将軍。

 西のカルタゴ帝国のハンニバル将軍。

 この2人がアーネスリア大陸の2強と言われていますよね」

グリフォンはアドバンスを前にして、その存在感に震えと興奮を同時に抱いていた。


「そのとおりだ。この大陸の英雄を相手にするには、

 今の愚者では、実力不足だ。

 愚者よ、ここは一旦退くのが得策だ」


「で、ここまで必死に逃げてきた連中が連行されるのを黙って見ていろって言うのかよ」


「相手と自分との力量を見極めろ!!!!

 今は勝てない、数においても相手に分がある。

 ここは一旦退いて、明日勝て」


「ナディア・・・・、ごめん・・・。

 それでも俺は、【今】負けるわけにはいかないんだ」

「この・・・どうしようもない愚者が!!!」

ナディアが大声でジャンの行動を非難する。


ジャンはまっすぐ進み出て、アドバンス将軍の前に立ちはだかる。

ジャンは騎馬の数が増えている事に気付いて、苦笑する。

「おいおい、ロンバルト共和国側の騎馬隊は出揃っているじゃないか」


「お前はこの村の人間じゃないな。それでもこの村の為に死ぬか」

アドバンスは、立ちはだかるジャンを隅々まで見て値踏みする。


「村は関係ない。

 このまま、この村を離れるのは夢見がよくないからな」

そう言うとジャンは、アドバンスを睨みつける。


「そうか、相手になろう」

そう言うと、アドバンスは馬から下りる。


「馬から下りると、身長の高さが目立ちますね」

グリフォンは誰に言うでもなく思った事を口にする。


「このアドバンスの片ひざを地面に着かせる事が出来たら、

 お前らの勝利にしてやろう」

アドバンスは無表情のまま、自分自身が不利になる条件を提示する。


「アドバンス将軍、さすがにその条件は再考をすべきかと」

騎馬部隊の中から他の連中と比べて、年長の男が進み出る。


「生殺与奪の権限はアドバンスが持っている」


「でしたら、私たちであの者達の相手を引き受けましょう」

「お前らでは荷が重い。

 あの男・・・久しぶりに楽しめそうだ、邪魔するな」



アドバンスはそう言い終わると同時に軽く走り出した。

その様子を見ていたジャンもアドバンスに向かって軽く走り出す。

どちらも徐々に走る速度を上げていく。


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」

アドバンスが、走りながら叫ぶ。

「いくぞぉぉぉおおぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお」

負けじと、ジャンも走りながら叫ぶ。



頭1つ半ほど高い身長のアドバンスがジャンに向かって左拳を放つ。

同タイミングで、ジャンもアドバンスに向かって左拳を放つ。


(ゴッ!!!)

鈍い音を立てて吹っ飛んだのは、ジャンだった。


「アニキ!!!」

「さぁ、戦いの火蓋は切って落とされたぁぁあああああ!!!!!

 本日実況するのは、レオ・ザ・ラウドです。

 よろしくお願いいたします」

レオは目の前の戦いに興奮して、実況する事を忘れてしまっていた為

実況開始タイミングが遅れてしまった。


「最初の一撃を受けたのは、ジャンだ!!!!!

 助走の勢いをのせた手痛い一撃を、勢いにのった状態で受けてしまった。

 これはキツイ一撃だ」

レオの声は、遠くまで聞こえる透き通った声を持っていた。

レオいわく、声を遠くまで飛ばす訓練を毎朝かかさずに行うのがコツらしい。


「腕の長さが全然違うな、空飛ぶ愚者よ」

ナディアは吹っ飛んだジャンを心配そうに見ながら、グリフォンに話しかけた。


「はい、身長差は腕の長さに比例しやすいですからね。

 苦戦するかもしれませんが、アニキならやってくれますよ」

グリフォンは滴る汗を拭う事もせずに、ジャンを見ていた。


ジャンが起き上がる。

ジャンの右頬が腫れ上がっていた。


「良い一撃を貰ったな」

ジャンは痛そうに右頬をさする。


「あれを受けて立つか」

一瞬、驚きの表情を浮かべたが、すぐさま無表情に戻る。


ジャンが再びアドバンスに向かって走り出す。

ジャンの行動を見て、再び、アドバンスもジャンに向かって走り出す。

「なんと、あの一撃を受けて、なお、同じ攻撃をアドバンスに仕掛けるのか!!!!」

レオが叫ぶ。


アドバンスがジャンに向かって左拳を放つ。

同タイミングで、ジャンは肩を突き出して走る速さを上げて、そのままアドバンスの懐に入る。


「アドバンスの拳が空を切った。

 勢いがのったジャンがアドバンスの懐に入り込んだが、

 勢いを殺さない、そのまま突っ込んでいく!!!!!!!!」


(ドッンッッ)

今度はアドバンスがジャンの体当たりを、まともに受けて吹っ飛ぶ。

しかし、膝は地面につかず踏ん張ってみせる。


「待っていたぞ、強者」

アドバンスが叫ぶ。

ジャンは今の攻撃を受けて片膝すらつかないアドバンスに内心舌を巻いていた。


「今のアニキの一撃を受けきるとは、相手は化け物じゃないですか」

グリフォンも驚きの声を上げる。


「だから、俺は何度も言っただろうが、相手が悪すぎるとな」

ナディアの表情が曇る。


「さぁ、勝利はどちらの頭上に輝くのでしょうか!!楽しみです!!!!」

レオは1人状況を楽しんでいた。


次回更新予定日は2016年7月1日の12時ごろです

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