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カルタゴ帝国奪還作戦 その13

とある国である事柄の対応が確定した。

それから数日後、ジャン達一行は遂に敵の本拠地に到着していた。

今までの仕打ちを倍返ししてやろうと意気込んでいたのだが・・・。

アーネスリア大陸東北一帯を治める【ロンバルド共和国】

国民から選出された元首と議員で政を司っている国で、

一年を通してあまり雨が降らない土地柄を利用して、

小麦の栽培を行い、小麦の産地として知られていた。


ロンバルト共和国の議会場-

108人の議員がその場に集まり、重要議題についての採決を取っていた。


『採決の結果を発表する。

 108対0全員一致で、我が領土西側で盗賊被害が頻発している原因である

 マーヴェリック盗賊団の壊滅、および、関係者連行を許可する』

議会場の中心にある議長席に座っている一番年を取った老人が、

威厳を持った声で、高らかに採決内容を読み上げる。

その場にいた全員が、採択結果に拍手をもって称賛する。


『また、近日、同様に我が国で発生しているゴブリンによる農作物・家畜の被害も

 馬鹿に出来ない事態となっている。

 よって、こちらも上記の採択内容に含み、討伐対象とする。

 任務発令をゴードン大統領に一任します』

その言葉を言い終わると同時に、議長席の隣に座っている大統領が立ち上がり、

その場で声を上げる。

『この任務をアドバンス・アネスティージャ大将軍に一任する』

大統領の命令にその場にいた全員が、先ほどよりも大きな拍手を送った。


『ロンバルト共和国の最強将軍なら、この任務も達成するだろうな。アドバンス将軍万歳!!!!』

『これで共和国の平和は間違いなし!!!!』

『これで国民の不安、不満は全て消えるな』

『しかし、最近、国境付近がいろいろ怪しくなっている。

 今まで魔物が人里に現れるなんて事はなかった。

 そもそもアーネスリア大陸に魔物なんて、稀にしか発見されなかったのに

 最近立て続けに、魔物被害、何があったと言うんだ』

『それも大陸の北側部分に偏っている気がするな』

『何が起こっているんだ、この大陸は』


【バタンッ】

議員達が入ってくる大扉が開いて、1人の大柄な男が入ってくる。


その男の髪は強い癖毛で波立っていた。

さらに肩よりも長く髪を伸ばしていた為、

よりいっそう波立っている髪型が強調されていた。

身長は2m近くあり、両肩には金属を流し込んで作られた獅子の頭部を

肩あてとして鎧の一部として装着していた。

その肩あてが彼の目印と存在感をより際立たせる事になり、

ゆえに子供達からは【獅子将軍】と呼ばれ人気があった。


「ゴードン大統領、アドバンスが来た」

議長席の前にひざまずき、ゴードン大統領を真正面に見据えて、言葉足りなげに呟いた。

この言葉足らずな所が礼儀知らずと言う議員は少なからずいたが、

彼の武力を一度目にすると、その批判は自然と消えていった。


「最近、悪さをしているマーヴェリック盗賊団を壊滅させて、

 捕虜、女、子供、老人を全て捕らえて

 国に連行せよ」

「わかった、いつもの権利をくれ」

「ゴードンの名の下に、アドバンス・アネスティージャ大将軍に生殺与奪の権利を与える。

 我が国に歯向かう者には、女、子供、老人、関係なく権利を行使するように!!!

 行け、我らの英雄、最強将軍アドバンス・アネスティージャ!!!!」

アドバンスは腰に下げていた身幅が広く刃身の厚い太刀を抜いて、それを天井に向かって掲げる。

「アドバンスはこの刀に誓う、ロンバルド共和国に平和をもたらしてみせよう」

野太い力強い声でそう叫ぶと、そそくさと鞘に刀を納めて議会場を後にした。

議会場から去る時には、あらゆる方向から期待の声を掛けられたが、

一度も立ち止まらずに、その場を立ち去った。


アドバンス・アネスティージャが率いる部隊は、約3000人だった。

構成は騎馬1000人、歩兵2000人からなっていた。

今回は、騎馬1000人を主力として、歩兵1000人を食料部隊、

残りの歩兵1000人を連行、または、逃走した敵の捜索部隊と割り振っていた。


たかだか、500人規模の盗賊団を壊滅するには、大規模すぎる兵力ではあったが、

もう1つのゴブリン討伐がアドバンスの中で、引っかかっていた。

引っかかっていた理由は、ゴブリン関連の捜索隊を何度か派遣していたのだが

全ての部隊が行方不明となり、未だに1人として帰ってきていない事だった。


「ゴブリンごときに壊滅するほど、我が国の兵士は弱くはない筈だがな」

そう呟きながら、愛馬にまたがり国を出発した。

マーヴェリック盗賊団の本拠地までは騎馬で3~4日の行程であった。



ジャン達は、マーヴェリック盗賊団の本拠地が丸見えになっている小高い丘の上から、

本拠地の様子を覗き込んでいた。

「おい、愚者よ、いつまでこうやってマーヴェリック盗賊団の根城を見続けるつもりだ」

ジャンの行動に真っ向批判を行うナディア。

「まぁ、そのー、あれだなー。思った状況ではなくてだなー、どうしたものかと考えている所だ」

ジャンはいろいろ考えていたが、良い方法がまったく思いついていなかった。

「ここまでの愚者とは思っていなかったぞ!!!!」

「ナディア姉さん、仕方ないですよ。

 だって、500人の荒くれ者達と戦うつもりで気張ってきたのに、

 いざ、本拠地についてみると、その姿はなくて、

 女性、子供や老人達が農作業をしている光景を見せ付けられると、

 やはり、肩透かしですよ」

グリフォンは、ジャンの心中を察して代わりにナディアに説明する。

「だが、ここで眺めていても意味はないだろ!!!」

「とは良いましても、女、子供、老人を倒しても意味がないと思うのですが」

レオが横からナディアの批判に突っ込みを入れる。

「ぐっ・・・だけどな、この状況を使わないわけにはいかないだろ!!!」

ナディアも明確な作戦があったわけではなかったが、この状況を好機として捉えていた。

「そうだな、確かに連中がいないのなら、

 連中の情報をかき集めるには、もってこいだしな。

 わかった、旅人を装って村に訪れてみよう」


丘を降りて、マーヴェリック盗賊団の本拠地に足を踏み入れた。

不審な4人組に気付いた村の女たちは農作業をしていた手を止めて、

子供を連れて、家に逃げて帰っていった。

「愚者よ、見事に警戒されているな」

「ナディア、原因は俺だけじゃないのだから、そっとしておいてくれないかな」

「アニキ、元から笑顔が得意じゃないですからね」

「おお、グリ、なんだ、ケンカか?」

「わたしが思うに、ここでの無意味なやり取りはやめておいて、

 さっさと情報集めをした方が良いと思われます」

レオが1人冷静に状況を判断する。

「しかし、レオ、この警戒されまくりの中で、どう情報を集める?」

ジャンがレオに向き直って純粋な質問をする。

「では、この村で一番大きな家、つまり、

 この奥のつきあたりに建っている家をあたってみましょう」

「なぜ、あの家なのだ?」

「家の大きさは、この団の中での権力と同義なのでは、と思いましてね」

「くくくっ、話しなれている愚者の方がどうやら頭が切れるらしいな」

ナディアがレオとジャンのやりとりを聞いて苦笑する。

「うるさいな」

ジャンは誰にも聞こえない声の大きさで愚痴った。


「すみません。旅の者なのですが道に迷ってしまって、誰かいませんか」

ジャンは適当な嘘をついて、一番大きな家の扉を叩きながら声を上げた。

家の中に人の気配はするが、動きはなかった。

ジャンは村を見回す。

500人の盗賊達が納まる大きさの村ではない事は一目でわかった。

そして、この村にある違和感があった。

「グリよ、この村は雨、露を凌ぐだけの精一杯のボロ小屋だが、作られたのは最近だな」

「はい、田畑も500人を養えるほどの耕作面積ではないですよ。

 そして、何よりもこれは出来立ての村のような気がしますね」

「ここ1、2年の間か」

ジャンは村を見渡していろいろな事を見て取った。

「これは食糧不足だな、500人が現実的な数値の場合だが」

「はい、アニキ、これでは町を襲ったとしても仕方ないですね」

「仕方なくても村を襲う正当な理由にはならないがな」

「わかっています。理由を知る必要が・・・」

グリフォンが言いかけて言葉を止める。

理由は目の前の扉が開いたに他ならなかった。


「旅の方ですか、どうなさいましたか」

痩せこけた老人が顔を出した。

身なりもボロで水浴びすらもまともに出来ていないように見えた。

「先日、自分達の故郷の【オンデンブルグ国】が戦乱に巻き込まれましてね、

 家が全壊したので【ロンバルド共和国】に移住しようと思って旅をしていたのです」

ジャンは咄嗟に嘘をついた。

オンデンブルグ国の話題を口にしたのは、先日出会ったナタリー達の話を聞いていたからだろう。

「【オンデンブルグ国】で何かあったのですか?」

この老人はオンデンブルグ国で起こった戦乱を知らなかったみたいなので、

一通り聞いたレベルでジャンは話した。

「そんな事があったのですか、この大陸はどんどん平和な土地がなくなっていきますな」

ため息を深く深くつく老人。

「確かにそうですね。ところで気になったのですが、この村は数年前まではありませんでしたよね」

ジャンはいきなり会話を本題に移す。

「はい、その通りでございます。この村【マーヴェリック村】と言いまして、

 1年ほど前にこの土地に逃げ込んだ者達で作った村でございます。

 私はこの村の長老タデと申します。

 と言いましても、名ばかりの長老でして、

 実質的な代表は、孫のハボックが勤めています」

ジャン達は、老人の言葉で初めて村を襲撃してきたマーヴェリック盗賊団の頭目が

ハボックと言う名前である事に気付いたが、

あえて口にはしなかった。

「話のコシを折ってしまって申し訳ないが、単刀直入に聞く。

 何から逃げてきたのだ」

ナディアが痺れを切らして率直に質問した。

次回更新予定日は2016年6月17日の12時ごろです

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