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カルタゴ帝国奪還作戦 その9

舌戦に持ち込んだビッグフィッシュ。

相手の弱みを言い当てていく我慢比べ、

先に耐えられなくなるのはどちらか!?


ビッグフィッシュの力の片鱗が垣間見える!!!

「うろたえるな、我が同胞達よ。

 金髪トサカ野郎の話を真に受けるな!!!!」

マーヴェリック盗賊団のボスが叫ぶ。


『でも、助ける優先順位が決まっているのは事実だろ』

『俺、ここに置いていかれるなんてゴメンだ』

『来月、結婚するんだぞ、絶対に帰ってみせる』

『みんな、どうするんだ、やるのか?』

マーヴェリック盗賊団がザワつく。


「うぉおい、お前ら、聞け!!!!

 奴の話にはそもそも穴がある。

 誰がバカ真面目に英雄の弟子を相手にするものか。

 村人を集中的に襲撃する。

 何よりも先に女、子供を人質にして、

 英雄の弟子どもと、男どもの動きを封じる。

 後は、連中が従うまで、女、子供の首を1つづつ跳ね飛ばしていく。

 それで連中の動きは制限される」

味方側の士気が落ちている事を見抜き、盛り返そうと鼓舞するマーヴェリック盗賊団のボス。


『そうだ、バカ真面目に弟子どもと戦う必要なんかねぇよ』

『俺たちにはルールはない、一番汚い手で潰してやる』

『あいつらの戦場でやるんじゃねぇ。俺達の戦場であいつらをやるぞ!!!』

マーヴェリック盗賊団の士気がにわかに盛り返す。



「確かに、強い者にわざわざ立ち向かう必要はありませんね。

 しかし、村側の被害は確実に増えますが、

 先ほどの負傷者問題は残ったままになりますよ。


 こちらは人質が取られる前に弟子の皆さんが率先して戦い、

 戦う意思のある村の男達で女・子供を守る戦いを繰り広げる。


 後は時間が経過する毎に、こちら側がより有利になっていくでしょう」

ビッグフィッシュは強きの姿勢を崩さずに舌戦を続ける。


その話を聞いて、マーヴェリック盗賊団は静まり返った。


「よく見ろ、先ほどから鳥みたいにピーチクパーチクと声を上げている男と

 村人の中にいる連中を・・・、どうみても村の人間とは違う連中が

 入り込んでいる。と言う事は、こいつらはいずれ村を離れる。

 

 英雄の弟子どもも師匠がいない今、この村に残る理由はなくなった。

 と言う事はこの村の連中は、すべての守りを失い、

 自分達だけで俺達と戦わなければなくなる。


 結果は見るよりも明らかになるだろうな」


マーヴェリック盗賊団のボスはそう言うと高笑いしてみせる。


『そういえば、俺達の意思だ!!とか言っていた男は今日、

 村に来たばかりの旅の連中じゃないか』

『ああ、酒場に来ていた連中だったよな』

『じゃあ、連中は村に危険をもたらしたのか?』

『英雄の弟子たちも、ライオンマスクがムザムザいたぶられている時に、

 助けに行かなかった事を根に持っていたら、この村から離れるんじゃないのか?』

【バウンディ村】の人々は、マーヴェリック盗賊団のボスの言葉にザワつき出す。


「少し押し返されたみたいですね」

ビッグフィッシュは少し残念そうな表情で独り言を呟いた。


「ヘルムート、ビッグフィッシュは負けたの?」

ナタリーは村の状況を見て心配する。

「俺たちが旅人と見抜かれたのは痛い。

 だが・・・・・・」

ヘルムートは汗を一筋流す。

しかし、表情はビッグフィッシュを信じていた。


「アニキ、戦いは起こるのでしょうか?」

グリフォンが心配そうな声を上げる。

「この場を無傷で切り抜けれれば、何とかできる・・・が

 金髪君を信じるしかないだろうな」

ジャンは相変わらず渋い表情のままだった。


「安心してもいいと思う。相手のボスもバカじゃない。

 何よりも、この舌戦は相手を押し切る必要がなくて、

 相手の攻める姿勢を崩せばいい。

 そして、攻める姿勢はマーヴェリック盗賊団のボスが

 金髪さんの舌戦を引き受けた時点で、勝敗は決していた」

レオは、この場の誰よりも金髪君の意図を汲み取っていたのか、

目の前で起こっている事柄に軽く震えていた。


「レオさん、どういう事ですか?

 何故、勝敗が決していたのですか?」

グリフォンはレオの言葉の意味が理解できず、聞き返す。


「彼らの部下が言ってましたが、

 【あいつらの戦場でやるんじゃねぇ。俺達の戦場であいつらをやるぞ!!!】

 ってね。

 これは真理ですよ。

 言った本人は、なかなかどうして盗賊団においておくのが勿体無い。

 彼らの本分は、【暴力であり、武力戦】、それが【言葉を用いた舌戦】の舞台で戦った時点で、

 マーヴェリック盗賊団の詰みだったと言う事です」

レオはこの舌戦が始まった時点で、

最悪の結果は回避できたと確信があった。



「よく聞け、【バウンディ村】の連中どもよ!!

 今日はあくまで下見で来たのだ。

 14日後の正午に、また訪れる。

 その時には【従属】に対しての返事を頂こう。

 もちろん、今日の兵力がマーヴェリック盗賊団の全兵力ではない。

 我が団の兵力は今日の5倍はあると言っておこう。


 全兵力を持ってして村を包囲してやろう。

 楽しみにしているがいい!!

 全員、行くぞ!!!!!!!!」

マーヴェリック盗賊団のボスはそう言うと、来た道を引き返していく。

ボスの意見に不満な表情を浮かべながら、

倒れていた仲間を回収して退散していくマーヴェリック盗賊団。


連中の馬の蹄の音が消えるのを、村にいた人々は黙って見守っていた。

馬の蹄の音が聞こえなくなり、砂煙も見えなくなってから、ようやく村の1人が呟いた。


「村が助かった・・・」


その言葉を聞いて、緊張の糸が切れたのか、村の人々が歓喜の声を上げた。



ホッとして、地面にひざまつくビッグフィッシュ。

「ビッグフィッシュ、あなた、最高よ!!!!」

ビッグフィッシュの背中に抱きつくナタリー。

「よくもまあ、あんな大舞台をやってのけたな。凄いもんだ」

そう言うと、ビッグフィッシュの頭をクシャクシャなぜるヘルムート。

「なぁ、ビッグフィッシュ・・・」

ビッグフィッシュの前に立つクラッシュ。

「どうした、何か聞きたい事でもあるのかい?」

ビッグフィッシュもクラッシュに向き直る。

ビッグフィッシュの頭の上にはナタリーが不思議そうな顔でクラッシュを見ていた。

「俺は力だけで戦ってきた。

 より、強い力が敵を倒す方法だと思ってた。

 でも、今日、力じゃない力で敵を退けたビッグフィッシュを見て、凄いとおもった」

クラッシュはクラッシュなりの賛辞をビッグフィッシュに送った。

「ありがとう。

 これが魔王の力なのか。

 思った以上に地味だな」

ビッグフィッシュはそう言うと照れくさそうに笑った。

「どうやら、煽動と言う能力に近いのかもしれないな」

ヘルムートはビッグフィッシュの能力を思い出して、あてはまる言葉を選ぶ。

「人をあおり立てたり、行動を起こすように刺激を与える力・・・か。

 今の僕にはちょうど良い力かもしれない」

ビッグフィッシュは自分の能力を口に出しながら確認する。

「まぁ、何よりも村を守った。

 ビッグフィッシュの言葉で、死傷者はでなかった。

 ライオンマスクを除いて・・・は、な」

そう言うと、ヘルムートはジャン達の方を少し見てから、酒を飲みなおそうとして酒場に戻っていった。

その様子を見てクラッシュとナタリーが後に続く。


その後、ビッグフィッシュはすっかり雨が止んで晴れた夜空を見上げた。

いつもより輝いて見える夜空を目に焼き付け、目を閉じる。

そして、再び目を開けて、ジャン達の方に歩いていった。


「おい、愚者どもは酒場に戻らなくていいのか?」

ジャン達の側に立ったままだったナディアが、ジャンに話しかける。

ジャン達はライオンマスクの周りに座り込んで顔を見ていた。

「師匠、何とか村の被害は出ずに済みました。

 師匠以外の死人は出ませんでした」

グリフォンは涙を流しながら結果をライオンマスクに報告していた。

「ナディアさんって言ったか。

 俺たちはライオンマスクを火葬して、【体を大地に】【魂を天に】帰してやらないといけない。

 君は酒場で皆、盛り上がっているだろうから、行って混ざってきたら良い」

ジャンはライオンマスクを見ながらナディアに返答する。


「あの・・・」

英雄の弟子達に話しかけるビッグフィッシュ。

「おお、あなたは言葉の力を示した英雄じゃないですか!!」

レオがビッグフィッシュを見ては喜んで握手する。

「凄かったですよ。言葉で100人を撃退するとは思いませんでした!!!!」

グリフォンも笑顔で英雄を称える。

「ありがとうございます。でも、連中の戦力は少しも削ってはいません」

ビッグフィッシュは不安そうな表情を浮かべながら、ジャンの方を見る。

「いや、戦力を削るよりも、今は村の被害を食い止める方が優先だった。

 そして、それを見事にやってくれた。

 ありがとう、感謝する」

ジャンは感謝の言葉を口にしながら握手する。

「こちらこそ、ありがとうございます。

 僕の名前はビッグフィッシュです。

 ジャンさん、グリフォンさん、レオさん、後、お嬢さんも、今後ともよろしくお願いします」

そう言うと軽く一礼するビッグフィッシュ。

「おい・・・、お前まで侮辱にするのか。【じょうちゃん】と呼ぶな!!!!

 私の名前はナディアだ!!!!」

大声でビッグフィッシュに向かって叫ぶナディア。

「えっ!!!あ、その、すみません。ナディアさん」

ビッグフィッシュは驚いて、ナディアに頭を下げる。

「いや、まぁ、そのなんだ、見た目だけで判断すると、

 その・・・10歳ぐらいに見えるわけだし、

 ビッグフィッシュも悪気があったわけでもないだろうし、

 なぁ、グリ?」

ジャンは咄嗟にビッグフィッシュのフォローに入る。

「えっ、そこで話を振りますか?

 えっと・・・、そうですね・・・、レオさん、お願いします」

グリフォンはレオに助けを求めた。

「わたしとしましては、この場合、本人の主張を聞き入れる・・・方が」

レオはそう言いかけて、殺気に気付いて振り返る。

そこには負のオーラをまとったナディアがプルプル震えていた。


「オレはゆうに300年は生きているぜ!!!お前らなんか赤ん坊みたいなもんだ!!!!」

そう言うと左足を前にドンッと出して前傾姿勢でガンを飛ばす。

その場の男達は目の前にいる良い所のお嬢ちゃんが、全力で睨むと言う変わった状況に固まっていた。

次回更新予定日は2016年5月20日の12時ごろです

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