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第七話 初飛行

とりあえず、お姫様抱っこをしていたユーリを俺のベッドに横にする。


「あ、あの・・・申し訳ありません・・・」


頬を朱に染めながら、こちらを上目遣いで見てくるユーリ。

『メトメガアウーシュンカーン』

・・・ないな。

自慢じゃないが、容姿その他に魅力が無さ過ぎるのは、自分が一番良く分かっている。


「こちらこそすまなかったな。稽古つけてもらって」


むしろHTMMを触らせてもらってと心の中で付けくわえる。

いかん。姫が物凄い目でこちらを睨んでいる。


「そ、そうだ!ちょっとあれだ。いい物を作ろう!」


おれは姫の視線を誤魔化すように練成に入る。

魔力の取り込み装置と・・・通信機能。

形は・・・カフスでいいか。


「よっと」


掛け声と同時に手のひらにうっすらと青く光るカフスが3つ現れる。


「これ、つけてみてくれ」

「これは・・・何でしょう?」

「ふむ・・・通信装置か、中々複雑なものを作るのう?」


早速二人につけてもらい、俺も左耳にカフスをつける。


「あー、あー。本日は晴天なり」

「うむ。よく聞こえておる」

「これは・・・すごいですね!」

「俺の魔力で作ったんなら、俺が干渉できる範囲ならどこでも使えるのかな?」

「そうじゃろうな。ちなみに、どの程度まで干渉できるんじゃ?・・・って、サクヤのとこから来たんじゃったな。ならこの世界ならどこでも通じるじゃろう」


ん?サクヤの世界からだと何かあるのだろうか?

一応聞いてみたほうがいいのかもしれないな。


「サクヤの世界から来るとなにかあるのか?」

「うむ。サクヤの居る世界はな、魔力の使用が極端に制限されておるのじゃよ。なぜなら・・・」

「なぜなら?」

「あの世界の住民は皆、魔力に上限や制限が無いからじゃ」

「魔力の上限がないんですか!?」


ユーリが驚きの声を上げる。

マジか!

てっきり、この世界ではトップの魔力量とかかと思っていたんだが、使い放題とは!


「うむ。だからこそ、あの世界では魔力の使用が制限されとるんじゃよ。何もせずに全てが出来てしまうからの」

「なるほど・・・そういうことか」

「神達ですら、『信仰』という制約があるんじゃ、何もなしで無尽蔵にそんなことさせたら・・・お察しじゃな」


確かに。

そんなことになれば、人間は堕落しきるだろうなぁ。

職業が皆ニートとかやばすぎる。


「じゃから、トーマ。お主もその辺心しておくんじゃぞ?まぁ、妾は心配しておらんけどな」

「わかった。ニートするのは国を立て直してからにするよ」

「そうじゃな」


俺の軽口に姫は一瞬母親のような笑みを浮かべる。

色ボケでもやっぱ女神様だな・・・などと考えていると。


「いま、失礼なことを考えてたじゃろ?」

「いいえ、めっそうもありませんよ?姫。まぁ、連絡手段が出来たから、祠とやらの位置を教えてくれ」

「その前に、一応身を守るものを作っておいたほうが良いんじゃないですか?」


と、ユーリの提案。

確かに、身を守るもの・・・ねぇ。


「素材にミスリルとかオリハルコンとかあるのかねぇ・・・?」

「うむ。その辺が良いじゃろうな」

「マジか!」


ヤバイ、めちゃくちゃファンタジーだ!

これこそ異世界の醍醐味!

がちがちのフル装備とかは多分厳しいが、それっぽくしてもいいなぁ!

中二病心をくすぐられまくりである。


「ミスリルには魔力を減退させる効果が、オリハルコンには魔力を増幅される効果があります」

「トーマの場合、オリハルコンのほうが愛称は良いじゃろうな」

「わかった!」


さて、何を作るか・・・

っても、あれだな。余り馴染みの無いものだと却って邪魔になるな・・・なら!


「ほいっ!」


目の前に現れたのは、黒を基調としたタートルネックのシャツといわゆる軍パン。

それと反りのキツイ刀である。

いわゆる『居合い刀』と呼ばれる刀で普通の刀より若干短く作ってある。


「ほう?トーマは剣術をつかえるのじゃな」

「まぁ、『そこそこ』だけどな。爺ちゃんに教えてもらったんだ」

「おじい様に・・・ですか?」

「ああ、爺ちゃんはもと軍人でね。戦艦・・・ってもわかんないか。戦う為の船に乗ってたのさ」


餓鬼のころにはみっちり仕込まれたものである。

今はカフェの主人なんかをしているが、そこにも同じ船の仲間がこぞって集まっていた。

懐かしいなぁ・・・


「お強くて、優しいおじい様なんですね・・・」

「まーな」

「なら、心配は要るまい」

「んで・・・っと。これがこの周辺の地図なんだが・・・」


言いながら地図を出す。

うん。だんだんこなれてきたぞ。

地図には真ん中に今居る聖樹。そこから半径10Kmくらい平地が続き、周りをぐるっと円形に山々が連なっている。

その南北に山の切れ目があり、そこに道が通っている。

山の高さも結構なもので恐らく人の足では超えることは不可能だろう。


「ここと・・・ここじゃな。あと、ここと、ここ」


姫がほぼ正確に東西南北の山のてっぺんを指差す。

うわー・・・・これ結構時間かかるぞ・・・

ってか、たどり着けるのかこれ・・・

いや、待てよ?

なにも歩く必要ないじゃないか、魔法で飛べば良い!

瓦礫を浮かせられるんだ、それくらい・・・

ん。だったら・・・


「なぁ、魔法で瞬間移動って出来るのか?」

「魔力の干渉できる範囲なら可能だと思います。私も100mくらいなら何とか可能です」

「トーマなら、どこでも行けるじゃろうな」

「ユーリでもそんなモンしか行けないのか・・・」

「何を言っておる!ユーリは大分魔力の多いほうじゃぞ!トーマが規格外なだけじゃ!」


うーん、ってことはあれか、あんまりホイホイ魔力を使ってると目をつけられる可能性があるってことか・・・

面倒ごとは御免なんだけどなぁ・・・

まぁ、考えてても仕方ないか!

そんときゃ、テンプレで神の使いとか言っときゃいいか!


「よし!んじゃ、行ってくるぜ!」

「気をつけるのじゃぞ!」

「無理はしないでくださいね!」


瞬間移動ときたらあのポーズ。

国民的漫画、ドラゴンでボールな主人公の真似をして、額に二本の指を当てる例のポーズを決める。

まずは・・・北だな。

意識を集中し俺は人生で初めて『跳んだ』。

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