第五話 作戦会議
さてさて、目標が定まったところで作戦会議である。
姫が俺の四畳半をものすごい勢いで所望したので、せまっ苦しい四畳半のテーブルを三人で囲んでいる。
姫曰く、『どこからか情報が漏れてもいかんのでな』とのことだ。
うん。もっともらしい事言ってるが表情が信用ならん。
さて、まず考えなきゃならないのは。
1 この場所の安全確認及び食料などの確保。
2 拠点の確保。
3 もし生き残りが居るならその救助と、受け入れ。
1に関してはここを襲った魔物の動向と何らかの防衛手段の構築。
食糧なんかは最悪強引に魔力でおとり寄せすれば何とかなるか。
2に関しては俺の理性の都合上絶対不可欠である。
横に美少女。隙あらば、既成事実作成まで目論んでそうな美女に、精神攻撃を受け続けては数日のうちに『俺の精神力はもう0よ!』ってなことになりかねない。
3に関しては魔力使用時のマップでフィルターをかけられることが判明したので、近隣に人間が居るかどうか位ならおそらく分かるはず。
あとは受け入れに際しての箱。住居等だが・・・これは魔力で建ててしまおう。
この概要を話すと姫からこんな話が飛び出す。
「安全確保なら結界の復活をすればよかろう、この町の東西南北には祠がある。その様子を見てきて欲しいのじゃ」
「ふむ。つまり、破壊されたか稼動できない状態になっている。と?」
「そういうことじゃな。そうでなければ、あんなにやすやすと魔物の大群なぞ入り込めはせぬじゃろうよ」
「結界の破壊って、魔物に出来ることなのか?」
俺の問いに姫は首を横に振る。
うわ、キナ臭せえ。
つまり、魔物を手引きした『誰か』がいるってことだ。
しかもそれは『この王都を破壊しても問題ない。もしくはそれ自体が目的』ってことを示す。
基本的に国の拡張の為の戦争とかは『なるべく生産能力や、人民を傷をつけずに国に取り込む』ことを目的とする。
ぺんぺん草も生えてないような土地を位置から開拓するより、ある物を有効利用することが基本だ。
逆に、宗教戦争だとかイデオロギーなんかの対立だと『完膚なきまでに叩きつぶす』ことが目的となる。
この場合裏で手を引いているのが人だった場合、どう転んでも面倒ごとの匂いしかしない。
妨害工作も考えられるし、姫の情報漏えいの件はあながち間違っていない判断だ。
まぁ、魔物に人が操られてるなんて場合もあるが、用心に越したことはない。
「ふむ。つまりは・・・・さっさと結界を復旧して、救助を急がんと間に合わなくなる可能性があるってことか」
「そういうことじゃな、だが、その前に、トーマに万が一があったらそれこそ手詰まりじゃ。最低でも魔力の扱い方を、一通り覚えることが先じゃな」
「そうしてもらえると助かる。使いこなせれば色々便利そうだしな」
「では、妾じきじきに・・・」
「その役目、私に任せていただけないでしょうか!私も、何か役に立ちたいんです!」
ユーリ真剣な眼で訴えてくる。
セクハラ姫に教わるとなると、セクハラを受けることは確定的に明らかである。
色ボケ女神の毒牙から俺の貞操を守るのに、まさに渡りに船。
姫も嫌いではないがやはり肉食系過ぎる。
恋愛とかそういうのをすっ飛ばしてR18というのはギャルゲーマーとしてあまりにもいただけない。
その点ユーリはギャルゲーの基礎が分かっている!
いや、本人はそんなこと思っていないんだろうけど!
こーゆーラブラブイベントを複数回こなしつつ、好感度を稼ぐのが楽しいんだろうが!
おっと、熱くなってしまった。
まぁ、真面目にチートの概要を把握してしまったほうが、対応能力も上がるだろうし。
俺はなるべく真剣な表情をキープしつつ答える。
「ユーリ。俺に魔力の使い方を教えてくれないか?」
「はい!喜んで!」
ユーリがいい笑顔で答えてくれる。
一瞬某ブラックな居酒屋チェーンが頭をよぎるが、そこは封印して。
そんな感じで俺の魔力トレーニングはスタートしたのだった。