第一話 日常の終わりと異常の始まり
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○番揃じなんて気にしない!
第一話 日常の終わりと異常の始まり
夕暮れ。
いや、夕暮れというにはいささか時間が遅い。
見慣れた住宅街はすっかり闇に沈み、いまや街頭の明かりのみが人っ子一人居ない住宅街を寒々しく照らしあげている。
「今日も・・・残業・・・か」
一人呟くが、聞くものは誰も居ない。
片手にはコンビ二の袋。
毎日着まわしのよれよれのスーツ。
どれもなじんでいるといえば聞こえはいいが、代わり映えのしない日常。
器用に片手でスーツのポケットからタバコを取り出して火をつける。
「早く帰って・・・酒飲んでアニメ鑑賞したい・・・」
そう一人ごちると足を速める。
今日は新作アニメの一話が録画してある。
オタクリーマンの唯一つの癒し。心の支えだ。
安アパートの前に着くと鍵を開け、レンジに弁当を放り込み、風呂に入り、四畳半の定位置にスタンバイ。
窮屈なスーツを脱ぎ捨てスウェットの上下といういでたちで、片手にビール。タバコも酒もおつまみもスタンバイ。
「ここからが・・・オレのターンだ!」
無駄に決闘者兼社長のポーズを決めながら再生ボタンオン!
ドーン!
再生ボタンを押したと同時に、派手な音とともに部屋がゆれる。
「は・・・・!?」
『心がぴょんぴょんするんじゃぁ』で有名?な軽快なオープニングが流れる部屋でフィギュアが揺れる。落ちる。
「いかぁぁぁぁぁぁぁん!?」
自分の体も省みずダイビングキャッチ!
テーブルにダイブしたため体はだいぶ痛いが、限定フィギュア(某黄色い魔法少女)は死守!
そんなことをしてるうちに揺れが収まる。
バァン!
今度は玄関の方ででかい物音。
「え?今度は何!?」
音の出所に眼を向ける。
開け放たれた玄関から白いワンピース?を着た女の子が押し出されるように転がり込んでくる。
扉の向こうにはゴツイ鎧をまとったおっさん。
背景にはやたらと豪華な部屋とそこに燃え盛る炎が見える。
「嫌です!私だけ逃げ延びるなんて!」
女の子が叫びおっさんに取りすがる。
おっさんはそれを優しく抱きとめると、涙を流しながら肩を掴んで女の子を引き剥がす。
「お前は私達の希望なのだ。いずれはこの国を建て直し、率いていかねばならん。
それがミィクリ王家の第一皇女の役目なのだ・・・」
「でも!お父様!」
「だが、無理であれば一人の女として幸せになれ、国王である前に私は親なのだ・・・健やかであれ!」
そういうと、おっさんは女の子を突き飛ばし強引に扉を閉める。
バタン!
「おとうさまぁぁぁぁぁぁぁ!」
玄関に取りすがり慟哭を上げる少女。
「え?なに?え?」
状況を飲み込めずにフィギュアを持ち続ける俺。
「え?何この茶番・・・・?」
因みに再生していたほのぼの系日常アニメは、半分ほど過ぎ『銀髪の子が写真を取られる』くだりまで来ている。
微妙にシリアスになりきれない中に行われた茶番。
ともあれ、それが日常生活の終わりであり。
すべてのはじまりであった。