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23 悪夢

第三章開始です。

少し短めです。

 ――――何故こうなった?

 今の自分の心中を支配するのはその思考だけだ。

 確かに世の中とはどうにも思い通りになるものではない。

 予想外の出来事という者は常に起こりうるものだ。

 だが……このような事態をいったい誰が想像出来ただろうか?


 どうしてもその事実を認めることが出来ず、必死で背を向け、耳を塞ぎ、目をつむる。

 しかし……現実は何処までも非常である。

 己の選択が招いてしまった結果を一切の容赦なく突きつけてくる。

 

 ――逃げることは許されない。

 ――目を逸らすな。

 ――受け入れろ。

 ――これはお前のせいなのだ。


 ……お願いだ、止めてくれ!

 そんなつもりじゃなかったんだ。

 こんな……こんなことになるなんて思っていなかったんだ!?

 

 自分の悲痛な哀願に応えてくれる者は何処にもいない。

 反省と後悔と悔恨の念が沸き上がってくる。

 だが……もう遅いのだ。

 どれ程己を責め懺悔を捧げたところで時の流れは戻らない。

 現実へと向き合わなければならないのだ。

 ……全てがただの夢だったことを祈りつつソレ(・ ・)に目を向ける。



 ――見た目の年の頃は十代中盤。

 人形のように端麗な容姿の少女だ。

 絹糸のような金髪、陶器のようになめらかな白い肌、抱きしめれば折れそうな華奢な手足は貴族の少女を連想させる。

 しかしその紅の瞳は可憐な容姿に反するかのように気高さと凛々しさ、そして灼熱のごとき熱量を宿している。

 さらに柔らかで形の良い唇は自信ありげに笑みを形作っている。

 十人いれば十人が美少女だと認める……そんな少女が――




















「よくぞ辿り着いた! 冒険者達よっ! 余こそ、このダンジョンのダンジョン主――ノエルである!」


 ――なんか鏡の前でポーズをとり、冒険者を出迎える練習をしていた。

 …………いわゆる一つの厨二病というやつである……悪夢だ。

 もう一度だけ言おう……何故こうなったぁああああああ!?



 きっかけは随分と前のことになるが冒険者による襲撃だろう。

 この一件で無謀な行動をとり、配下を危険にさらしたノエルは目に見えて変わった。

 今まで以上に訓練に真剣になり、言いたいことはきちんと言うようになった。

 実戦経験を積むために実際に戦ってみる際も、事前に自分たちに相談した。

 「立派なダンジョン主になる」――その宣言を嘘にしないためにノエルは努力を重ねたのだ。

 ……それはとてもいいことだ。

 いいことなのだが……水面下では自分には予想しきれない事態が進行していたのだ。


 ……原因が何かと言えば遊戯室にある漫画本(・ ・ ・)である。

 一番最初のダンジョン創造の際、自分が「知識」からイメージし、自身がダンジョンだと判明したことで死蔵されていたソレら。

 「立派なダンジョン主」を目指すノエルは、よりにもよってソレらを参考文献にしてしまっていたのである。

 その結果――


「さぁっ! 今こそ雌雄を決しようぞ!」


 こんな残念な感じになってしまった。

 こうなる前に止められていれば……どうしてこうなった!?

 犯人は誰だ!? ――自分だ!

 思いもよらぬ失策に頭を抱える自分をよそにノエルは絶好調だ。



「さあ余の腕の中で息絶えるがよい!」


 ……実際にそんな状況だったら胸に剣でもを突き立てられるわ。


「太陽を余の手に……!」


 ……あなた吸血鬼ですよね? 灰になりますよ?


「……余はまだ二回の変身を残しているっ!」


 ……そんな機能は初耳だ。どこをどう変身するつもりだ。



 …………あ~まったくっ!

 どうしてこう予想の斜め上を突っ走るのか!? この娘は!

 本当にいったいどうしたらいいものか?


 しばし対策を考える。考え考え考え――

 ……………よし、見なかったことにしよう。

 考えてみればここはファンタジー世界。

 ファンタジーの住人とは厨二病を標準装備しているものである。

 そう考えればノエルの言動もむしろ普通と言えるだろう。

 ……万が一の時でも恥をかくのはノエルだし。


 うむ。割り切ってしまえば悩む必要などなかったな。

 これからは生暖かく見守ることにしよう。



「……だが、許そう。手に入らぬからこそ、美しいものもある」


 ……それは敗北台詞だろうがぁあああああああ!?

一人称を私にするか、余にするか、我にするか、妾にするか迷った件。

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