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21 罠

閲覧ありがとうございます。

 基本的に魔素が増えることは良いことだ。

 新しい魔物が創れるし、新しい道具も創れる。

 ダンジョンを広げることもできるし、罠だって設置できる。

 なので魔素を生み出す生物がダンジョン内に増えることも良いことなのだが……決してメリットばかりでもない。

 具体的に言えば――現在、複数の冒険者パーティーに攻め込まれている。

 しかもタイミング悪くリディアは外出中である。


 ……なんと卑劣な!? 貴様ら恥を知れい!

 男なら正々堂々と一パーティー毎に来い! いやさ、竜〇を倒したぼっち勇者のように一人で来い!

 …………うん、まぁ無理を言っているな。

 向こうとて死にたくないのだから、そりゃあ徒党も組もうというものである。


 侵入してきたのは3パーティー、13名。

 力量としてはそれほど高くはないと思う……おそらくだが。

 以前ダンジョン戦中に侵入してきて、一時の笑いを提供してくれた五人組。

 その中にいたおっさんほどの凄みは、見ている限りでは感じない。


 まぁ、それでも一度に13名というのは少々面倒だ。

 おそらくダンジョン戦で勝利しフラニー達を受け入れたことで、保有魔素が増加しこの数へと繋がったのだろう。

 しかしこちらもこういった状況を想定していなかったわけではない。

 罠を設置したり魔物を創ったりして準備はしている。

 とりあえずスケルトンの一体に指示(・ ・)を出し、他の魔物を防衛へ回す。

 

 ――さぁ冒険者達よ……生き残ることが出来るかな?




――――冒険者Aグループ


「おっと、また落とし穴だぜ」

「またかよ……」

「落とし穴ばっかりだな、このダンジョン」


 そんなことを言いながら冒険者たちが足を進めている。

 彼らが進んでいるのは落とし穴を集中的にに配置したゾーンだ。


「でもまぁ、大した罠じゃないから大丈夫だろ」

「だな、落ちても怪我もしないような代物だし」


 うむ、その通り。

 この落とし穴は消費魔素は少ないが、その分見つかりやすく殺傷能力も皆無だ。

 新米の冒険者でもこの罠を脅威とは感じないだろう……だからこそ、この落とし穴の役割は()()()()()()()

 ――では早速体感してもらおう。


「――なっ!? レイスだとっ!」

「スケルトンもいるぞ!」

「落ち着けっ! 陣形を整えろ!」

「お、おう!」


 おっと意外と早く立ち直った。

 割と経験豊富だったのか? しかし――


「うわっ!」

「くそ、足場が……!?」

「こ、こいつら!?」


 おーおー見事に嵌ってるねー。

 そう、この落とし穴の役割は侵入者を引っ掛けることでなく足場を崩すこと。

 思った以上に有効のようだ。

 もちろんこちらも足場がないのは困るので、陣営は浮遊できるセバスに長槍持ちのスケルトンで構成している。

 ……どうやらこの分ならこのゾーンは問題なさそうである。




――――冒険者Bグループ


「さっきから土人形(クレイゴーレム)ばかりですね」

「この分ならダンジョン主も人形(ドール)系なのかもな」

「……だとしたら面倒だね。こいつらもだけど、かなりしぶといから」


 いえいえ、うちのダンジョン主はわがままな吸血鬼(ヴァンパイア)ですよー。

 話をしながらも念入りに土人形(クレイゴーレム)を破壊していく冒険者御一行。

 ……そんな彼らにプレゼントを贈るとしよう。

 降りそそげ! 矢の嵐!


「なっ!?」

「魔物ごと!?」

「うぐっ!!」 


 土人形(クレイゴーレム)を巻き込む形で容赦なく矢が冒険者たちに降りそそぐ。

 卑怯? 知らん。勝てばよかろうなのだー!

 ……おそらく平時であれば事前に罠を察知するか咄嗟に躱すか、あるいは防御することもできたのだろう。

 しかしさすがに戦闘中までは無理だったようだ。

 即死は避けたようだが結構なダメージのようである。

 

「……おい、大丈夫かお前ら」

「……すいません、かなり不味いです」

「ちょっ! 前見て! 前ッ!」


 ……なのでお代わりの土人形(クレイゴーレム)を差し上げよう。

 もともとしぶといのが取り柄の上に単価の安い使い捨てだ。

 遠慮せず平らげてくれ。




――――冒険者Cグループ


「【火球(ファイヤー・ボール)】!」

「ギィヤァアアアアアアアアアア!?」

 おー燃えてる燃えてる。

 やっぱり木人(トレント)+に火魔法のコンボは鉄板だなぁって……んん?


「【水球(ウォーター・ボール)】!」


 唐突の出現した水の塊が鎮火を行う。

 さらに続けざまに水球が出現し折角の炎が消えてしまう。

 ……どうやら魔法使い(メイジ)が混じっていたようだ。

 しかも水属性持ちだとは運がない。

 幸い四人パーティーのうち二人は始末できたようだが、魔法使い(メイジ)の少年とリーダー格の剣士風の男が残っている。

 この組み合わせはネリス一人だけであれば厳しいだろうが――。


「ちっ! 何だこのハイスケルトンは!?」

「……ッ!」


 護衛に付けていたリーダーがいい感じに喰らいついている。

 素人目ではあるのだがリーダーの方が剣士より動きがいい。

 少しずつ相手の傷が増えている。

 魔法使い(メイジ)の少年も何とか援護したいようだが――


「【水槍(ウォーター・スピア)】!」

「【聖盾(ホーリー・シールド)】!」


 水の槍が光の盾によって防がれる。

 こちらの方もネリスが一枚上手のようだ。

 普段は仲が悪いようだがうまく連携出来ている。

 相手の方は初手でもって仲間二人が殺られた動揺もあるのだろう。

 この調子なら決着も時間の問題だ。




 ――概ねダンジョン内の戦況はこちらに有利に運んでいるようだ。

 実に結構結構……おや?

 Aグループの冒険者の一人が囲みから抜けることに成功したようだ。

 さてそいつの行き着く先は……ふむ、ノエルがいるだけだな。

 問題なし問題なし。


 ……………………うぇええええ!? ちょっ、なんでノエル!? ねぇ! なんで!?

 よくよく見ればいつのまにか玉座の間から抜け出し、ダンジョンを進むノエルの姿が。

 まてマテ待てまて。お願いだから直ぐに戻って、頼むから!

 必死でノエルに頼むが、全く返事をしてくれない。

 なんでだ! なんでこんなことに!?



 ◆ ◆ ◆



 ノエルは非常に不満だった――自分の(・ ・ ・)ダンジョンに侵入者がやって来ているというのに、何時も安全な場所で大人しくしていることを求められることに。

 自分の配下が自分を守るために戦っているのだ。

 ならば自分も戦わなくてはならない。

 何故なら自分はダンジョン主なのだから。


 だからこそダンジョンの目を盗んでノエルは玉座の間を抜け出した。

 しばらくしてノエルが抜け出したことに気がついたダンジョンが、うるさく戻るように訴えてくるが無視し続けた。

 そうしてダンジョンを進み続けたノエルは遂に一人の冒険者と対峙する。


「……なんだ、この小娘(ガキ)は?」

「がきじゃないよ! だんじょんぬしだよ!」


 命からがら死地から脱出した男はノエルの言葉に口角を吊り上げる。

 ――この小娘(ガキ)がダンジョン主だと言うのならこいつさえ殺せば。


「……んっ!」 


 剣を構え殺意を滾らせる男に対しノエルも拳を構える。

 ……こうしてノエルの初めての殺し合いが幕を開けた。

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