第2話 比翼
今回は『謎の男』視点で書かれていますので御注意下さい。
(マズい!)
目の前の自殺志願少女の体が、夜の闇に飛び出した。
(ココに着いた早々、いきなり目の前で自殺なんかされちゃ縁起悪すぎだよ)
そう思いながら、彼女の身体に必死で飛び付いた。思った以上に……重い!!!
引きずられる様にして俺の身体も落ちかかるが、危ういところでフェンスを掴む事が出来た。俺は身体を起こすと、そのまま一気にフェンスの内側へと飛び込んだ。
多少の高さは有ったが、まぁ問題は無い。3m程度だ。
暫くすると、少女がゆっくりと目を開いた。近くで見ると、つぶらな瞳の可愛らしい少女だった。高校生ぐらいか?
(さっき抱きかかえた時の感触といい、なかなか将来有望そうな感じじゃないか)
そんな事を考えていると、少女が口を開いた。
「どうして?」
少女が疑問を投げ掛けてくる。
「どうして……助けたんですか?」
……彼女が疑問を投げ掛けてきた。
「いや、落ちそうだったし」
間の抜けた返事だと自分でも思うが、咄嗟に上手い言葉が思い浮かばなかったからしょうがない。
「どうして……」
また、少女が口を開く。
「……どうして、生きていなくちゃいけないの?」
「そりゃ、生きていれば良い事が有るって言うか。……ほら、明日は明るい日って書くだろ?」
なかなか上手い言葉が見つからない。そもそも、俺にそんな事を言う資格が有るのか?
「明日なんて……あのまま死なせてくれれば良かったのに」
そう言った彼女の表情は、見ているこちらが辛くなる様な哀しい表情だった。
こんな表情をさせていて良い筈が無い。そう思った俺の口から、自分でも思いもよらない言葉が出た。
「じゃあ、この先の君の人生を………俺にくれないか?」
「…?」
彼女は不思議そうな顔をしている。
まあ、分からなくも無いが。しかし彼女が不思議そうな顔をしていたのは、俺の思っていた様な理由では無かった。
「…私を必要としてくれるの?」
なんて……哀しい事を言う子なんだろう。俺は本気で彼女を救いたいと思った。
だから………。
「あぁ、キミが必要だ」
彼女には分からないだろう、言葉以上の重い意味が有るこの言葉を……俺は彼女に伝えた。
彼女を、俺の《比翼》にする事にした………。