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草は何を考えて生きているのだろう。いや、何のために生きているのだろうか。学校へ行くときや帰るとき、道端に生えている草を見て、僕はいつもそういうことを考えている。人間に幾度刈られようが、何度も再生する。しかし、生えても人間にとっては大して役にも立たない。生きる理由もなく生きている。そういう点では今の僕と同じだ。草をみていると、なにやら親近感が沸く。
朝。目を覚ますと部屋の窓を覆うカーテンの隙間からこぼれる日差しが、僕の目を照らした。今日は何曜日だろうか?今日は学校へ行く日?休み?寝ぼけてそんなことを考えていると、スマートフォンのアラームが鳴り出した。アラームが鳴るということは、今日は登校日。僕は月曜から金曜だけにアラームがなるようにセットしている。毎朝七時十五分だ。
体を起こすと、右腕に痛みが走った。昨日、少しひねったのだろう。右手の手のひらもヒリヒリする。手のひらの皮膚がところどころ破れている。その感覚が、昨日の記憶を蘇らせた。そう。僕の右腕と手のひらがこうなる要因を作った、屋上でのあの出来事。