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その女子生徒はこちらを向いて立っていた。襟元まで伸びた黒髪に、眉毛が隠れるくらいの前髪のその女子生徒は、どこか陰湿な雰囲気をかもし出していた。
僕はその女子生徒へと近づいていった。やがて女子生徒は僕の存在に気づき、一重まぶたの細い目で、僕の目をじぃっと見つめてきた。その瞳は、僕に何を訴えているのだろう?
お互い見つめあいながら、沈黙がしばらく続いた。僕はこの女子生徒に何と声をかければいいのだろう?本来であれば「危険だから降りなよ」とか「はやまるな」とか言うのが普通なのだろう。少なくとも、この学校の教師はそう声をかけるだろう。しかし僕は、そんな言葉をかけようなどとは思わなかった。
「怖くないの?」
長い沈黙の末、僕は彼女にそう問いかけた。