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僕は家に帰ってから早速、御手洗陽菜から借りた本を読んでみた。『カメムシは嫌われ者』という本だ。
彼女の言うとおり、主人公の男子生徒はクラスでいじめられっこで、『カメムシ』というあだ名がつけられていた。頼れる友人も誰もいない。まさに四面楚歌の状態だ。僕は今のところ、いじめに遭ってはいないが、頼れる友人がいない点では共通していた。主人公を襲う毎日の卑劣な嫌がらせ。それに耐えかね、主人公はついに学級担任に相談した。しかし返ってきたのは「いじめる方は勿論悪いが、いじめられる方にも問題があるんじゃないのか?なぜ自分がいじめられているのか、考えたことあるか?」という一言だ。そう言われた主人公は、誰も信じられなくなり、ついには自宅に引きこもった。
そこまで読んでいると、重力に逆らい続けてきた僕のまぶたが、疲れ果てて目を塞いできた。また明日、続きを読もうとして、本の中にしおりのようなものが挟まっていないか探した。すると、折りたたまれた一枚のメモ用紙が見つかった。そのメモ用紙には、『御手洗陽菜』という名前と、メールアドレスらしきものが書かれていた。更には『途中まででも、感想きかせて』という一言も。このメールアドレス宛に感想を送れということだろうか。
彼女は、このメモをいつの間に書いたのだろうか。僕が図書室で窓の景色を見ている間に、こっそりと書いたのかもしれない。
とりあえず僕は、そのメールアドレスを自分のスマートフォンに登録した。誰かの電話番号やメールアドレスを登録する行為は、久しぶりだった。感想をきかせてとメモに書いてあったが、とりあえずメールに『本、貸してくれて有難う』とだけ打って、彼女に送信した。
しばらく待っていると、スマートフォンが振動した。御手洗陽菜から、メールの返信がきた。確認すると、メールには『誰?』のひとこと。そういえば、僕は自分の名前を添えるのを忘れていた。
『名前つけるの忘れてました。草居憐。クサイ レンです』と打ち込んで、返信した。




