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休み時間になると、教室にはいくつかの会話のグループが自然とできる。その数グループが奏でる不協和音が、どのグループにも属さない僕にとっては苦痛極まりない。その苦痛の時間を、僕はただ机にうずくまって、寝ているふりをしてやりすごす。
小学校、中学校までは、それなりに仲がよかった友人がいたが、高校生になった今、その友人たちとは離れ離れになり、新しい友人もできずに僕は完全に孤立してしまった。
騒がしい教室の居心地の悪さに、僕はひとり屋上まで昇った。雲ひとつない青空。今の僕の心とは正反対である。
僕は手すりに寄りかかって校庭を見下ろした。一ヶ月前に校庭の隅に咲いていた桜も、今では新緑の色へと姿を変えた。緑色の木々は風にあおられ、上下左右に揺れている。
揺れる緑色に見とれていると、僕が寄りかかっていた手すりが突然、軋みだした。何事かと屋上を見渡してみると、景色をみて心を落ち着かせていた僕の目に、衝撃的な光景が突き刺さった。女子生徒が一人、手すりに両足を乗せて立っていたのだ。今にも校庭に落ちそうな状態で。