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4前-07 理由

たまにカタリナ視点・・・

ルシアが傷つけられるまで、すこし時間を巻き戻る。


カタリナは、狩人の様子を見るためにルシア達から離れた場所にいた。


「きゃぁっ!!」


「っ!させない!」


ルシアとテンポの声が後ろから上がり、振り向くと、ルシアが吹き飛ばされていく。


「っ!」


硬直するカタリナ。

だが、よく見ると、ルシアは怪我らしい怪我を負っていない。

どうやら、ワルツが庇った結果、吹き飛んでいるように見えたようだ。


そして、ルシアが先ほどまで立っていた場所には、白い凶刃が空中から生えていた。


(まさか、何もない場所から剣が出てくるなんて・・・)


テンポが刃を掴んだおかげで、(ルシア)が大怪我を負うことは避けられたようだ。

だが、ルシアがいなくなった今も、天使の攻撃を逃すまい、とテンポはまだ刃を掴んでいた。




因みに、テンポがワルツの機動装甲をハッキングできるように協力したのはカタリナだ。

どのように協力したのか。

それを説明するためには、まず、どうやってテンポが機動装甲をハッキングしたのかを説明しなくてはならない。


テンポが機動装甲をハッキングした方法は、所謂、電波ジャックである。

ワルツの本体から離れて宙に浮いているワルツの掌、通称「反重力リアクターコア」は、本体からの無線操作によって制御されている。

なので、その通信に割り込んで、偽りの命令を送ってしまえば、外部から乗っ取ることが可能だ。


もちろん、何重ものセキュリティを抜かなくてはならないが、そこはワルツのコピー(テンポ)である。

電波さえ飛ばせれば、後は何も問題は無かった。


だが、ワルツが機能を制限したために、電波を飛ばすための回路もシステムも、テンポには搭載されていない。

そこでテンポが考えたのは、雷魔法を応用した無線通信魔法だ。

電波とは、言わば電気の波である。

雷魔法は電気そのものを操作する魔法だが、これをうまく利用すれば、電波と同じことができるとテンポは思いついたのだ。


だがそのためには、そもそも、テンポが魔法を使えなくてはならない。


ここでカタリナが登場する。

テンポを作る際、カタリナは骨に()()()()を埋め込んだ。


・・・オリハルコンだ。


オリハルコンはエンチャントなどの触媒として使われる他にも、杖などにも使用されている。

ただ、杖に使用されるオリハルコンはエンチャントされていない、無垢のオリハルコンである。

エンチャントされる前のオリハルコンは、純粋に魔力を貯めこむ性質があり、魔法使用者の意思で自由に使うことのできる、言わば水を溜めるバケツのような役割を持っていた。

それ故、術者は杖に一時的に蓄えられた魔力を利用して、普段よりも大きな魔法を行使できるのだ。


つまりカタリナは、テンポの骨にオリハルコンを埋め込むことで、身体全体を杖として使用できるようにしたのである。

そうすることで、例え体内で生成できる魔力が小さくても、ある程度溜め込めば大きな魔法を使える可能性があった。


だが、これ自体は、テンポが杖を持てばいいだけの話。

故に、カタリナの狙いの副次的なものに過ぎなかった。


本当の狙いは、テンポの魔道具化にあった。

魔道具は、オリハルコンに蓄えられた魔力を、言わば電池代わりにして魔法を発動するのだが、そのためには()()が必要になる。

要は、テンポが魔力を体内で生成できない体質でも、カタリナやルシアから魔力の補給を受けられれば、体内に魔力を保有できる、というわけだ。


他にもテンポが魔法を使えるようにするため、カタリナはできる限りのお膳立てをした。


尤も、一番の問題は、ガーディアンと同じ頭脳(ニューロチップ)を搭載したテンポが、魔力を認知して扱うことができるかということだったが・・・。


結果的に、そんなカタリナの活躍(暗躍?)もあって、テンポは無事に雷魔法の行使に成功したのである。




そして、ワルツの強化装甲をハッキングに成功して、今に至るのだが・・・。


ザンッ!


カタリナの目の前で、テンポが凶刃に切られた。

どうやら、もう一本、刃が出現したらしい。


テンポの肩口から吹き出す血しぶき。

右肩から脇腹に至るまでの縦に大きな切創(せっそう)だ。

テンポが倒れる。


「対象をロストしました」


そんな機械じみた声と共に、刃を両手に持った天使が異空間から現れた。

天使の眼中にはテンポなど無いようだ。


テンポを切り伏せた刃、それは、天使の両手が変形した骨のようなものだった。

肘から先が、骨で作った剣のように変形していた。


「対象を確認」


どうやら、壁のほうで気絶しているルシアを見つけたらしい。

天使は、急ぐことも焦ることもなく、ルシアの方にゆっくりと歩みを進めていく。




(・・・誰かが、止めないとっ!)


切られたテンポは重症だが、ホムンクルスなので簡単には死なない。

それを知っているカタリナの思考には余裕があった。


誰か、ルシアを救える者が近くにいないかと、カタリナは反射的に辺りを見回す。


見回した結果、無事だった仲間は、カタリナと・・・。


(あの人、誰・・・?)


見知らぬ者がそこに立っていた。


そこは、ワルツが立っていたはずの場所。


だが、代わりに真っ黒な髪をした者が俯き佇んでいた。

いや、真っ黒なんて烏滸がましい。

まるで、光を閉じ込めて外に逃さないかのような完全な()だ。




天使は目の前の攻撃対象を完全に捉えていた。

何故、目の前の少女(ルシア)が攻撃対象になったのか。

それは、魔法に用いる魔力の大きさが原因だ。


そもそも、魔女狩り自体の制度は、過大な魔力を有する女性を間引くためのものだ。

何故、神が魔女狩りを推奨するのか、その理由は天使たちには分からないが、強大な魔法を行使した女性を目撃した時点で、特別な理由がない限り命を奪うことになっていた。


そして、目の前の少女が使った魔法は神の代行者たる自分よりも桁違いに大きく、無視できるようなものでは無かった。

故に、この化け物じみた魔力を持つ少女を優先的に殺害することにしたのである。


ところで先程から、自分の行動を妨害してくる金髪の少女がいたのだが、天使はあまり重要ではないと考えていた。

重力操作が使えるということ自体は驚愕に値するが、古代魔術文明ではありふれた魔法であった。

今でこそ、使えるものはいないものの、天使にとって中和できない魔法ではない。


それに、ワルツと名乗った少女からは全く魔法を感じない。

要は、その程度の少女なのだろう、と天使は判断したのだ。

故に、本来なら魔女狩りの対象にもならないはずだった。


元々、彼女らを魔女狩りと称して捕まえた理由は、元勇者パーティーのメンバーのカタリナを抹殺するためだ。

カタリナの魔力は、目の前の少女よりも遥かに小さいが、それでも十分な魔力量を保有している。

本来は直ちに殺害すべき対象だが、1ヶ月前までは勇者の仲間として活躍していたため、魔女狩りの対象からは外れていたのである。

もちろん、神の思し召しで、だ。


しかし、今は勇者の仲間ではない。

故に、神の御下(みもと)へ戻るべきだ、と天使は判断したのだ。


カタリナと、もう1人の少女(ルシア)を処分するために、3人もの無関係な女性たちを犠牲にしてしまうことは、天使にとって非常に残念なことであった。

だが、神の代行者たる自分に刃を向けたのだ。

致し方あるまい。


(神の御下へ逝く際には、私直々に祝福を授けよう)


そう心に決める天使だった。




天使は()の使いである。

「触らぬ神に祟りなし」という言葉は、彼ら(神の使い)にとって意味を成さない。

何故なら()とは、彼らが神の代行(エクセキューショナー)として下す裁きなのだから。


故に、この世には関わってはいけない存在があることを理解できなかった。


故に、この世には関わらないように生活を送ってきた者達なのだから。


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