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9.0-03 バラの木03

王城職員たちを戦艦の方のエネルギアに乗せることで可能になったことがある。

なお、武装に関係したことではない。


どんな乗り物でもそうだが、大型化してくると、必要になるもの……。

すなわち、人々が寝るための個室、服を洗うためのランドリー、そして生きるために必要な食事などなど……。

ようするに、エネルギアの中は、大型船舶のように、人が住むための様々な装備が、充実しつつあったのだ。


その中でも、特に皆から注目を浴びる施設があった。


「さぁ、ラウンジの開店です!みなさん、がんばりますよ?」

「はいです!」

「頑張るかもだし!」

「どうして我はここにいるのだろう……」


外の景色をゆっくり楽しみながら、軽食や飲み物などを摂ることが出来るラウンジ。

それが、エネルギアの中で開店したのだ。

なお、店員は、ユリア、ローズマリー、イブ、飛竜、そして王城職員たち10名ほどで……。

前者4人は、時間があるときだけ参加し、普段は王城職員たちだけで、ローテーションを組む予定である。


ちなみに……。

メイド服がアイデンティティーと化していたイブを除いて、皆が専用のコスチュームに身を包んでいたようである。


それがルシアの眼に止まって、その服が気に入った彼女は、『店員になりたい!』と主張していたのだが……。

諸般の事情により、彼女は店員になれなかったようだ。


「おかしいよねぇ……絶対におかしいと思う。なんで私が店員になっちゃいけないの?ねぇ、テレサちゃん?」


と、コスチュームだけは手に入れたのか、それを着込んで、客席に座っていたルシア。


そんな彼女の向かいには――


「……そうじゃのう」げっそり


と、今日も彼女の愚痴を大人しく聞いていたテレサと――


「まぁまぁ、ルシアちゃん。私も店員にはさせてもらえなかったのですから、その残念な気持ちはよく分かりますわ?こういうときは、ポジティブに考えるべきだと思いますの。客としてサービスを受ける側にいられる、って」


ルシアと同じく店員に志願して、落選してしまったベアトリクスが座っていた。


なお、店員は、多数の応募の中から、公正なクジ引きによって決まったようである。

……そう、()()なクジ引きだ。


「そっかぁ……そうだね。じゃぁ……なに頼もっかなぁ。お寿司、無いかなぁ……」


「イブちゃんがいるので、うどんはあるみたいですけれど、流石にお寿司は……」


と言って、メニューに眼を向けるベアトリクス。

そこにはずらりと様々な食物の名前と、その金額が書かれていたが……。

その下の方に、まさか、まさかの項目が存在していたようだ。


「ありますわね……お寿司……」


「へぇ……。ここの店の店長、誰だろ?」


「どーせ、ユリアではなかろうかの?コスチューム決めたの、あやつじゃし……」


「なるほどねー。それなら確かに、お寿司のメニューがあってもおかしくないかぁー」しれっ


「しかもこの種類……相当、やる気のようじゃのう?」ちらっ


と、言いながら、首を回して、カウンターの向こう側で作業の指示を飛ばしていたユリアに対して視線を向けるテレサ。

するとそこには、彼女の視線に気づいて、ビシッ、と親指を立てるサキュバスの姿が……。


「……うむ。やっぱり、ユリアだったn」


「あっ!なにこのメニュー?!稲荷寿司プレーン味テレサ風味って書いてる?!」


「……は?」


「こ、これ……注文、注文しますわ!ありったけ全部、出してくださいまし!」


「ちょっ……ちょっと待つのじゃ!プレーン味って名前は分からんでもないのじゃ?じゃが何じゃ?この”テレサ風味”って……」


と、テレサが、プレーンなのか、何か風味がついているのか、意味不明な稲荷寿司のメニューに頭を抱えていると――


「テレサ様。お寿司の注文が入ったですから、作ってくださいです!」ぱたぱた


ローズマリーが伝票を手に駆け寄ってきたようである……。


「……マリー嬢?一つ聞いても良いかの?」


「はいです?」


「今……妾に作れ、と申したかの?」


「はいです!じゃぁ、お願いするですよ?」ぱたぱた


それだけ言って、忙しそうに、飛び去っていくローズマリー。


「お寿司、まだかなぁー」ちらっ

「小腹が……いえ、大腹が減って仕方ありませんわ」ちらっ


「……お主らの策略かの?」


「「さぁ?」」


「もうダメかもしれぬ……」げっそり


2人に誘われてラウンジに来たは良いものの、実は罠(?)に嵌められていたことに気づいて、机に突っ伏すテレサ。


しかしそれでも、彼女はどうにか立ち上がると……。

厨房の方へと重い足を向けたようである。


……ただし。

こんな捨て台詞を、その場に残して……。


「テレサ風味のう……ふむふむ……。ということは、妾が大好きな味の稲荷寿司を作っても良い、ということじゃな?ならば、作ろうではないか!……鼻にツーンとくるワサビがタップリと入った、大人な味の美味しい美味しい稲荷寿司を、の?」にやり


「「?!」」


そして、その後で、ルシアたちは、泣きながら稲荷寿司を食べることになるのである。

銀色のシャリではなく、緑色のシャリの入った、テレサ特製の稲荷寿司を……。


なお、テレサはその稲荷寿司を、実際に美味しそうに食べたとか……。



それから間もなくして、その場に1人の客がやって来た。


「ほう?確かに聞いてたとおり、眺めはいいな……。流石に人が多いようだが……このくらいなら読書に支障はないだろう」


脇に本を抱えた賢者である。

どうやら彼は、読書をする場所を探しに、ラウンジへとやって来たらしい。


そんな彼に対し、メイド服を着た店員が話しかける。


「いらっしゃいませかも?何名様かもですか?1名様かもですねー?」


「いや、まだ言ってないんだが……」


「だって賢者様、いつも1人かもだし……。今日も1人かもなんでしょ?」


「…………」


そんなイブの問いかけに対し、口を尖らせて、素直に答えたくなかった様子の賢者。

どうやら彼は、1人でやって来たことを認めたくなかったようである。

なお、どうしてそれを認めたくなかったのかについては、不明、とだけ言っておこう。


それから彼が、悔しそうな表情を浮かべながら、首を縦に振ろうとした――そんな時だった。


「いえ、3名お願いします。イブちゃん」


賢者の後ろから、メイド勇者と――そして、もう一人、ローブを羽織った人物がやって来たようである。


「う、うん……分かったかも……。じゃぁ、ここにお座りくださいかも。……3人、オーダー待ちかもだしー?」


「「「はーい」」」


「(あの人……一体、誰かもなんだろ?)」


勇者の隣りにいた人物が誰なのか分からず、首を傾げてしまうイブ。


それは、賢者も同じだったようだが……。

椅子に腰掛けたはずの賢者が、驚いた様子で再び椅子から立ち上がっていたところを見ると……。

どうやらそのローブを着た人物は、賢者のよく知っている知り合いだったようである。


それから勇者たちは、何やら込み入った話を、その場で交わし始めたようだ。



公正……とは何か?

哲学なのじゃ……。

辞書によると、平等だったり、公平だったりすることらしいのじゃ。

じゃが、その漢字の意味は、『おおやけにただしい』なのじゃ?

おおやけ……つまり、皆の者たちにとって正しい事、それが、公平、と考えられなくはないじゃろうか?

……無理かの。


あ、そうそう。

今日はもう、ここで、あとがきを切り上げるのじゃ。

明日は書いておる余裕が無いからのう……。

これから明日の投稿分を、以前の話の修正と合わせて、書かねばならぬのじゃ。


……話数シフト、本当に申し訳ないのじゃ……。




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