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8.9-20 準備20

一部、言い回しを修正したのじゃ。

大型ダンプカー並の大きさがある卵状の黒い塊。

しかしその表面は卵のようにツルツルとしておらず、まるで毛のような突起状の物体がびっしりと生えていて……。

そして、少し尖った部分には、長い髭のようなものと、真ん丸な形をした赤い点が2つ付いている……。

まさに、それの見た目は、大きなネズミだった。


『ちゅう……』


「「「「「「…………」」」」」」


その姿と鳴き声を見聞きして、唖然として固まるワルツたち6人。

皆、まさに、ありえないものを見た、といった様子である。


そんな中、一番最初に口を開いたのは、事情をよく知らないベアトリクスだった。


「あれも……エネルギア様なのですの?」


その言葉を聞いて我を取り戻したのか――


「ち、違うわよ!」

「エ、エネルギア?!大丈夫か?!」


と、同時に声を上げるワルツと剣士。


そんな2人は、その言葉から推測できるように、これ以上ないくらいに慌てていて……。

ワルツはマイクロマシン操作用のパネルを猛烈な勢いで叩き……。

そして、剣士は砂のように崩れてしまったエネルギアのところへと、必死になって走り寄った。


その他の者たちも、慌てた2人の声によって、我に返ったようである。


「な、何なのじゃ?!あれは……」

「私にも……分かりません……」

「どう見ても大きな……マギマウスにしか見えないな……」

「これって、もしかしなくても……拙いやつですの?」


と巨大なネズミ――――それもマイクロマシンの集合体で出来たマギマウスの姿を見て、それぞれに声を上げる4人。


すると、そんな時。


ゾワゾワゾワ……


マギマウスの形を構築していたマイクロマシンたちは、不意にその形を崩し始めようである。


崩れたマイクロマシンたちは、2通りに形を変えた。

1つは、砂のような状態のまま、その場の床にあった隙間へと入り込んで何処かへと消え……。

そして、それ以外の者たちは――


『『『ちゅう』』』


本来のマギマウスと同じくらいの大きさに分裂して、その場に留まったようである。

その数、およそ4万匹、といったところだろうか。


そんな彼らは、混乱する6人の前で、とある行動に出た。


『『『ちゅう!』』』


ドゴォォォォォ!!


マイクロマシンの集合体だというのに、魔法を使ったのである。

そう。

本来は単なる機械でしか無いはずの彼らが。


その魔法は単一の種類ではなかった。

風魔法を始めとして、水魔法、火魔法などなど……。

船内に土は無かったので、流石に土魔法が使われることはなかったが、多種多様な魔法が、弧を描き、ある一点を目掛けて、一斉に集中したのである。


その先は――――どういうわけか、カタリナの元だった。


「……そんなに私のことが……憎いですか?」


ドゴォォォォォン!!


魔法は、一切の例外なく、カタリナへと降り注いだ。

まるで彼女の事を嫌っているか、あるいは恨みを晴らすかのごとく……。


もしかすると彼らは――


「……実験用のマギマウスたちの亡霊でしょうか……」


事もなげに魔法を受け止めたカタリナのその言葉通り、彼女たちが実験に使ったマギマウスたちの怨念のようなものだったのかもしれない。


ともあれ。

どうやらマギマウスを形作ったマイクロマシンたちは、カタリナを始めとしたその場の者たちと、敵対するつもりのようである。

つまり、ワルツたちにとっても、彼らは敵、ということになるだろう。


しかし、彼女たちがマギマウスたちに手を出すというのは、そう容易な話ではなかった。

やろうと思えば一瞬で彼らのことを葬り去ることが出来ないわけではないはずだが……。

それでもワルツたちには、それが出来ない理由があったのだ。


「……どうしよう……」


緊急停止コマンドを付けずにマギマウスの形をしながら動き回るマイクロマシンたちを前に、重い頭を抱えてしまうワルツ。

彼女の眼から見たマイクロマシンたちは、その場に持ってきたときよりも、一体一体が比べ物にならないほどに大きくなっていた。

例えるなら、まるで何かを体内に取り込んだかのように……。


「食べられちゃったエネルギアのこと……どうやって助けよう……」


そう。

エネルギアのターボ分子ポンプは、マギマウスたちに食い散らかされ、今ではその形をすっかりと無くし、彼らの腹の中に収まっていたのである。

その場には他にも何機か予備のポンプがあったものの、それらには一切手をつけられていなかったところを見ると……。

オリハルコンを混ぜることで特別に強化していたエネルギアのコアたるターボ分子ポンプは、マイクロマシンたちにとって、特別なごちそうだったのかもしれない。

あるいは、最初からエネルギアのことを人質に取ろうと考えて、彼女のコアであるポンプを取り込める機会を見計らっていた可能性も否定は出来ないが。


つまり。

ポンプを元に戻してエネルギアを復元できるかどうかは別にして、ポンプの材料をマギマウスたちの体内(?)から取り戻すことを考えるなら、ひと思いに重力制御システムを使って、彼らを蒸発させるわけにはいかなかったのである。

あるいは、ワルツの機動装甲に搭載されているEMP兵器を使い、マイクロマシンたちを無力化するという方法も考えられなくはなかったが……。

しかし、それをすると、目の前のマイクロマシンたちだけでなく、王城にいるポテンティアを巻き込むことにもなるので、その方法も選択できなかった。


ならどうすればいいのか……。

マイクロマシンたちの制御権を完全に失ってしまったワルツには、その的確な解決方法が思いつかなかったようである。


それは、その場にいた他の者たちにとっても同じで……。

カタリナは、対生物の戦闘には向いているものの、機械を相手にした場合は、それほど効果的には戦えず……。

もともと戦闘が得意ではないテレサやベアトリクス、それに賢者にも、為す術は無かったようだ。


それは、剣士も例外ではない。

彼は単なる人間。

ワルツのような超兵器でもなければ、カタリナのような超人(?)でもなく……。

自身の身を守ってくれるエネルギアの存在が無ければ、少し剣の腕が立つだけの男性にしか過ぎないはずだったのだから。


ただ、彼の場合は、戦えるか戦えないかではなく――


「エ、エネ……エネルギアァァァァ!!」


身体が勝手に動いてしまったようである。

心の奥底から湧いて出る、怒りと後悔のやり場を、まるで身体の外へと求めるかのようにして……。



最後の一文……どうかと思ったのじゃが、とりあえず書いてみることにしたのじゃ。

いやの?文量が規定量に達しなかったゆえ……いや、なんでもないのじゃ。

まぁ、小説には、ちょっと臭うくらいの文が、ちょうどいいのではなかろうかの。

とはいえ、書いておることは至極真っ当なことじゃがの?


あ゛ー……。

この3日間、ストックを貯めようと思ったのじゃが、プラマイ0で、まったく増えなかったのじゃ……。

台風とか温泉とか整備とか……。

色々と忙しかったのじゃ。

じゃから、その分、今夜中に増やそうと思うのじゃ?

やるやる詐欺なのじゃ!


……もうダメかも知れぬ……。

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