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8.9-13 準備13

「何……プレゼントすればいいかな……」


『あの……ビクトール様?品物をプレゼントするのではなくて、さっきビクトール様自身が仰られていたように、一緒に花を摘みに行ったり、散歩したり、魔物狩りに出かけたり……そんな感じで、姉と一緒に思い出を作りに行く、っていうのではダメなのですか?』


「あのな?ポテンティア。お前は、エネルギアと一緒に花を摘みに行ったことはあるのか?一緒に散歩したことはあるのか?一緒に魔物狩りに出かけたことはあるのか?どんなことになるのか、お前は……知ってるのか?」げっそり


『えっ……あの……なんか……差し出がましいことを言って、申し訳ありませんでした……』しゅん


話せば話すほど、剣士の表情が暗くなっていく様子に気づいて、申し訳なさそうに謝罪するポテンティア。

どうやら剣士は、エネルギアと共にデート(?)に出かけると、ろくでもない目にしか遭わないらしい。


その内容がなんとなく想像できたのか……。

ポテンティアは、プレゼントの方向性を変えて、品物でも思い出でもないモノを提案することにしたようだ。


『では……ペットなど、いかがでしょう?』


「ペットか……んー……悪くないな。なら……最低限、エネルギアに轢かれても死なないくらいの強さを持ったやつを選ばないとな!(やっぱりドラゴンか?)」


『……すみません。今の話は無かったことにして下さい……(多分、姉に轢かれて死なないなんて……まともな”生物”の中では、あなたくらいしかいないと思います……)』


「そうか?悪くない選択肢だと思ったんだけどな……。まぁ、たしかに、ペットにまで痛い思いをさせるのもどうかと思うから……やっぱり無しだな……」


そう言って、町の中に立ち並ぶ店へと視線を向ける剣士。


彼らがいた通りには、カップルと思しき者たちが多く出入りしている店などがあって……。

全体的に、女性受けしそうなしそうな品物を取り扱っている店舗が多い通りだったようである。


それを見て、剣士が再び口を開く。


「アクセサリー……アクセサリーか……。エネルギアへのプレゼントとしては……ちょっと違う気がするんだよな……落とされても困るし……」


『(アクセサリーがダメだって言われたら、僕からは何も言えないんですけど……もう帰っていいですか?)』


と、微妙そうな表情を浮かべるポテンティア。

それから彼は、首を回して、王城の方を振り返るのだが……。

そこで彼は、なぜか、数秒ほど固まってしまう。


その後、何か思いついたことがあったらしく、彼はおもむろに声を上げた。


『こほん…………あ、そうだ!』


「ん?何かあったのか?」


『賛否両論はあるかもしれないですけど、こんなプレゼントはどうですか?』ニヤリ


「何だよ……勿体ぶって……」


とポテンティアの言動に、怪訝そうな表情を浮かべる剣士。


するとポテンティアは、あるものに向かって指を差しながら、短くこう言ったのである。


『……家です!』


「……は?」


『ですから、マイホームです!いえ、愛の巣と言ったほうg』


「いや、ちょっと待て!ポテンティア!お前、俺とエネルギアの間柄を何だと思ってる?!」


『えっ……夫婦ですか?』


「んなわけあるか!」


剣士はそう言って、大きなため息を吐くと、それから痛そうに左手で頭を抱た。

それを見る限り、彼がエネルギアに対して抱いているものは、やはり恋愛感情ではなかったらしく……。

ポテンティアの提案は、剣士としては受け入れられないものだったようである。


それに対し、ポテンティアはこう言った。


『しかし、ビクトールさん。姉の機嫌を直す最良の方法は、姉の思いを真っ直ぐに受け止めて、そして、その先に進むことだと……僕は思います。特にビクトールさんの現在の部屋は非常に小さく、誰かを迎え入れるようには出来ていません。あるいは姉のことをとりあえず置いておいたとしても、友人たちを受け入れる事などを考えれば、今よりも大きな部屋に住み替えることで、かなり多くの利点が得られることでしょう。そのついでに、姉のために引っ越した、という名目をつければ……ビクトールさんも納得できるのではないでしょうか?』


すると――


「……たしかに、広い部屋には引っ越したいと思ってたんだよな……。なるほど……。名目だけでエネルギアの機嫌が治るなら……悪くない選択肢かもしれないな……」


と考え込むような素振りを見せながら、そんな言葉を呟く剣士

それを聞いたポテンティアは――


『ですよね?そう思いますよね?』にっこり


何故か満面の笑みを浮かべていたようだ。


「…………?」


『い、いえ。僕としても姉の機嫌が治るなら、嬉しい限りですからね!』


「…………そうか。じゃぁ、今日はもう遅いから、明日あたり、ゆっくりと家を探そうと思う。その時……また付き合ってもらえるか?」


『えぇ、全然、良いですよ?』


「すまん。それじゃぁ……今日はもう帰るか。もう少しで姐さんの夕食の時間だからな」


そう言って、踵を返し、王城へと向かおうとする剣士。


一方で……。

ポテンティアはその後ろ追わず、その場に立ち止まったままで、剣士に対してこう言った。


『あ、すみません、ビクトールさん。僕はちょっと用事があるので……先に帰っていて下さい』


「あぁ、分かった。なら先に行ってるぞ?」


『はい。お気をつけて』


そう言って、小さく手を振りながら、剣士を見送るポテンティア。

こうして、剣士は着た道を戻って……。

1人、王城へと帰っていたのであった。



そして、剣士の後ろ姿が完全に見えなくなった後…。

その場には――――2人のポテンティアの姿があった。


内、1人の中身は、ポテンティアではなかったようである。


『……姉さん。もしかして、明日も身体を貸せって……言ったりします?』


『うん、もちろん!なんたって明日は、ビクトールさんと一緒に、()()ホームを探しに行かなきゃならないからね!』


『っていうか、素直に謝って、仲良く2人でデートしてくればいいじゃないですか……(僕のこと、巻き込まないでくださいよ……)』


『はぁ……ポテちゃんは分かってないね?まったく分かってない……。この、バレるかもしれないっていうスリルが良いっていうのに……』


『……すみません。僕には分かりそうにありません……』げっそり


姉の言葉が理解できず、微妙そうな表情を浮かべるポテンティア。

というよりも、理解するつもり自体が無かった、と言うべきか……。


――といったように、いつの間にかポテンティアの中身は、エネルギアにすり替わっていたようである。

電波を使ってマイクロマシンを制御している2人にとっては、中身を取り替えることなど、造作もないことだったようだ。



どうしよっかのー。

明後日辺りから、サブタイトルを変えよっかのー。

でも、すこし面倒くさいのー。

……最後の部分の番号がリセットされるのがのー。


というわけで。

このままじゃと明日は新幹線の中で執筆せねばならぬゆえ、今のうちに明日の分も予約投稿しておくのじゃ。

じゃから、今日のあとがきはここまで、なのじゃ?


まぁ……いつも駄文しか書いておらぬゆえ、長く書いても得する者はおらぬじゃろ。

いつかは、あとがきこそが"本文"と思えるような駄文を書きたいものじゃのう。

だとするなら……やはり何かネタを考えねばのー……zzz。


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