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8.7-24 シャッハ家24

「う゛ぅ……ごめんなざい」ぐすっ


煙を上げる馬車の横で、申し訳無さそうに仲間たちへと謝罪するルシア。


そんな彼女の眼の前には、馬や魔物たちに引っ張られるオーソドックスな形状をした馬車の姿があって……。

しかし、普通の馬車というわけでもなく、その車体の下には何やらメカメカしい装備が、所狭しと設置されていたようである。

まるで、電車のよう、といえば大体想像してもらえるだろうか。


「ん〜……出力オーバーで、モータの中身が融解して、爆発してしまったみたいですね〜。ラストスパートは良くないですよ〜?ラストスパートは〜。もう少しで前を走っていたお馬さんたちを轢殺するところでしたよ〜?」


「うん……。やっぱりお寿司を食べないと、集中できないみたい……」げっそり


「それ、単に、寝不足なだけではなかろうかの?というか、町についたのじゃ。これで、大豆が買えるゆえ、寿司が作れるのじゃ?あと、米も買わねばならぬかのう?」


「うん!じゃぁ、コルちゃん?修理の方お願いできる?ちょっと、お買い物に行ってくるね?」


「良いですよ〜?」


「じゃぁ、いこっか?テレサちゃん!」ぐいっ


「う、うむ……(妾、眠たいのじゃが……この感じ……寝ずに稲荷寿司を作れということじゃろうのう……)」げっそり


と、ルシアに手を引っ張られながら、ウェスペルの町の入町検査所に向かうテレサ。


そんな彼女たちは新しい馬車に揺られてやって来たわけだが……。

どうやら彼女たちは、完全な自動車を作る、などという暴挙には出なかったようである。

とはいえ、馬車の動力源は、馬による牽引と、雷魔法によるモータ駆動のハイブリッドだったらしく、ある意味でゼロエミッションビークル(ZEV)なので、超先進的な乗り物だったと言えるかもしれないが。


その後も馬車に残って、黒く焦げたモータとにらめっこしていたコルテックス。

すると、後ろの方から付いてきていた他の馬車群が、爆発した馬車の近くに停車して……。

その中の1台から、どこからどう見ても中年男性にしか見えない青年、ブレーズがやって来た。


「おう、どうした?エセテレサ(コルテックス)?事故か?あ?」


「事故といえば事故ですが、現状のシステムでは仕方のない事故ですかね〜?」


「あん?……あー、こりゃ見事に、コイルが焼きキレてらぁ。どんだけ電流、流したら、こんなになんだぁ?」


「たぶん、1000ボルト10000アンペアくらいじゃないですか〜?コアごと溶けていますし〜」


「原因はルシアの娘か……」


と、ドロドロに溶けてしまったモータを眺めながら、しかし何故か、嬉しそうな表情を浮かべるブレーズ。

どうやら彼は、根っからの職人気質らしく、何故モータが壊れたのか、そしてどうすれば壊れなかったのか、その原因と対策を早速考え始めたようだ。


「これ、どうすんだ?」


「そうですね〜。モータを取り外して、コアを分解したら〜……後は妾が稲荷寿司の材料にするのではないでしょうか〜?」


「……何言ってんだ?お前ぇ……」


「いやいや〜、妾は作ったみたいですよ〜?フェロシリコンを使ってニガリの素である塩化マグネシウムを〜。モータの鉄心はケイ素鋼なので、ちょっと成分を調整すれば、フェロシリコンの代わりとして使えますからね〜」


「モーターを料理の材料にするとか…………胸熱だぜ」


と、コルテックスの話を聞いて、やはり嬉しそうな表情を浮かべるブレーズ。

そんな彼は、もしかすると、職人ではなく、変態か変人の無類に入ると言ったほうが適切かもしれない。


それからブレーズとコルテックスの2人で、溶けてしまった巨大なモーターを馬車から取り外そうと、四苦八苦していると――


「……お手伝いしましょうか?」

「お?いい感じに筋トレができそうだな?」

「手が汚れるから、私は見物だけさせてもらおう」

『僕は周囲の警戒をしていますね』


勇者たち3人組とポテンティアがその場に現れた。

ブレーズが乗っていたのは、彼らの馬車だったので、4人ともブレーズと一緒に、すぐに近くまでやって来ていたのだ。


そんな勇者たちに対し、コルテックスが手を動かしながら返答する。


「手伝わなくても大丈夫ですよ〜?それよりも勇者ちゃんたちの方は、周りにいるサキュバスたちに気を付けたほうが良いのではないですか〜?襲われてどうなっても知りませんよ〜?」


「そうですね……警戒するのに越したことは無さそうですね。ちょうど、衛兵の方々もやって来たようなので……偵察がてら、私たちが皆様の入町の手続きを進めることにしましょう」


「そういう気配り、嫌いじゃないですよ〜?では、お言葉に甘えて、お願いしますね〜?」


「かしこまりました」


そう言って、本物のメイドよろしく、その場に近づきつつあったインキュバスやサキュバスたちのところへと向かう女装勇者。


……ちなみに。

人間側の世界では、男性がサキュバスたちと戦うことになった際、魔眼や幻影魔法の攻撃を受けないようにするため、女装した方がいい、という迷信がまことしやかに伝えられていたりする。

なお、その真偽については、まぁ、言うまでもないだろう。


そんな勇者の後ろ姿を見て――


「……最近、あいつが、本当に男かどうかを疑っちまうんだが……俺は正気だろうか?」


と、零すブレーズ。

彼は、勇者が男性に見えなくなってきた自分の感覚に、言い知れない恐怖を感じていたようだ。


それに対し、彼の眼の前で作業していた目の前で作業していたコルテックスが、なんてことはない、といった表情でこう答える。


「えぇ、間違いなく正気じゃないですね〜」


「……だよな……」げっそり


「そもそも、あなたの場合は、勇者が男性とか女性とか、認識がおかしいとかおかしくないとか、そういう問題以前に、ポテちゃんに好意を抱いている時点で、人間として終わってるとしか言いようがないですからね〜」


「なっ……!」


「何で知っているかって〜?皆、知ってると思いますよ〜?ポテちゃんを見る時のブレーズの視線……いやらしいとしか言いようがないですからね〜」


「いや、ちょっと待てや!下心なんて持ってねぇよ!」


「そうですか、そうですか〜。犯罪者は、みんなそう言うんですよ〜。ロリコンさんとか、典型例ですよ〜?」


「そんな訳…………やべぇ……アイツのことを考えると、否定できねぇ……」


と、コルテックスの言葉に同意できる部分があったのか、思わず頭を抱えてしまうブレーズ。


……なお。

ブレーズがポテンティアに何らかの特別な感情を抱いていることについては、男性衆を中心に広く知られていることだが……。

コルテックスを除いた女性衆の視点からは、少し違って見えていたようである

まぁ、その話については後ほど。



ほんと、昨日は猛烈に眠たかったのじゃ。

まぁ、深夜に仮眠を摂るという暴挙に出て、どうにか乗り切ったががの?


で、の?

昨日、一つ補足しておきたいことがあったのじゃが、眠気のせいで説明できなかったことがあるのじゃ。

……ユリアは、アーデルハイト(アリサ)に初めて出会った際、魔眼を使って彼女を尋問したと言うのに、なぜアーデルハイトは嘘を突き通せたのか。

ついつい書くのを忘れておったのじゃ……。


プランは色々と考えたのじゃ?

特殊なメガネを掛けておったことにするとか、ユリアが逆にアーデルハイトの術中に落ちておったことにするとか……。

でもまぁ、それほど重要な事でもないゆえ、もっと単純で率直な理由があることにしたのじゃ。

……アーデルハイトに幻影魔法や魔眼の類は効かぬ、と。

ゆえに、彼女は、長い間、サキュバスやインキュバスたちのトップに君臨し続けられておるのじゃ。

とは言っても、それが物語に影響することは無い……はずじゃがの?


あと、もう一つ、何か書こうとしておったことがあったような気がするのじゃが……思い出せぬ。

ま、その内、思い出したら、書くのじゃ?

多分、思い出せぬパターンだと思うがの……。


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