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8.7-03 シャッハ家3

そして朝食時。


「……ねぇ、イブ。私は料理を作ってもらって、ただ食べる側だから、文句を言うのは筋違いだ、っていうのは分かってるつもりなんだけど……なんか、肉の量、多くない?」


「う、うん……。マリーちゃんと算数の勉強をしてたら、肉の量が増えちゃったかも……」

「はいです……」


「……ごめん。ちょっと意味がよく分かんないんだけど……」もぐもぐ


どう考えても頭の中で、算数と大量の肉が繋がらなかったためか、肉を咀嚼しながら、首を傾げるワルツ。

その他の者たちも、ワルツと同じように微妙そうな表情を浮かべていたところを見ると、どうやら皆、イブたち2人の言い訳が理解できなかったようである。

まぁ、周りにいた地竜たちや、少女の姿の飛竜にとっては、肉の増減や算数などどうでもいい話だったらしく、彼女たちは美味しそうに肉を咀嚼していたようだ。


それから頭の中で適当な理由を付けて、どうにか肉の方程式を組み上げたところで……。

ワルツは、地竜たちの姿を眺めながら、改めてイブに対し問いかけた。


「あれ?そういえばイブ。もしかして、ドラゴンたちにも、朝食作ったの?」


「うん。あんねー、狩人さんが、ドラゴンさんたちの分の食事も作って欲しい、って頼んで帰ってったかもだから……」


「あ、そう……。でも、そうすると困ったわね……。ドラゴンたちの食事って、半端ない量が必要になるわけじゃない?その材料、どっから調達しましょっか?」


「……んー、たしかに、今日もマリーちゃんに沢山肉を切ってもらって、それを焼きまくったかもだしね……」


「でしょ?これから先、人里近くで、大量の魔物を狩るわけにも行かないし、かと言って、ドラゴンたちに断食しろとも言えないし、それに自分たちで狩ってこいとか、禄なことにならないような気しかしなくて、間違っても言えないし……」


これから先の人里近くで、ドラゴンたちを放った場合、彼らが自分たちの飢えを満たすためにどんな狩りを行うのか……。

ワルツはその様子を想像して、眉を顰めてしまったようだ。

そんな彼女の脳裏では、ドラゴンたちの口の中に、サキュバスたちの姿が大量に消えていく光景が繰り広げられていたのかもしれない……。


どうやらそれは、ユリアも同じだったようである。


「ちょっ……困りますよ?お腹が減ったからって、人を襲われるのは……」


「そうよね……。でも、この際、どさくさに紛れて、その憎き祖母を食b……いえ。冗談よ?」


「……正直言えば、私もそれはありかなって、思いましたけど…………流石にマズイと思います」


「うん……」


そう言って、頷くワルツとユリア。


それからも彼女たちは、皆で知恵を出し合いながら、地竜たちの食料問題について、頭を悩ませるのだが……。

結局、その場では、ミッドエデンから定期的に物資を届けさせる、という方法くらいしか、マトモな案は出て来なかったようである。

今が戦時であることを考えると、この地方の食料を不用意に消費して、ドラゴンたちを養うというのは、不適切だという結論になったのだ。

尤も、ドラゴンたちのことを戦力にできるというのなら、また別の話だが。


「まぁ、それくらいしか無いかしらね……」


と、口にしながら、エネルギアを往復させるか、あるいはコルテックスをこき使うかで悩むワルツ。

それから彼女が、逆にコルテックスにこき使われる可能性について考えていると――


「……ところでワルツ様。地竜たち皆のことを、我のように人化させるというのはいかがでございましょうか?」


皆が言おうとして、しかし誰も言わなかったその一言を、飛竜が口にした。

その提案が出てこなかったのには、いくつかの理由がある。


まず、ドラゴンたち皆が、言葉を喋られるわけではないこと。

今は言葉が喋られるポラリス経由でコミュニケーションしているので、どうにか地竜たちの統制は取れているが、これが小回りの効く人間の姿になった時に、彼らがちゃんと言うことを聞いてくれるか、確証が無かったのである。


あるいは人と大きく文化(?)の異なる彼らが、大人しく行動を共にできるか心配だった、という懸念も理由として挙げられるだろう。

飛竜は元々、人の世界で生活することに前向きだったので、すんなりと人々の生活に溶け込むことができたが、そうではないドラゴンたちが、同じように行動できるとは限らなかったのである。


いや、そもそもからして、『文化』という概念が理解できるか、まずはそこから不明だったと言うべきか。

着服、マナー、法、ジェンダーの問題などなど……。

社会の中では人が人として生きるのも、気を使わなければ大変だと言うのに、ドラゴンたちが人の姿をして生活するというのは、少し考えただけでも、大きな困難を伴う話だったのだ。


自ら人になることを望み、そして特に問題なく人間社会に適合できた飛竜にとっては、それが理解できなかったためか……。

彼女はなぜそのアイディアを誰も口にしないのか、と、疑問に思ったようである。


結果、飛竜は不思議そうに、ドラゴンの人化を提案したわけだが……。

それに対し、ワルツは、何故その選択肢を選べないのかのかについて、説明を始めた。


「いやね?みんなが貴女のように、人になりたいと考えているわけじゃないと思うのよ。まぁ、ポラリスっていう地竜なら、どうにかなるかもしれないけど……でも、他のドラゴンたちはどうかしら?そう簡単に人の姿になることを受け入れるかしらね?もしかしたら、『人間になんてなりたくなかったのに』って思うドラゴンも出て来るかもしれないけど……そんなドラゴンたちが、大人しく私たちと一緒に行動してくれるかしら?」


と、飛竜の提案に対し、質問を返すワルツ。

それはドラゴンたちが、なぜ言葉を話さないのか、その理由を知っていて口にした問いかけだったようだ。


すると飛竜は、ワルツのその質問に対して、こう答えた。


「ならば、望む者だけを人の姿にして、残りの者たちは現状維持のままでよいのではないですかな?そうすれば、すべての地竜たちが元の姿でいるよりも、必要になる食料はずっと減ると思うのでございますが……」


「貴女、言うわね……」


飛竜のその一言に、驚き半分、納得半分な反応を見せるワルツ。

周りにいた者たちも、同様の反応を見せていたところを見ると……。

皆、1か0、人化させるかさせないかだけに注意が向いていたためか、その中間に選択肢があることに気付いていなかったようである。


それからワルツは、ドラゴンたちを人化させるための液体『マナ』の残量について、魔法のポシェットの中でそれを管理しているイブに対し質問した。


「ねぇイブ?マナの残量って、どのくらいあるの?」


「んとねー……10リットル缶があと9缶あるかもだから、90リットル……でいいかもなんだよね?マリーちゃん?」


「足す1、忘れてないかもですか?」


「そっかな……。じゃぁ、プラス1で11書ける10だから……110リットル?」


「……イブとマリー?後でお勉強ね?」


「違ったかもなんだ……。んー、算数って難しいかもだね……」


「ですね……」


そう言って、うなだれる様子のイブとローズマリー。

2人とも勉強することに否やは無かったようだが、答えを間違えたことには、少なくないショックを受けていたようである。


「まぁ、90リットルもあれば、十分でしょ。少なくなってきたら、コルテックスかエネルギアに配達してもらえば良いことだし……」


そう言って、最後の肉料理を口の中に詰め込むワルツ。


それから、彼女は食卓から立ち上がると……。

ドラゴンたちの人化について相談するために、少し離れた場所にいたポラリスの元へと向かったのである。



お、おかしいのじゃ……。

校正の過程で詰まる部分を探しておるというのに、2日連続で詰まらなかったのじゃ……。

この2日間の執筆活動において、共通しておることと言えば……しっかりとした睡眠じゃろうか……。

もしかすると、土日以外の睡眠不足の時に、何らかの問題が生じるのかも知れぬ……。

まぁ、問題が生じたら、随時、分析する、という方向で行こうかの?


さて……。

しかし、スムーズに書けておるはずなのに、ストックが貯まらなかったのじゃ。

これはやはり……モチベーションを上げるための何らかの作戦に出るしか無いかもしれぬのう。

一番は、狐をモフることじゃが、ここからではキツネ村まで距離が離れすぎておるゆえ、今すぐは難しいのじゃ。

となると……ふっふっふ……。


プランを決行するかどうかは、今の時点ではハッキリとは言えぬが、明日、可否が決まるはずなのじゃ!

……多分の。


というか……もう、メカキツネでも作ろうかの……。


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