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8.6-34 ザパトの町19

内容がちょっとかなり、消化不良的にヘビーかも知れぬ……。

その坑道には、一行全員の姿があった、というわけではなかった。

一部の者たちは、中には入ること無く、外で待機していたようである。


例えば狩人とローズマリーの2人。

彼女たちが坑道に入ったところで何かが出来るというわけでもなかったので、2人は安全のことを考えて、外の森で狩り(?)をしていたようである。

まぁ、ローズマリーの年齢を考えるなら、外で待つことが適切であると言えるだろう。

……だからといって、狩りに出かけるというのは、また別の話だが。


その他、透明なスライムのような見た目のマクロファージ――もとい、コルテックスの姿も坑道の外にあった。

とはいえ、彼女の場合は、王都での仕事が忙しかったらしく……。

昨日、ルシアに稲荷寿司を宅配してからは、音沙汰が無かったようである。


……そしてもう一人。

飛竜も坑道へは入っていなかった。


「……我はどうも穴蔵というものが苦手だ……。何かあっても、すぐには飛びたてんし、圧迫感があるのは好ましく思えん……」


と、ワルツたちの姿が消えていった坑道へと向かって、なにやら憂鬱そうな視線を向ける飛竜。

家屋の中で生活する事に否やはない様子の彼女だったが、洞窟や坑道に入ることには気が進まなかったらしい。

尤も、普通の人間でも、好きこんでそういった場所に入り込もうとする者は、そう多くはないはずだが。


そんな彼女の隣には、その言葉を受けて返答する者(?)の姿があった。


「汝……。汝は、なにゆえ、人と行動を共にする?」


ここまでワルツたちに付いて来た地竜たちの内、勇者たちと戦闘を交わして傷だらけになった、ひときわ身体の大きな地竜である。

彼(?)は何やら飛竜に興味があったらしく、ワルツたちが坑道へと入っていったのを見届けた後で、外で待っていた飛竜の側へと近づいてきていたようだ。


「なにゆえ……か。主ら、森に生ける者たちにとっては奇妙に思えるかもしれんが、我は人のことを理解したいと考えておるのだ。それに我自身、ドラゴンたちの間で生きていけんことを自覚しておるからな。そのことは、人の言葉を理解する主なら……分かるのではないか?」


と、自身がワルツたちと共に行動する理由を、端的に説明する飛竜。


するとそれ聞いた地竜は、鼻からため息のような空気を吐き出してから、その大きな口を開いてこう言った。

そんな彼(?)がもしも人のような姿かたちをしていたなら、恐らく彼はこの瞬間、眉間に深いシワを寄せていたに違いない。


「……それゆえ、ドラゴンとして生きることを捨てたと申すか?某には理解できん。汝にはドラゴンとしての矜持はないのか?」


と、どこか責め立てるような言葉を口にする地竜。

それに対し、飛竜が答える。


「矜持……か。かつては、それに近いものがあったかも知れん。だが、人と暮らすようになってから、我は2つのことに気付いたのだ。その矜持がどこから湧いて出てきたものなのか、ということと……そして、人間がその矜持のことを正確に理解しておることをだ。これが何を意味するか……主には分かるか?」


「……汝は何が言いたい?」


飛竜の言葉に、地竜は苛立ちを隠せなかったようだ。

どうやら彼(?)は、飛竜が何を言いたいのかをおおよそ察しているらしい。

……つまり、ドラゴンたちがもつ『矜持』が、実は、人によって作られた偽物なのではないか、ということを。


そんな彼(?)の不快感を察した飛竜は、これ以上余計なことを言うと、地竜と喧嘩になると思ったのか……。

次の言葉を省略して、その次に言おうとしていた言葉を口にした。


「……結論から言えば、我らドラゴンは、人に操られているのではないか、と思うのだ」


「操られている……だと?」


「うむ。我らは、こうして、お互いに会話が出来るほどに高度な知性を持っておる。だと言うのに、人間たちと同じようにして高度な文明を築いていないというのはおかしい、とは思わんか?それに気付いて我は考えたのだ。人間たちは、我らの矜持やプライドといったものを焚き付けることで、我ら『ドラゴン』を森や山などから出られなくし、それと同時に、言葉を使い難くさせることで、我らの発展を阻害しているのではないか、とな」


その言葉に――


「…………」


黙り込んでしまった様子の地竜。

どうやら彼(?)は、飛竜の言葉に、何か共感できるものを感じ取ったようだ。


それから飛竜が静かに地竜の返答を待っていると、地竜は今度こそ大きなため息を吐いて……。

そして静かに眼を瞑ってから、再び口を開いた。


「……汝が何を考えているのかは理解した。だが、汝はそれを分かっていて、なぜ人間どもと行動を共にする?某なら、我らドラゴンのことを利用しようとする()れ者どもいるなら、残らず皆、食い散らかしてやるところだが……」


と、静かな口調でそう言いながらも、内心では激怒していた様子の地竜。

そんな彼(?)に対して、飛竜はこう答えた。


「実を言うと……我は、人のその行動を、悪意のある行動だとは考えておらん。人が人として生きる以上、勝手に生まれてくる習性のようなものなのだと捉えておる。何よりの証拠は、人間たちがお互いにお互いのことを褒めたり貶したりしていることだ。彼らはそれによって、無意識の内に、力の有無に関係なく、誰かを偉い存在として崇めたり、あるいは逆に虐げたりしておるのだ。……我らドラゴンを高貴なものとして扱うのと同じようにしてな」


そこで一旦、口を休める飛竜。

そんな彼女の脳裏では、もしかすると、ワルツやルシア、それにイブやテレサの姿が浮かび上がってきていたのかもしれない。


それから飛竜は、人と行動を共にする理由について話し始めた。


「しかし、彼ら人間たちは、それを上手く利用して、文明を作っておる。我らドラゴンには無い習性であることを考えると……もしかするとそれは、言葉を使って文明を築いていく上で、必要になることなのかもしれん。もしもそうだとするなら……それらを含めて人の習性を調査し、改善し、それを身につけることができれば、我らドラゴンの繁栄に大きく貢献できるかもしれん……そうは思えるのだ。あるいは、例えその読みが外れていたとしても、それを人間たちに対して、逆に利用することができれば、人とドラゴンの関係を、今とはまるで異なる形に持って行けるかもしれんしな。決して我らにとってマイナスになることはないだろう」


その説明を聞いて――


「…………」


再び黙り込んでしまった様子の地竜。

その際、彼(?)が、眼を丸くして、口を開けて、そして固まっていたところを見ると……。

どうやら地竜は、そこにいた少女の姿の飛竜が、到底、自分と同じ分類にある『ドラゴン』には思えなかったようである。


それから彼(?)は、何かを思い出したらしく……。

話題をそこで一旦切って、飛竜に対して、こんな質問を投げかけた。


「……そうだ。汝に一つ聞きたいことがあった。汝は何故……人の姿に変われる?魔法か?」


それに対し、飛竜は何かを考える素振りを見せてから返答した。


「以前、我は、人の姿に化ける方法を見つけるために、この世界を旅しておったのだ。その際、偶然、その方法を見つけてな。内容については……すまんが、おいそれと話すことは出来んが……もしや主も、人の姿になってみたいのか?」


と、ふと浮かび上がってきた疑問を、地竜に対して投げかける飛竜。

それに対し、地竜は、何故か空を見上げると、そこへと遠い視線を向けながら、こう言い出した。


「なってみたくはない……などとは口が裂けても言えぬ。某がこうして人の言葉を話しているのは、人から直接言葉を教わったからであるからな。……一度で良いから、人間たちがするように、『奴』と手を繋いでみたかったが……しかし奴はもう、生きてはいないだろう。例え奴がエルフだったとて、人である以上、短き生に変わりはないのであるからな……」


それを聞いて――


「……地竜よ。一つ聞きたいのだが……主は何歳なのだ?」


と、神妙な面持ちで問いかける飛竜。

どうやら彼女としては、地竜の性別や、彼(?)が思いを寄せていた人間がいたことなどよりも、年齢の方が気になったようである。


「某のことは……『ポラリス』と呼ぶがよい。人につけられた名だが、言葉を話さんドラゴンたちの間では、名前を呼びあうことは無いのでな。それで某の年齢であるが……忘れた」


「そ、そうか……(かなり行ってそうだ……)。あと、主が名乗ったということは、我も名乗る必要があるだろう。我が名はカリーナ。だが、普段は『飛竜』と呼んでもらっても構わん。皆からそう呼ばれておるからな」


「カリーナか……良い名だ。しかし……汝は随分と博識のようだ。ふむ……あの猫の娘といい、汝といい……気に入った。暫くの間、汝らについていこう」


「……えっ」


「む?何か問題でも?」


「い、いや……」


「ならば良いであろう」


そう言って図太い尻尾を、嬉しそうに左右へとブンブンと振る地竜――ポラリス。

そんな年齢不詳なドラゴンが付いてくる事に、飛竜は戸惑い気味の様子だったが、結局断ることが出来ず……。

彼女は、ポラリスの旅への同行を、許してしまったようである。

まぁ、その決定権は、飛竜には無いのだが。


なお。

飛竜自身が何歳なのかについては、誰も知らない。

ただその喋り方とは裏腹に、この世に生を受けてから、それほどまだ長くは経っていないようだ。

8歳児のイブの年齢を知っていて、それでも彼女のことを『師』と崇めている……。

……そのくらいの年齢である。



いやの?

飛竜は飛竜なりに、色々と考えておるのじゃ。

ただの、のんびりとした、トカゲではないのじゃ?

イブ嬢と一緒に行動して、人の習性というものを、しっかりと学んでおるのじゃ。

……まぁ、少々、変な勘違いをしている感は否めぬがの。


それはそうと……。

……飛竜とポラリスの喋り方を書き分けるのが、すごく大変だったのじゃ。

というより、飛竜と妾の喋り方を書き分けるほうが難しい、といったほうが良いかもしれぬのう……。

そのせいもあって、今回の話から、飛竜の喋り方が微妙に変わっておるかも知れぬが……どうか温かい目でスルーしてほしいのじゃ。

例えば『おら()』が『おら()』になってたり、の……。


……ダメじゃ。

時間切れなのじゃ。

書き切れなかった残り駄文については、その内、あとがきか、活動報告で書こうと思うのじゃ。


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