表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
843/3387

8.6-11 山越え11

ちょっとだけ、あとがきを修正。

「おい、みたか?あれ……」

「あぁ……。翼がないドラゴンも、空を飛ぶんだな……」

「「「いや、飛ばねえよ」」」」


木々の向こう側から鳴き声が聞こえたかと思うと、その声の主と思しき巨体たちが、突然、宙に浮かび上がった様子を見て、混乱している様子の人々。

ただ、そんな彼らの表情に焦りの色が含まれていなかったのは、ワルツたちと一緒にここまで移動してきて、彼女たちから少なくない影響を受けていたためか。


すると、そんなどこか緊張感に欠ける人々の様子を見て、メイド姿の勇者が、声を上げた。

そんな勇者の手に愛用の鉄パイプが握りしめられていたところを見ると、どうやら彼は、ドラゴンたちと戦うつもりだったらしい。


「皆様!まだ気を抜いてはなりません!見る限り、ここはドラゴンの巣窟の様子。もちろん、ワルツ様方が対応するはずですが、すべてではありません。私たちも気を抜かずに、いつでも戦えるよう、臨戦態勢を整えましょう!」


それを聞いて――


「「「お、おう……」」」

「そ、そうだな。だが、俺達だけで、ドラゴン相手に戦えるだろうか(誰だ?)」

「お前、そんなこと言ってたら、エクレリアの連中とはやりあえんぞ?(あのメイド、誰だったか……)」

「くっ!ここで女を見せてやるわ!(誰よ、この人……)」

「(男より女のほうが勢いがあるってどうよ……っていうか、コイツ誰だ?)」


――といったような反応を見せつつ、各々、手に持った武器を構える人々。

そう、彼らは、ワルツたちによって守られるために、ここまで付いて来たわけではないのだから。


……なお、言うまでもないことかもしれないが、魔族である彼らには、勇者が何者なのか、未だ知らされていない。


まぁ、それはさておいて。

そんな彼らのことを、微笑ましげに眺めていた勇者とは対象的に……。

今日も彼と一緒に行動していた剣士と賢者には、何か懸念のようなものがあったらしく、2人揃って浮かない表情を浮かべていたようである。


それから彼らは、勇者に対し、心配そうに問いかけた。


「おい、レオ?大丈夫か?戦い慣れて無さそうなあいつらのことをけしかけたりなんかして……」


「そうだ。皆が、冒険者や兵士ではないんだぞ?」


それを聞いた勇者は、特に表情を変えること無く、短くこう答えた。


「いえ、ポテちゃんが守っているはずなので、最悪の事態にはならないかと思います」


「「あっ……」」


「……もしかして、2人とも、新しい仲間を忘れていたのですか?」


アルバの町を離れてからと言うもの、なかなかボレアスへとやって来れなかったエネルギアの代わりに、剣士の護衛役(?)を担っていたポテンティア。

彼には本当に、剣士の護衛役をするつもりがあるのかどうかは定かでないが、少なくとも、力のない弱い者たちを、強い魔物たちから守っていたことは間違いなさそうである。

彼がやってきてからというもの、野営場所で、魔物の姿を見かけることが無くなったのだから……。


そんな彼と共に、勇者たちは、2週間ちかく同じ馬車の中で過ごしてきたわけだが……。

どういうわけか、勇者を除いた2人は、すっかりポテンティアのことを失念していたようである。


それにはこんな理由があった。


「あいつ、一緒にいるのに無口だから、存在自体すっかり忘れてたぜ……」


「あぁ……。本人も、無視してくれて構わない、って言っていたくらいだからな……。それにあの気配の消し方……恐らく、狩人姐さんに技術を学んでるはずだ……」


つまり、ポテンティアは、勇者たちの馬車の中では浮いた存在で……。

そればかりか、わざわざ気配を消して、空気に溶けるようにじっとしていたのである。

まぁ、正確には、ただじっとしていたわけではなく、静かに読書を楽しんでいたようだが。


と、そんな時。


『もしかして、呼びましたでしょうか?』


ポテンティア本人が、不意にその場へと現れた。

……ただし、人ならざる姿で。


「うおっ!?」


『何を驚いているのです?賢者様。大の大人がみっともない……』


「そ、その姿、どうにかならんのか?!」


『え?その姿?』カサカサ


「そ、その黒い昆虫の姿だ!」


『はあ……。しかし、違う姿に変わろうにも、今、僕の分身たちは、至るところに散らばっていますので、それは少々難しい話です。それとも、今のサイズのままで、人の姿になれと?……賢者様は、そんなとくしゅせいへきをお持ちだったのですか?……残念です」


「ちょっ……」


「ですが……賢者様のお願いとあらば仕方ありません。ここは僕も一肌脱ぐことにしましょう!」


「い、いや、いい……。俺にそんな変な趣味はない……」


と、黒い昆虫のような姿のポテンティアに対し、苦々しい表情を浮かべながら、首を降る賢者。


その際、2人のやり取りを見ていた(?)周囲にいた人々からは、小さな昆虫の姿をしていたポテンティアの姿だけは見えず……。

まるで賢者が独り言を呟いているようにしか見えなかったので――


「あの人、ちょっと危ないんじゃない?」

「ねぇ、ママ?あの人、誰とお話してるの?」

「ダメ!坊やは見ちゃダメよ?」


人々は、賢者に向かって後ろ指を差しながら、そんな感想を口にしていたようである。


「…………」


『……どうしたのでしょうか?賢者様。そんな苦々しい表情を浮かべて……』


「……いや、なんでもない」


周囲にいた者たちの話し声が耳に届いていたのか、心底、疲れたような表情を見せる賢者。

しかし、彼が、人々の誤解を解こうとすることはなく……。

彼は甘んじて、変人扱いを受け入れることにしたようである。

それがあたかも賢者たる彼の処世術であるかのように。


一方、賢者とやり取りをしていたポテンティアにも、人々の声は届いていたので……。

彼も、賢者のその表情の理由については、ある程度理解していたようだ。


ただ、それは別に、理解できないこともあったようだが。


『(……なぜ、賢者様は、言い返さないのでしょう?)』


『賢き者』がどうあるべきか、賢者の行動をヒントにして、その答えを探そうとしていたポテンティア。

そんな彼の眼から見て、今の賢者の振る舞いは、お世辞にも賢き者のようには映らなかったようである。


その結果、彼は、眉を顰めながら、まるで賢者の声を代弁するかのように、人々に向かって声を上げた。


『皆さん!賢者さんは、変な人ではありません!単に、自分の気持ちを表に出せない、かわいそうな人なだけです!』


それを聞いて――


「「「…………?」」」


周囲を見渡し、そして首を傾げる人々。

彼らは、何故そんな反応を見せたのか……。


要するに彼らは、その声がどこから飛んできたのか、未だに分からなかったのである。

今のポテンティアが、人ではない姿をしていて、その上、小さな昆虫の姿をしていることを考えれば、無理もないことだと言えるだろう。

更に言うなら、ポテンティアの言葉の中にあった『賢者』という単語が、いったい誰のことを指した言葉なのかも、人々には理解できなかったようである。


そして、その対象となった賢者の方も、ポテンティアに対して、何か言いたいことがあったようだ。


「……やめておけ、ポテンティア。話が余計にややこしくなる……」


そう言って、静かに首を振る賢者。

その後で彼は、虫の姿をしていたために表情が伺えなかったものの、どこか納得できなさそうな雰囲気を出していたポテンティアに対し、こう言った。


「『賢者』はな、世間一般的に言えば、変人なんだ。いや、変人だからこそ『賢者』になれる、って言ったほうがいいだろう。普通の人間は賢者になれないし、賢者は普通の人間になれない……。世の中、そんなもんだ」


『……だから、自分が変人扱いされても、言い返さないのですか?』


「あぁ、そうだ。自分が変人ではない証明が出来ないからな。だが、この場で言い返さなかったのは、それだけが理由じゃない。……後ろを見てみろ」


『後ろ?』


そう口にすると、賢者へと向けていた触角を後ろに回して、人々の方へと振り返るポテンティア。

そこで人々は――


「虫が……喋っている……だと?!」

「賢者?まさか、あの、憎き『勇者』と一緒に行動するという『賢者』か?!」

「なんか……色々と信じられないわ……」


ようやくポテンティアの存在に気づき、そして賢者と交わすその会話を聞いて、徐々に核心へと近づきつつあったようだ。


「……余計なことは言わなくていい」


『…………申し訳ありません』しゅん


自分たちに向けられるネガティブな視線に気づいて、ただでさえ小さいのに、さらに身体を小さくするポテンティア。

彼は、自分の失言で、賢者たちを取り巻く空気を更に悪くしてしまったことに、気がついたようである。


とはいえ、覆水が盆に返ることはなく……。

それからまもなくして、その場にいた人々は、怪訝そうな表情を賢者たちへと向けながら、彼らのことを取り囲み始めた。

お前たちは一体何者か……。

人々はそんな疑問を、賢者たちに投げつけたかったに違いない。


だが、幸か不幸か、賢者たちが人々の質問攻めになる、などという展開にはならなかったようである。

なぜなら――


ドゴォォォォン!!


「グオォォォォン!!」


その場へと、一際大きな身体を持った地竜系のドラゴンが、木々をなぎ倒しながら、突然現れたからである。



まず第一に謝っておかねばならぬことがあるのじゃ。

……やりすぎた、とのう……。

じゃが、後悔はしておらぬ!


……いや、サイズを小さくできなかったことを謝りたかっただけなのじゃがの?


キャラクターの相関図なのじゃ!






ズドォォォォン↓↓






3072 x 2186のサイズがあるのじゃ。

クリックして観覧する場合は、ご注意下さい、なのじゃ?


挿絵(By みてみん)


これ……図があったほうが混乱するのではなかろうかの?

ちなみに、この図は、ミッドエデンを中心にした国の位置関係でキャラクターを並べたものなのじゃ。

細かいところの線がつながってなかったりするやも知れぬが、これ以上書くと、線のトレースができなくなるゆえ、省略させてもらったのじゃ?

あと、頻繁には登場せぬモブについても省略させてもらったのじゃ。

……水竜はモブ……いや、一応、モブではないのじゃ!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 843/1782 キャラクターの相関図なのじゃ! だうんろーどなのじゃ! 画質がげっそり……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ