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8.5-27 流れ27

執政官の館で、業務の引き継ぎや、自分たちがこの町を去った後の執政について、最後の指示を飛ばしていたヌル。

そしてちょうどすべての作業が終わり、執務室から出て、ワルツたちのところへと向かおうとしていた彼女のところへと――


ズドォォォォン!!


――突如、高エネルギー体が突入してきた。

音速近い速度で飛翔してきた、重さ20キログラム前後の金属の固まりである。


本来、そんな物が突入してきたなら、部屋に居たヌルを始め、建物内部にいる殆どの者たちが、ただでは済まないはずだった。

だが、実際には、死者どころか、怪我人すら出ることはなく……。

そのどこからともなく飛来してきた攻撃の第一波は、執政官の館の壁を壊しただけで、それ以外に被害を出さなかった。


それは何も、当たりどころがよかったから、ではない。


『……まったく。執政とは無関係な市民たちもいると言うのに、一切の宣戦布告もなしに攻撃してくるとは……。解せませんね……』


飛んできた高エネルギー体――もとい、直径125mmの()()を、その場にいたポテンティアがマイクロマシンで作り上げた防壁で受け止めて……。

そして、その弾頭が爆発する前に、粒子サイズまで分解してしまったのである。


その一瞬の出来事に、ヌルやユキBを始めとした政府関係者たちや、その場に居合わせた剣士には、何が起ったのか、理解出来なかったようだ。

ただし、いち早くポテンティアの異変に気付いた賢者だけは、例外だったようである。


「攻撃か?!」


『はい。少々、長居しすぎたようですね』


「くっ……ヌル様!直ちに、町の人々の避難を進言する!」


「わ、分かった!皆の者!事前に打ち合わせた通り、地下壕に市民たちを誘導せよ!ケースDだ!」


「「「はっ!」」」


我に返ったヌルの一声で、一斉に動き出す兵士たち。

そんな彼らの役割は、この街へと攻撃を仕掛けてきた者に対して、報復攻撃を行う、のではなく……。

街の守りを固めるのと並行して、市民たち退避させることだった。

もしも彼らが反撃に打って出たとしても、以前と同じく、ただ返り討ちにされるだけの可能性が高かったので、彼らはこの窮地において、まず確実にできることから、手をつけることにしたのだ。


と、そんな時。


『……おや?第2波が飛んできたようですね』


攻撃のせいで壊れて無くなった窓の外を眺めていたポテンティアが、おもむろにそんなことを呟いた。


それに対し、賢者が、眉を顰めながら問いかける。


「どうにかなりそうか?」


『着弾地点は……またここです。余程、ヌルさまを亡き者にしたいのですね……。着弾まで、あと5』


「全員、耳を塞げ!」


「「「?!」」」


『2、1、インパクト』


ドゴォォォォン!!


そして再び、その場へと落下してくる高速な質量体。


するとポテンティアはそれを、先程のように防壁を作って受け止めるようなことはせず……。

2つの腕を伸ばして、その隙間をまるでレールのように使い、砲弾を滑らせながら受け止めると、それが自身の身体に当たる前に、再びマイクロマシンで分解してしまった。


『軌道が読めているなら、大したことはありませんね。弾頭も、近接(VT)信管のような凝ったものでもないですし。ただ評価すべき点は、精度の高さでしょうか。1発目からほとんど誤差もなく、狙ってここを砲撃してくるんですから。砲弾にライフリングが刻まれた様子はありませんが、2発目も殆ど同じコースを辿っていたところを見ると、恐らく魔法のようなもので、誘導されているのでしょう』


「…………」


『何をボケっとしているのですか?賢者様』


「いや、よくこんな状況下で頭が回るな、と思ってな……」


『それはそうではないですか。僕だって、エネルギア級の空中戦艦なのですから』


ポテンティアはそう口にすると、街中から黒い物体を集めて、執務室の中に、何やら筒状の巨大物体を作り上げた。

それから彼は、分解した砲弾の粒子を集め、再び砲弾を再構成して、それを筒の中に入れると――


『ワルツ()()()。攻撃の許k』


ワルツに連絡を取ろうとして――


ドゴォォォォン!!


――跡形なく吹き飛んだ。


その後で、賢者が持っていた無線機越しに、ワルツの声が飛んでくる。


『誰が、()()()()よ!この世界から消すわよ?ポテンティア!』


それに対し、今さっき、謎の重力場によって吹き飛んだばかりのポテンティアが、身体を再構築して返答した。


『いえ、そういう意味ではありません。テンポお母様の姉ですから、『叔母』です。あと、今度からは消し飛ばすまえに、警告して下さい。ふざけているわけではありませんので』


『あっ……それは申し訳ないことをしたわね……。でも、攻撃の許可は出せないわ?』


『何故ですか?』


『コルテックスが何かやる、って話よ?』


「「『えっ……』」」


『新しい魔法を考えたから、試してみたいんですって?まぁ、ポテンティアは暫くの間、そこで待機ね。その間、ヌルたちのことは頼むわ?(主に、コルテックスの魔法の巻き添えにならないように……)』


『分かりました。では、こちらの方の守備はおまかせ下さい』


『お願いねー』


そんなやり取りをして、通信が切れた後。

壊れた窓の外から、砲弾が飛んできた方角をポテンティアが眺めていると、そこに――


『……なるほど。あれが戦車というものですか……』


金属製の箱の固まりのような物体が多数見えてきたようだ。


そしてもう一つ。


「……何だあれ?」


『おそらくあれが、コルテックス様の新しい魔法、というやつでしょう』


彼らが眺めていた景色に、大きな変化が現れたようだ。

それも、この町を目指して走ってくる戦車たちの上空に……。



「ルシアちゃんは真似したらダメですよ〜?下手をすれば、世界が滅びてしまいますからね〜」


「えっ?そうなの?ミッドエデンで魔法の練習をする時、夜にたまにやってるよ?特に大きいやつ。すっごくきれいだよ?」


「いや、あの、できればすぐに止めて下さい。洒落になりませんから〜……」


「えっ…………うん……」しょんぼり


そんな会話を交わしつつ、ルシアに魔道具へと莫大な魔力を供給してもらいながら、それを巧みに制御していた様子のコルテックス。

言い換えるなら、コルテックスが、ルシアの魔力を手に入れた、そんな状況に等しいかもしれない。


ただ、コルテックスとしては、燃料が大量に手に入って嬉しい、というわけでも無かったようである。

その額には汗が滲み、真剣な表情が浮かんでいるところを見ると、彼女は必死になって魔力の濁流を操作しているようだ。


「……コルは何をしておるのじゃ?」


「んー……この感じ、滅びの呪文を唱えようとしてるかもだね。イブも一回でいいから、そんな魔法、唱えてみたいかも!」


「あの……イブちゃん?さっき、実際に『滅びの呪文』を唱えて、ワルツ様に消されかかっていた方がいらっしゃったようですわよ?」


「う、うん……。やっぱり止めておくかも……」


宿屋の屋根に上がって、そこから見える景色を眺めながら、取り留めのない会話を交わしていた少女たち。

そんな彼女たちの眼にも、不自然に吹き飛んだ構造物の姿が見えていたようで……。

皆が微妙そうな表情を浮かべていたようである。


まぁ、そんなオーディエンスたちが作り出す、重苦しい空気のことはさておいて。

いよいよ、コルテックスの魔法が完成しそうだ。


「……準備できました〜」


「あれ?コルちゃん、もしかして無詠唱魔法が使えるの?」


「え?普通、使えるものではないのですか〜?ルシアちゃんはいつも、詠唱なんてしていないですよね〜?」


「ちょっと火を付けるとか、ちょっと穴を掘るとか、その程度なら詠唱しなくても誰にでも魔法は使えるけど、大きな魔法の場合は、制御のために詠唱しないと、大変っていう話だよ?私の場合は力技で、無理やり魔法使ってるから、無詠唱魔法とはちょっと違うと思う」


「そうだったんですね〜……。今まで知らなかったです(()()()()火をつける〜……ですか〜……。多分、その基準、狂ってますね〜)」


日々、魔法の研究をしているものの、師がいなかったために、これまで完全に独自の魔法理論を組み立ててきたコルテックス。

そのせいか彼女は、魔法に詠唱は必要ない、と思いこんでいたようである。


「てっきり、魔法使いの皆さんは、格好を付けるためだけに詠唱しているものだと思いこんでいました〜。ある一定の年齢になると生じる心の病のようなものかと〜……。でも実は意味のあることだったのですね〜」


「う、うん……そうだよ?(ふーん……。なんでも知ってそうなコルちゃんにも、知らないことがあったんだぁ……。すっごく基本的なことなんだけど……)」


「せっかく魔法の名前を考えてきたのですが、私は無詠唱魔法使いのようなので、恥ずかしいので言わないでおきましょう」


「えっ……いや、無詠唱魔法でも、好きなように名前を唱えればいいと思うよ?こういうのって、気分が大事って、お姉ちゃんもよく言ってるし……」


「それを言ってるのがワルツお姉さま、ってところが腑に落ちませんが〜……そうですね〜。ルシアちゃんがそう言うのなら、気分を優先して、やはり魔法の名前を唱えることにしましょう」


そう口にすると、屋根の端の方へと足を進め、そこから見えていた戦車の大群の上空に向かって手を翳すコルテックス。

するとそこに、巨大な魔法陣が現れて……。


そして彼女は、その魔法の名前を口にした


「……アステロイドウィンドウ!」


その瞬間――


ズドドドドド!!!


魔法陣の向こう側から現れる、無数の光線。

それが容赦なく、戦車たちの上へと降り注いだ。


しかし、それらはよく見ると、『光』などではなく……。

その一つ一つが流れ星のように尾を引く、大きな岩石の固まりだった。

どうやら大気圏内を極超音速で移動する岩石が、空気の断熱圧縮により発熱し、自身を溶かしながら、落下してきているようだ。


「ふーん。小さい流れ星ばかりを選んで転移させれば、あんな風に使えるんだね?」


「でもダメですよ?真似したら。もしも間違って、大っきな隕石を呼び寄せたりなんかしたら、一発でこの星は滅びてしまいますからね〜。下手をすれば、お姉様でもどうにもならなくなる可能性がありますし〜」


「うん、分かった……。じゃぁ、今度、小さいやつだけ集める方法、教えてね?」


「えぇ、いいですよ〜?アステロイドベルトにある隕石を、一個一個サイズごとにフィルタリングしなきゃならないですが〜……まぁ、妾の頭を使えば、どうにかなるでしょう」


「んあ?な……なんじゃ?」ぶるっ


いきなり自分に話が振られるとは思ってもいなかったのか、ぎこちない様子で、ルシアたちの方を振り向くテレサ。

そこではルシアとコルテックスが、怪しい笑みを自分の方へと向けていて……。

テレサは言い知れぬ恐怖を感じていたとか、いなかったとか。



何故じゃろう……。

日に日に文量が増えていくような気がするのじゃ。

お陰で、修正にかかる時間が、比例して増えておるのじゃ……。

もう、ダメかも知れぬ……。

まぁ、いいがの。


で、のう。

そのせいで、あとがきをゆっくり書いておる時間が無くなってしまったのじゃ。

じゃから手短に書くのじゃ?


……昨晩、イブ嬢の立ち絵を追加したのじゃ……。


7章の頭あたりにの?(361話)

……え?ルシア嬢とカタリナ殿の足が、前より細くなっておる?

き、気のせいじゃろう……。



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― 新着の感想 ―
[一言] 830/1781 >……昨晩、イブ嬢の立ち絵を追加したのじゃ……。 7章の頭あたりにの?(361話) ↑話数がズレて408話くらいになってました。(適当)
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