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3-09 新たな目標

この話が抜けてました・・・もうダメかもしれない・・・。

これまで、ワルツ達の食生活は酒場の店主によって支えられてきた。

それは、ワルツが料理できないわけでも、ルシアが料理できないわけでも、カタリナが料理できないわけでもなく、単に、酒場の店主がご好意で提供してくれていたからだ。

だが、今のワルツ達には、自分たちの工房《家》もあり、財産もあり、食生活上の自給自足も不可能ではない。


「というわけで、テンポが料理作って」


「無理」


即答だった。


「お姉さまが、作ればよろしいかと。というか、生後1日も経たない内から料理ができるわけないじゃないですか。それとも、何ですか?お姉さまは、生まれた時から料理できたと?」


「うぐっ・・・!」


確かに、ワルツだって最初から料理が出来たわけではない。

姉に教わりながら、数年も掛かってまともな味になったレベルで、今現在でも、美味しい料理、というわけでなく、可もなく不可もない普通の家庭(ガーディアン)料理だ。

メシマズではないが、メシウマではないという自覚はあった。


なぜこのような話をしているのかというと、明日から1週間、酒場の店主がいないからだ。

従兄弟の結婚式に出席するため、隣村まで出向くのだとか。

では酒場の店主不在の間、誰がワルツ達の食事は誰が作るのか。


そして冒頭の通り、ワルツはパーティーの新人のテンポが料理を作るべきだと提案したが、則、断られたわけだ。


彼女達が話しているのは、工房1階にあるリビングだ。

先ほどまで、酒場で朝食を摂ったワルツ達だったが、遂にこの時が来たか、と半ば戦々恐々としていた。

胃が痛む思いをしていたのはワルツだけではない。

まだ10歳のルシア、そして僧侶一筋のカタリナも、同様に料理に自信がなかったため、今までこの話題を避けていたのだ


遂にこの問題(料理)にもメスが入ろうとしていた。

食後に酒場から工房(10m)へ向かう足取りが、皆、おぼつかなかったのは気のせいではないだろう。




「誰が作るにしても、材料がありません」


カタリナは全面否定側に回るらしい。

確かに、材料は無い。

あるとすれば、魔物肉くらいだが、他に主食のパンや米、そして野菜が手元にない。


「山菜で良ければ、わたしが探してくるよ?」


どうやら、ルシアは逃げに回るようだ。

山菜を収穫してきたという理由で、料理への参加を避ける腹積もりだろうか。


「いや、野菜は酒場の店主に貰えばいいかなと・・・」


(あっ、何を行ってしまったんだ私!これでは自炊を避けられないじゃない!)


だが、ルシアの逃げ道を断つことには成功した。

少し泣きそうな顔をするルシア。


(だけど、この時ばかりは容赦出来ないわっ!)


心を鬼にして、ルシアが可哀想だと思う気持ちを駆逐する。

そんなやり取りを繰り返していると、


「では、皆さんで作ればいいのではないでしょうか?」


テンポから神の声が聞こえた。

その声にハッとする3人。


そもそも、どうしてこの話題で争っていたのかというと、「誰が」料理を作るかという話だったからだ。

例え、ローテーションを組んで回したとしても、3日に一度は自分が担当する日が必ず来る。

その中で、もしも自分の料理がトンデモない味だったら、その日は一日、大惨事だ。


だが、皆で作れば、誰が何を作ったのかを最悪有耶無耶にできる。

それに、自分の料理だけじゃなく他者の料理も並ぶので、失敗した時の被害は3分の1で済むという利点もあるのだ。

その上、お互いの眼が光っていれば、失敗も少なくなるだろう。


どうやら、ワルツ達の間で合意が出来上がったようだ。

ついでにテンポを巻き込んでおくワルツ。


「テンポも一緒に料理の勉強をするのよ?」


「そうですね、仕方がありません」


こうして、ワルツ一行の新しい挑戦(絶望)が始まったのだ。




料理の話を終えたところで、これからの自分たちの方針を話し合う。


「これからどうする?」


「そうですね、当初の予定だったテンポの製作が終わったので、次のステップに進みたいところです」


最初のステップが生命創成とは、随分と高いステップだ。

それを乗り越えられたのも、魔法と科学の力があってこそだろう。


「直近の予定では、テンポの服を町に買いに行かなくちゃならないんだけど」


「では、長期の目標を決めて、ついでに町に買い出しにいく、ということでいかがでしょうか?」


「えぇ、それがいいでしょうね。でも長期の目標、か・・・。ルシアは何かしたいことはないの?」


ルシアに話題を振ってみる。


「わたしは・・・お姉ちゃん達と、旅行してみたい」


「旅行か・・・」


ワルツは旅行もありね、と考えていた。

コミュ障ではあるが、見知った仲間たちと旅をすることは嫌いではないのだ。


「ちなみに、テンポは?」


生後1日のテンポに水を向ける。


「そうですね、魔法を使えるように練習したいです」


その発言に驚くワルツ。

アンドロイドが魔法を使えるのだろうか、と。

だが、テンポの50%はカタリナを原料(?)とした生体だ。

ということは、可能性としてはゼロではない。


(なるほど。私とは違って、魔法が使える可能性はあるのね・・・。魔法が使えるアンドロイドとか・・・いいわね)


「よし、テンポの『魔法が使えるようになる計画』に協力するわよ」


「なら、皆で旅をしながら魔法の練習をするというのはいかがでしょう?」


旅をしながら・・・か、と思うワルツ。

旅をする、ということは、この工房から離れるということだ。

つまり、ワルツ自身の計画がずれ込む可能性があるのだ。

単に引きこもっていることが好きだ、という訳ではない。


ワルツ自身の最終目的は、元の世界に戻ること。

そのためには、半導体製造設備が必要だったが、何とか条件はクリアした。

まだ、修復部品の完成には至っていないが、これは時間の問題だろう。


その他にもフレームを強化するという課題もあるが、そのためには・・・「重さ」が必要になる。

これには素材の集取が必要なのだが・・・。

ともかく、ワルツの目的達成には、まだ時間だけでなく素材が必要になるということだ。

尤も、寿命が存在しないワルツにとっては、時間も半無限にあるのだが。


(工房から離れている間は作業が進まないけど、世界を周って観光しながら、素材を回収するというのもいいかもしれないわね・・・)


それに、旅に出たとしても、工房に帰ってこれなくなるわけではない。

ワルツは空を高速で飛行できるし、ルシアの魔法で(自身の移動は出来ないが)転移することも可能だ。


旅の難易度を考えても、実はそれほど高くはないのではないだろうか。


いろいろ考えてみたが、旅に出るのも悪くはない、というわけで、ワルツも同意する。


「旅・・・ね。確かに、この世界を見て回りたいわね」


以前、火山への採掘で比較的遠くまで飛行したことはあった。

だが、飛行では空からの景色を楽しめても、地上の様子までは知ることが出来ない。

そういう意味では、徒歩でサウスフォートレスまで行った買い物は、旅と言えるだろう。


だが、今話し合っている旅は「魔法の練習」を一つの目的としている。

買い物を楽しむための気楽な旅出はない。

単に村や町を巡るのではなく、ダンジョンや強い魔物を求める旅になるのだ。


(全く、女子がする旅ではないわね・・・)


村や町にあまり関わらないなら、コミュ障のワルツにとっては幸いだが。


「どこか行きたい場所とか、宛はあるの?」


「これからの季節は暑くなっていくので、北の方に向かいたいですね」


今の季節は5月を過ぎた頃だろう。


(夏が来れば、日本みたいにジメジメとした感じの暑さになるのかしら・・・、それを考えるなら、暑さを避けて旅をするというのも悪くないわね・・・)


北といえば、この国の王都があるらしい。

サイズ的には、サウスフォートレスとは比べ物にならないほど巨大なのだとか。

ついでに寄ってみるというのも悪く無さそうね、と思うワルツ。

もちろん、すぐに通過する程度に、だ。


「私も北行きには賛成ね。でも、最終的な目的は有ったほうがいいんじゃない?目的がないと放浪になりそうだし」


「では、魔王を倒しますか?」


「いや、テンポ。勇者の仕事を奪っちゃダメよ?彼らも税金で働いてるんだし・・・」


「そうです。仕事の横取りはいけません」


ワルツはニヤリ、カタリナはニコリと笑みを浮かべるのだった。




いずれにしても、テンポの服や武具を揃えないことには、話が進まない。

最寄りの町のサウスフォートレスは南方にあるので、旅に出たい方向とは逆の方向だ。

だが、定期的に鉄インゴットを収める約束をしている錬金術ギルドのジーンには、一言断っておいた方がいいだろう。

それに、酒場の店主《村長》が不在の内に、旅に出るというのはよくない。


なので、酒場の店主が帰ってくるまでの1週間の間に、サウスフォートレスへ買い物に出かけてこよう、という話で落ち着いた。


そして、その間に旅の最終的な目的を決めるということになった。


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