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8.5-11 流れ11

カランコロン……


ワルツとユリアが冒険者ギルドへと入ると、ギルド諸君たちの視線が、彼女たちに集中した。

その表情は、また面倒な奴らがやってきた、と無言で語っていたようである。


そんな中。

昨日、ワルツたちに対応した男性が、少しだけ嫌そうな表情を見せながら、2人の元へと近づいてくる。


「おはよう、お二人さん。すまねぇが……薬草の件は、まだこの有様だ。まだ集計は終わってねぇから、昨日の話通り、もう一日待ってくれねぇか?」


「おはようございます。大変そうですね……」


「おはよう……って感じじゃないですね。もしかして、昨日から家に帰ってないとか?」


「あぁ……なんせ、今は閑散期で、ギルドの職員も減ってるからな……。まぁ、今日、臨時に職員たちを呼び寄せたり、他のギルドに声を掛けて応援を呼んだりするから、明日の朝までにはどうにか終わってるはずだ」


「もしこれで、期限が今日の昼までだったら、もっと凄いことになってたんですね……」


「だろうな……」


そう言って、(にが)い笑みを浮かべるギルド職員の男性。


そんな彼に対し、ワルツは早速、切り出した。

それも、その言葉が、彼らにとって、さらなる重荷になることを分かっていながら、である。


「こんな大変な時に、申し訳ないんですけど……狩ってきた魔物の買い取りをしてもらってもいいですか?」


その瞬間、男性は、


「え゛……」


と、表現に困る声を出して、固まってしまった。

想像している中で、最悪の出来事が起こった、そんな反応である。


それから男性はすぐに回復したが、それでも、引きつり気味の表情までは隠しきれなかったらしい。

そして彼は、口元をピクピクとさせながら、ワルツたちに対し問いかけた。


「そ、そうか。ちなみだが、それって……相当な量があったりするのか?」


それに対しワルツは、顎に指を当てながら、思い出すように返答する。


「んー、普段よりは少ないくらいだと思います」


「その普段、ってのが、かなり怖いが……まぁ、とりあえず見てから考えるか。俺達としちゃぁ、食料はいくらあっても困らねぇしな」


「そう言ってもらって助かります。ここに出せばいいですか?」


「いや、流石に薬草と違って、魔物は血が滴るから、ここじゃないほうがいいだろう。俺に付いてきてくれ」


そう言って、ギルドの入り口から外に出る男性。


それからワルツたちは、その言葉に従い、彼の後ろに付いていった。



「ここだ」


そして3人がやって来たのは、冒険者ギルドの横にあった建物。

冒険者ギルド専用の倉庫である。


倉庫の床には石畳が敷かれ、壁際には、山のように木箱が積まれていた。

恐らくはその中に、冒険者たちから買い取った素材などが仕舞われていて、必要に応じて市場に流されているのだろう。


その他、その場の地面には何やら染みのようなものがあって、建物内部に凍っていない井戸があるところを見ると……。

どうやらここでは、魔物の解体も行われているようである。

とは言っても建物の中には、ワルツたち以外に誰もいなかったので、今は単なる倉庫にしか見えなかったが。


「さて。それじゃ、ここの床に出してもらえるか?」


「はい、分かりました。ユリア?」


「じゃぁ、いきますね?」


そう言って、ギルド職員の男性に誘導された場所へと手を翳すユリア。

すると、次の瞬間、


ドサッ!


と獲物の一部が姿を現した。


最初に出てきたのは、ベアトリクスたちが獲ってきた、大量の魚の()()である。

合計でおよそ300キログラム、と言ったところだろうか。


「これまた随分な量の魚で……」


その様子を見て、眼を細めるギルド職員の男性。

彼はその魚を『随分な量』と表現したわけだが、その表情の裏では、『この程度の量で済んでよかった』などと安堵しているに違いない。


それが分かってか分からずか、


「まだありますよ?」にっこり


男性に対して笑顔を向けながら、魚を追加で少しずつ、アイテムボックスから取り出していくユリア。

アイテムボックスの中から魚を一度に出すことも出来るはずだが、彼女がそうしなかったのは、昨日、麻袋入りの薬草をいっぺんに出して、冒険者ギルドの床を破壊してしまったことが原因かもしれない。


そして……。

絶望的な表情を浮かべていた男性の前には、結局、2トンもの量の魚が出てきたようだ。

その様子を見て、男性が声を上げる。


「いや、取り過ぎだろ……」


「たくさんいたんですよ……魚」


「そりゃそうだろうけどよ……」


「魚類はこれで終わりです。次は魔物の方を行きますね」


「まだあるのかよ……」


「それが終わったら、今度は山菜ですよ?」


「…………」


ワルツとユリアの数量の基準が、自分の基準と比べて3桁ほど異なることを察して、閉口するギルド職員の男性。


そして今度は、コルテックスたちが狩ってきた魔物を出す番になったわけだが……。

ギルド職員の男性の様子がおかしかったためか、ワルツは、獲物を出そうとしているユリアを制止させて、あることを確かめることにしたようである。


「ところで、一つ確認なんですけど……これ、ここのギルドで、全部買い取れます?」


そんなワルツの問いかけに、


「……このまま大量に出てくるようなら難しいかもしれん。だが……」


と口にして、その言葉通りに、難しそうな表情を浮かべる男性。

買い取りの資金がギルド内にあることを前提に考えても、明日までに薬草の集計を終わらせる必要があり、その上、魔物にしても魚にしても、買い取るためには解体が必要だったので……。

明日までに、そのすべてを終わらせるというのは、人手の少ないアルバの町の冒険者ギルドにとって、中々に困難な話だったようである。


ただ、男性としては、可能な限り、魚や魔物の()を買い取りたかったようだ。

薬草が欲しい理由については言うまでもないが、町が食糧難に陥っている現状では、可能な限り、食料も確保したかったのである。

この機会を逃したなら、次、いつ、食料を得ることが出来るのか、予想すら付かなかったのだから……。


「どうにかならんもんか……」


と、誰に向けるでもなく、ため息混じりに小さく呟く男性。

彼は頭の中で、どうにか食料を買い取る方法がないか、考えを巡らせているようだ。


そんな彼の様子に思ったことがあったのか、ワルツは、こう質問した。


「(一部だけの買い取りでも良いのに……まぁ、別にいいけど)えっとー……逆に、どうすれば買い取って貰えますか?」


「そうだな……。一番時間が掛かるのは解体だ。皮や内蔵、肉に骨。あるいは角や爪に牙。場合によっては魔石なんかも取れる事があるんだが、それらを価値のある状態として剥ぎ取るためには、ある程度、技術が必要になるんだ。ところが、今それが出来る職員が、うちのギルドに殆どいなくてな……」


「(ふーん。魔石ねぇ……。紅玉やオリハルコンみたいなものかしら?)」


「そもそも、この時期は、解体担当が居ねぇんだよ……。元々、そんな大量に持ち込まれることはねぇし、冒険者なら皆、自分で捌いちまうからな。それがどうにかなりゃ、すぐに買い取ることも出来なくはないが……」


「なるほど。じゃぁ、私たちの方で解体してしまえば良い、ってわけですね?」


「え?あ、あぁ……。出来ることならやってもらいたいが……出来るのか?ここに、素の状態で持ってくるってことは、解体できないんだろ?もしも、下手な解体をしたら、素材が売りもんにならなくなるぞ?」


「んー……ちょっと相談は必要かもしれないですけど、アテがあるのでどうにかなると思います」


そう言ってから、自分の考えを肯定するように、頷くワルツ。

その際、隣にいたユリアが、苦笑を浮かべていたのは、これからワルツが誰に解体を頼むのか、なんとなく予想が付いていたからか……。



……おっと、危ない。

間違えて、違う物語に、あっぷろーどしてしまうところだったのじゃ。


そんなことはさておいて。

今、妾は移動中なのじゃ。

この機会を逃すと、今日のあっぷろーどが12時を越えてしまう可能性が極めて高いゆえ、取り急ぎ、あっぷろーどだけさせてもらうのじゃ?

あとがきは……まぁ、明日、いいだけ書こうと思うのじゃ。

いつも通り、駄文じゃがの?

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