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8.5-07 流れ7

「またまた〜。『シュバルツシルト』が女性向きの名前じゃないからって、無理やり『(シュバルツ)』を『(ヴァイス)』に変えただけではないのですか〜?」


「よく分かってんじゃない?」


呆れたようにジト目を浮かべながら、命名の理由を追求してくるコルテックスに対し、素直に頷くパーティーリーダーのワルツ。

どうやら彼女は、適当につけたその名前に納得しているようで、突っ込まれても気にならないようである。


それからワルツは、コルテックスに向かて、シッシッ、とジェスチャーを送ってから。

彼女は受付嬢に向き直って、話の続きを切り出した。


「それじゃ、お姉さん。さっそく薬草の精算を行いたいんですけど……」


「分かりました。ではここで構いませんので、薬草をご提示下さい」


と、営業スマイルを浮かべながら、そう口にする受付嬢。

彼女が担当していた窓口は、本来、依頼や事務的な登録を行うための受付のはずで、依頼達成の確認や、素材の買い取りを担当する窓口では無いはずだった。

だがこの時期は、冒険者があまりにも少なすぎて、他の受付に担当者がいなかったためか。

彼女1人だけで、すべてを担当していたようである。


そんな受付嬢の発言を聞いたワルツは、どういうわけか難しそうな表情を浮かべると、それからこんなことを言い始めた。


「ここで?多分、机、壊れるわよ?」


「えっ?」


「実はメンバーの中にアイテムボックス持ちがいて、薬草を大量に持ち運べるのよ」


と言いながら、斜め後ろにいたユリアの手に眼を向けるワルツ。

そこには、1つ数億ゴールドにも及ぶ高価な魔道具『アイテムボックス』のリングが嵌められていて……。

その中に、リーパの街周辺で集めた薬草が大量に入っていた。

なお、その指輪は、ユリアの私物ではなく、ミッドエデンの所有物である。


「そ、そうですか。では、担当の係りの者を呼びますので、少々お待ちください」


そう口にして、受付の裏へと消える受付嬢。

表には彼女1人しかいなかったが、流石に裏には何人かいたようである。


それから間もなくして……


「おう、誰だ?大量に薬草を納品してくれるって奴ぁ?」


カウンターの奥の方から、受付嬢と共に、体格のいい男性が現れた。

どうやら彼が、買い取りの担当者らしい。


「……ユリア?後はお願いできる?」


「えっ?いや、別に良いですけど……」


「どうも、この手のむさ苦しいおっさんは苦手なのよね……」


「おい、誰がむさ苦しいおっさんだ!?」


目の前にいたために、ワルツたちの会話が聞こえないわけもなく。

2人の話を聞いて、憤る担当の男性。


結果、自身の失態(?)によって眼を付けられてしまったワルツは、仕方なく逃げるのを諦めて、そのまま対応を続けるしたようだ。


「空耳ですよ、空耳。それで、どこで広げればいいですか?薬草」


そんな開き直った様子のワルツに対し、男性は疲れたように溜息を吐くと、


「じゃあ、今からここに敷物を広げるから、その上に置いてくれ」


空間拡張のエンチャントがかかっていると思しきバッグから、丸められた大きな絨毯のようなものを取り出して、それを受付前の床に置いた。


ワルツはそれを見て、小さく呟く。


「大丈夫かな……」ぼそっ


「は?」


「いいえ、何でもないです。じゃぁユリア?もう、ガッ、っとやっちゃって?」


「え?良いんですか?」


「こういうのって、勢いが大事だと思うのよ」


「あ、はい。分かりました。じゃぁ、やりますね?」


ユリアには、これからどうなるのか、大体の予想が付いていたようだが……。

彼女は刈り取った大量の薬草を、ワルツの言葉通りに、その場へと遠慮なく展開した。


ズドォォォォン!!

メキメキッ……!!


その瞬間、男性が敷いたシートどころか、ギルドの床すらも(ひしゃ)げさせてしまうほどに、大量の麻袋が姿を現す。

ギルドの高い天井付近まで積み上がったソレは、どれも大量に薬草が詰まった袋だ。


「「「…………」」」


「お、思ってたより刈ってたのね……」


自身はただ草刈りをしていただけなので、全体の量まで把握していなかった様子のワルツ。


その際、彼女の後ろにいた仲間たちも、皆一様に、驚いたような表情を浮かべていたようだが……。

唯一、ローズマリーだけは、


「いい仕事をしましたです!」キリッ


と、腰に手を当てて、胸を張っていたようである。



「で、どうなの?どのくらいで集計終わりそう?」


「すまん……検討つかん……」


それからギルド職員総出で麻布の中身を改めるものの、たった1袋を数えることすら儘ならず……。

皆、目の前にある麻袋の山を見上げて、絶望的な表情を浮かべていたようである。


「急いでるから、明日にはこの町を出発したいんだけど……」


「そりゃ無理だぜ……」


「でしょうねー」


と、手を動かしつつも返答したギルド職員の男性の言葉に、納得げな反応を返すワルツ。


そんな彼女の前では、男性の他にも、裏で働いていただろうギルド職員たちが表に出てきて、薬草を数えていた。

薬草は、なにより鮮度が大切で、可能な限り早く処理しなければ、使い物にならなくなる可能性があったのである。


幸いだったのは、今が冬であることと、アイテムボックスを使って薬草をここまで運んできたことだろうか。

アイテムボックスの中は、流れる時間の早さが、実時間に比べて随分と遅いらしく、そこにあった薬草は、すべてが刈り取った当時のまま、新鮮そのものだったのである。


しかしここで、薬草を数える手を休めてしまうと、大量の薬草がそのまま廃棄物になる可能性があった。

しかも、今、この町を含めてボレアス全土では、薬草のニーズがこれまでに無いほどに高まっているのである。

ここで、捌ききれずに廃棄するというのは、冒険者ギルドとして名折れだったのだ。

主に商売的な理由で。


「んー、やっぱ、急いでるから、別のギルドに納品しようかしら?」


「いや、ちょっ……ちょっとまってくれ!あ、明後日(あさって)……いや、明日の夕刻まででいい!それまでには数え切るから、少しだけ時間が欲しい!」


「明日までならいいけど……数を誤魔化したりしないわよね?」


「おまっ……ここは天下の冒険者ギルドだぞ?そんな、信用を失うようなことは絶対にしないから安心しろ!」


「そう……なら、待っても明日の夕方までよ?その後は、ビクセンに行かなきゃなんないんだから……」


「ビクセ……お前ら、あの町に行くつもりか?」


ビクセンについての事情を知っているのか、ワルツの口から『ビクセン』という単語が出た瞬間に、様子が変わる筋肉質の男性。

そんな彼の反応を見て、ワルツは()()()()を見せながら、こんなことを言い始めた。


「もしかして、ビクセンのこと、何か知ってる?教えてくれたら……もう一日くらいなら待ってもいいけど?」


その言葉に、


「いや、悪いことは言わん。今、ビクセンに行くのは止めておいたほうが良い」


何一つ具体的な内容を言うこと無く、そう返答する男性。


「何?どういうこと?」


「結論から言うと……俺達もよく分からん」


「は?なら何で、行くなって話になるの?」


「ビクセンに行くと言って出かけた商人や冒険者たちが、誰一人として戻ってこないんだ」


「そりゃ、この町から離れてるからじゃないの?雪もあるし……。まだ、移動中とかさ?」


「なら良いんだが……どうも嫌な予感がしてならねぇ。向こうのギルドからも定期連絡の書類が届かねぇし……」


「ふーん。転移魔法が使える人に頼めば、ちょっと行って、様子を確認してくるくらい、できるんじゃないの?」


「いれば困ってねぇよ……」


「あ、そういうことね……」


男性の話を聞いて、納得げな表情を浮かべるワルツ。


「まぁ、身のある話じゃなかったけど、こっちにも準備があるから、2日間くらいなら待つわ?集計結果が出たら、連絡ちょうだい?執政官の館に行けば、誰か取り次いでくれるはずだから(多分、ヌルがね)」


「あぁ、わかっt……え?」


ワルツに対応していた男性は、薬草を数える手を止めて、驚いたような表情を浮かべながら、後ろを振り向くのだが……。

そこにはすでに、彼女たちの姿は無く。

ただ静かに閉じるギルドの扉だけが、彼の眼に映っていたようだ。

適当過ぎるワルツを書くのが辛いのじゃ……。

……主に、腹筋的な意味で。

妾はもう……ダメかも知れぬ……。


まぁ、そんないつも通りのことは、不燃ごみの袋の中にでも置いておいて。

世間一般的には、今週をGW――ごーるでんうぃーく、と言うらしいのう?


実はのう。

妾たちも、このGWを利用して、ちょいと旅に出てこようと思うのじゃ。

もちろん、いつも通り、らっぷとっぷを持ち歩いての?


じゃから、あっぷろーど出来ぬことは無いと思うのじゃが、もしかすると今週は、更新時刻が12時を回ってしまうかも知れぬのじゃ。

まぁ、確率としては、それほど大きくはないのじゃがの?


てなわけで。

妾はこれから冷蔵庫の中身を、アメの口の中に放り込むというタスクをこなさねばならぬのじゃ!

食料をダメにするというのは、許されぬ愚行じゃからのう……。

……許すのじゃ!アメよ!

お主はこれからフォアグラ(ry

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