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8.5-04 流れ4

シモネタ注意……なのじゃ……。

ある日のアルバの町。

その昼下がりに、町の執政官であるエクレリア出身の青年は、今日も高級そうな椅子にふんぞり返りながら、自分を取り巻く部下たちに対して、こんな指示を下していた。


「レジスタンス?どうせ、俺たちのやり方が気に食わないからって駄々こねてるだけの連中だろ?他の連中は、せめてもの情けで、町の外に追放してやってんのに、わざわざ町の中で暴動を起こすとか、頭、湧いてんじゃねの?とっ捕まえて、処刑しちまえよ」


「ハッ……。それと、街のギルドの者たちに対する補助金の件なのですが……」


「ギルド?あの無愛想な奴らか?この際、レジスタンスと一緒に皆殺にしちまいたいところだが、奴らには馬車馬のように働いてもらわなけりゃならんからな……。特に冒険者ギルドには食料を確保してもらわなけりゃなんねぇし……しゃぁねぇ。申請額から3割程度引いて、交付してやれ」


「ハハッ!」


短くそう口にして、部屋の外へと出ていく部下。


それから執政官はソファーから立ち上がると、あくびをしながら、部屋の中を行ったり来たり……。

たまに窓から外を眺めてから、再びソファーに座ると……。

今度は、魔法の()()()()()を使い、手元に何やらモニターを作って、それを指でつつき始めた。


ただそれも、30秒ほどで飽きてしまったようだが。


「あー!暇だーっ!」


そして背もたれに頭を乗せて、悪態をつき始める執政官の青年。


「この町に来て政治のトップにいたら、奴隷たちとウハウハになれるって聞いたのに、金はねぇし、食料もねぇし、そもそも奴隷がいやしねぇし……まったく、詐欺も良いところだぜ……」


どうやら彼の本心は、ここには来たくなかった、ということらしい。

まぁ、ボレアスでも決して中央には近くない、辺境と言っても過言ではない場所に位置しているこの町のことを考えるなら、来たくなくても無理はないだろう。


「はぁ……トイレに行ってから寝よ……」


そしてトイレから部屋に戻ってきた後で、まだ昼間だというのに、毛布を被って、ソファーの上で寝始める執政官。

こうして彼の一日は、たったの半日で終わるのであった。



それから3時間ほどが経って、執政官は目を覚ました。

それはいつも十分な睡眠を取っているにも関わらず、長い昼寝をしたために、否が応でも目が覚めてしまったから、という理由だけではなかったようである。


「何だ?騒々しいな……」


そう。

窓の外から聞こえてくる街人たちの声が、いつもよりも騒がしかったのである。


それが気になって執政官は外を眺めるのだが、


「ん?変わったことは無さそうだが……」


町の中央に建つ城の窓からは、町の外から魔物が攻めくる姿が見えたり、どこかで戦闘が起っていたり、あるいは暴動が起っていたり、といったような異常事態は見えなかったようである。


結果、彼は、外で何が起ったのか、その事情を聞こうと、隣りにある秘書室へ向かおうとした。

だが、その際、ちらりと別の方角へと視線を向けた執政官は、とある異常に気付いてしまう。


「何だあれ……」


それを見て、思わず二度見する執政官。

なんとそこに――巨大な人間が座っていたのである。

それも、座り心地の良さそうなソファーに。

恐らく立てば、身長100mほどにも達するのではないだろうか。

町の人々が幸いでいたのは、その姿を見たのが原因だったようだ。


だが、恐らくは、街の誰よりも、執政官本人が一番驚いていたはずである。

なぜなら、そこにいた人物は、執政官と瓜二つ――と言うよりも、本人そのものだったのだから。


彼が、その巨大な自分の姿に気づいた時だった。

今まで微動だにしていなかった巨大な執政官が、不意に動き始めたのである。

とは言っても、ソファーから立つわけではなく、ただその場で喋り始めただけだが。


『レジスタンス?どうせ、俺たちのやり方が気に食わないからって駄々こねてるだけの連中だろ?他の連中は、せめてもの情けで、町の外に追放してやってんのに、わざわざ町の中で暴動を起こすとか、頭、湧いてんじゃねの?とっ捕まえて、処刑しちまえよ』


『ギルド?あの無愛想な奴らか?この際、レジスタンスと一緒に皆殺にしちまいたいところだが、奴らには馬車馬のように働いてもらわなけりゃならんからな……。特に冒険者ギルドには食料を確保してもらわなけりゃなんねぇし……しゃぁねぇ。3割程度天引きして、再交付してやれ』


その会話は、昼過ぎに執政官と、彼の部下が交わした内容だった。

それをまるで再現するかのように、巨大な執政官が喋ったのである。


いや、『再現』という言葉より、もっと適切な言葉があるだろう。


「だ、誰だよ!?録画したやつ!」


本来この世界にはないだろう、その言葉を口にして、顔を真赤にする執政官。

だが、彼には、どうやって『録画』されて、そして『再生』されたのかまでは分からなかったようだ。

もちろん、そこにいる巨大な自分が、中身のない虚ろなホログラムであることも……。


そんな時、急に場面が変化する。

その場からソファーが消えて、巨大な執政官が仁王立ちを始めたのだ。


「ま、ま、ま、まてっ!まさかっ!?」


何やら嫌な予感があったのか、青ざめる小さな方の執政官。

すると大きな方の彼は、股間のチャックに手を当てて、それを下ろすのだが……


「なんでブラックホール……」


彼の股間は幸いなことに(?)、渦を巻く禍々しい闇に覆われていて、光学的に露出することは無かったようだ。


だが、その次に起きることまでは、隠してくれなかったようである。


ドゴォォォォ!!


まるで大きな滝のような音を立てながら、闇の中から落下してくる、言葉では表現しがたい大量の液体。

それが容赦なく街の上へと降り注いだのである。


「…………」


その様子を見て、唖然とする執政官。

しかし、その液体は実体を持っていなかったようで、街に降り注いでも、建物が崩れたり、周囲が濡れたり、あるいは臭いが立ち込めたり、といったことは無かったようだ。


そして最後に。

巨大な執政官は、こう口にした。


『ふっふっふ、滅びろ虫けらども』


「んな?!」


それを見聞きして、執政官の表情は、いよいよ顔面蒼白になっていった。

その言葉は、この町の人々に向けられた言葉ではなかったが、巨大な執政官の姿を見る限りは、誰もそうとは受け取らないだろう。


「て、敵襲か?!」


そこまで来て、彼はようやく事態を把握するのだが、時既に遅し。

執務用の机の上に置いてあった武器を取る前に、


ドゴォォォォン!!


「執政官!貴様ァァァァ!!」

「ぶっ殺す!!」

「もう我慢ならねぇ!」


執政官は激怒した兵士たちに包囲されてしまい、逃げ場を失ってしまった。


「ま、待て!あれは敵sy」


彼が事情を説明しようとした、そんな時。

兵士たちの後ろから、甲冑に身を包んだ背の高い女性が現れた。


「あぁ、敵襲だとも。この魔王シリウス様が、貴様からこの町を取り返しに来たのだ。まぁ、何だ……色々あったようだが……潔く逝くが良い!」


彼女は自分の名を魔王と名乗ると、その直後、


ザンッ!!


手に持った半透明な大剣で、執政官の首をそのまま切り飛ばしてしまう。


そして魔王シリウス――もといヌルは、光の粒子になりつつあった執政官の首を掴んで、高らかに掲げると、その場の者たちに対して、こう宣言した。


「我らは自由だ!」


「「「うおぉぉぉぉ!!」」」


ヌルの勝ち(どき)と共に、声を上げる兵士たち。


執政官がいなくなったところで、この町を取り巻く問題は何一つ解決したわけではなかったが……。

少なくともヌルは、この町の人々の心を勝ち取ることには成功したようだ。

いやの?

できるだけ効率よく、執政官の権威を失墜させる方法は無いかと考えた結果が、これなのじゃ。

戦いの場においては、個人のプライバシーなど、存在しないからのう。

まぁ、どうにか、シモネタっぽくならぬように書いたつもりじゃが……やっぱり、シモネタはシモネタでしかないのう……。

もう二度と書かないと思うのじゃ。

……多分の。


で、のう。

今日は土曜日。

そして、時刻はいつもの時間。

そこには車の鍵を持った主殿がおって、妾のリュックの中には、着替えとタオルが詰まっておる……。


……じゃぁ、ちょっと行って来るのじゃ?

温泉に、のう!

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