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8.5-01 流れ1

一部ワルツの台詞を修正したのじゃ。

それからエネルギアと剣士のことをその場に置いて、先へと進んだワルツたち。

今、彼女たちを取り巻く景色は、一面の銀世界(森)である。


「思うんだけどさ、ここで山、壊しちゃったから、オリージャとかでも雪降るんじゃない?」


後ろを振り返った先で、木々の隙間に見える山脈の一部が、不自然に削られている様子を見ながら、誰に宛てるでもなく、そう口にするワルツ。

すると、外の白い景色に眼を奪われていたベアトリクスが、ギュン、と音が聞こえそうな勢いで首を回し、キラキラとした視線を見せながら、ワルツに対して問いかけた。


「それ本当ですの?!」


「もしかしたら、だけどね?雪を降らせる雲って、あまり高くない場所を漂ってるんだけど、それが今までは山に当たってぶつかって、そこでせき止められちゃってたのよ。だから、山脈の南にあるオリージャには雪が降らなかった、ってわけ。だけど、あんな感じで、山におっきな切れ目ができちゃったわけじゃない?」


「つまり、そこを流れて、オリージャにも雪の雲がやってくる……ということですわね?」


「えぇ、そういうこと。でも、ここみたいに、沢山雪が降る……なんてことにはならないでしょうね。途中には、熱い『大河』もあるわけだし」


「そうでしたわね……」


大河の上空を通過した際に、雪が溶けてしまうかもしれないことを想像したのか、尖った犬耳をしょんぼりと倒してしまうベアトリクス。

ワルツはその様子を見て、苦笑を浮かべながら問いかけた。


「貴女、そんなに雪が好きなの?」


「え?えっと……はい。綺麗ですから……」


「……そう」


ワルツはその際、普段降らない雪ほど、国にとっては迷惑極まりない気象現象は無い、と口にしようとしたようである。

だが、彼女の視線の先では、ルシア、テレサ、イブ、それにローズマリーが馬車の幌の隙間から外を眺めており、皆一様に尻尾をパタンパタンと床に打ち付けていたので、下手な発言ができなかったようだ。


それからベアトリクスが、そんな少女たちの列に戻ったところで……。

ワルツは、馬車の隅の方で、げっそりとした表情を浮かべながら、体育座りをしていたヌルに対し、その事情を問いかけた。


「どうしたの?ヌル。そんなこの世の終わりが来たような暗い顔して……」


「あの山……私の生まれ故郷だったので……ちょっと……少し……」


「えっ……なんか……ごめん……」


そして馬車の中に流れる重苦しい沈黙。

どうやらヌルが、ニクスヘーレの洞窟から魔物を駆逐して通路を確保したのは、彼女自身がその山と深く関係があったからだったようだ。

なお、冬の時期は山に誰も住んでおらず、雪女の集落が山と一緒に吹き飛んだ、などということはない。


「え、えっと……も、問題はホムンクルスよね」


と、重苦しい雰囲気を紛らわすかのように話題を変えたワルツ。

すると今度はユリアと狩人の2人が、それぞれ反応を口にした。


「そうですね。どうしてこんなところに……」


「結局、どんな奴だったんだろうな?」


そんな狩人の疑問に対し、エネルギアと剣士から報告を聞いていたワルツは、その内容を答えようとするのだが……。

しかし、彼女は、またもやそこで、口を閉ざしてしまった。

重い話題から方向修正しようとした彼女だったが、結局、話題を変更しても、話の重さは変わらなかったようである。


「(まさか、狐の獣人とは言えないわよね……)」チラッ


そんなことを考えつつ、外を眺めながら3本の尻尾をフサフサと揺らしていたテレサの方へと、その視線を向けるワルツ。


すると、ワルツが何を考えているのか理解できたのか、ユリアもテレサのことを一瞥してから、短くこう口にした。


「容姿については後で詳しく教えてください」


「えぇ、もちろんよ?っていうか私が直接見たわけじゃないから、剣士やエネルギアたちも交えて整理しましょ?でも……いやーな感じよね……。偶然見つけた謎プラントにいたのが、何かと因縁のあるホムンクルスとか……。なんで今になって出てきたのかしら?」


「単なる偶然が重なった可能性もゼロではないと思いますが……やはり、今だから、ではないですか?」


「どういうこと?」


ユリアが何を言わんとしているのか変わらなかったのか、首を傾げるワルツ。

それは狩人も同じだったようで、彼女もユリアの言葉に聞き入っていたようだ。


「今まで準備が整っていなかった……と考えれば、どうでしょうか?つまり、ホムンクルスといえど、作られてからすぐに使い物になるわけではない、というわけです。そのあたり、どうでしょうか?ヌル様」


と、妹のユキBたちと共に、転生の拠り所としてホムンクルスの身体を利用しているヌルへと水を向けるユリア。


それに対しヌルは、小さくため息を吐いてから、暗い表情を切り替えて、自らのホムンクルス人生(?)を例に取りつつ話し始めた。


「そうですね……。剣士が見たというそのホムンクルスが、どういった経緯で生まれたホムンクルスなのか分からないので、一概に同じだとは言えないかもしれませんが……私たちがホムンクルスとして転生した直後は、毎回魔法が使えなくて苦労しますね。魂を引っ越したばかりだと、身体の扱いになれなくて、すぐには魔力を使いこなせないんですよ……。知識の移動は、魂の載せ替えによって一瞬で終わりますが、構造の異なる身体を使いこなすのは、それなりに時間がかかると考えていいかと思います」


「あー、そう言えば――――」


と、ワルツが『魔力』という言葉に反応して、口を開こうとしたときの事だった。


ギギィ……


そんな何かが軋むような音を立てて、急に馬車が停止したのである。


「何かあったのですか?」


御者台の近くにいたユリアのその問いかけ対し、今日もそこで防寒着を着込んで馬車を操縦していたロリコンとカペラが返答する。


「車輪に雪が絡んで止まったみたいだ」


「このままだと、この先も同じようにして進むのは簡単じゃなさそうだな……」


そう口にしてから、御者台から降り、馬車の点検を始めるロリコンたち。

それから間もなくして、彼らはこんなことを言い始めた。


「これは……ヤバイかもしれない」


「車輪にロープが絡まってる……?罠か?!」


その直後だった。


ストッ!

ストッ!

ストッ!


不意にそんな軽い何かが馬車にぶつかったような音が響き渡り、それと同時に、


「んはっ?!だ、誰じゃ?!妾の額に矢を放ったのは!」


……そんな激怒する狐娘の声が、辺りに響き渡った。


「テレサちゃん……。その頭に刺さってるやつ、痛くないの?」


「む?」スポッ「……うむ。そういえば痛くないのじゃ……」


「ふーん……」


「何じゃ?ルシア嬢。お主、また良からぬことを考えておるのではなかろうかの?」


「ううん。考えてないよ?ただ、テレサちゃんの身体を使えば、色々出来るなー、って思っただけ」


「ちょっ……?!」


とテレサとルシアが、矢が自分たちに向かって飛んできたと言うのに、幌の外に頭を出したままで、そんな普段通りのやり取りをしていた、そんな時だった。


「突撃ぃ!!」


「「「うおぉぉぉ!!」」」


森の中から、盗賊と思しき者たちが現れたのである。

それはもう、大量の。


その様子を眺め、


「んー、ちょっとかなり面倒ね……」


と眉を顰めるワルツ。

それには、ヌルもユキBも同意見だったようである。


「「なんでこんなことに……」」


彼女たちは一体何を見て、頭を抱えたのか。


それは、駆け寄ってくる盗賊が皆、


「メシをよこせぇ!」

「腹減った……」

「少しでいい、少しでいいから食事をくれぇ……」


と口にしていたことと、メンバー構成に老若男女が含まれていたこと。

そして……


「皆、ゲッソリとしてるわね……。スケルトン寸前じゃない……」


ワルツのそんな言葉の通り、ガリガリに痩せ細っていたからである。


どうやら盗賊たちは、根っからの盗賊というわけではなく、飢餓に苦しむ、この地の住民たちだったようだ。



やはり、自分自身が登場するシーンを書くというのは、なかなか大変なのじゃ。

何が大変って……あとがきで下手なことを書けない事が一番大変かのう。

頭に矢が刺さってどう思ったとか、後ろで話しておる者たちの話を聞いてどう感じたとか……。

まぁ、その辺はこれまで通り、一切合切、知らぬ存ぜぬで、あとがきを埋めるしか無いのじゃがのー。


というわけで。

少し早めに8.5章に突入したのじゃ。

ここからは、ボレアスの首都であるビクセンまで……いや、何でもないのじゃ。

何かが変わるわけでもなく、これまで通りに駄文が続いていくだけなのじゃ?

……多分じゃがの。


……ホント、下手なことが書けないのじゃ……。


追記:

そう言えば、いつの間にか、小説のタグから、『R15』と『残酷描写』警告が抜けて落ちておったから、付け直したのじゃ?

一体いつの間に、外れたのかのう……。

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