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8.4-19 いばらの道19

次の日の朝。

ワルツたちは早々に、リーパの町を()った。

小さなリーパの町でやるべきことは、すべて果たしたのである。

いや、正確には、果たせなかった、というべきか。

必要としていたビクセンの町の情報を得ることはできなかったのだから。


「ねぇ、ヌル。この先にあるダンジョンなんだけど……馬車ごと入れるの?」ぶちぶち


「1台だけなら問題なく通過できると思いますが……すれ違うのは難しいかもしれません」


「大丈夫だよ?ヌルちゃん。その時は私の転移魔法で移動させるから」ぶちぶち


「お、おねがいします……」


ガタゴト、と振動する馬車に揺られながら、山脈を超えた先にある比較的大きな町を目標に進んでいくワルツたち。

その際、ワルツとルシアが、道沿いに生えていた草を、重力制御システムや魔法を使って、片っ端から毟り取っていたわけだが……。

それを指摘する者がいなかったのは、既に皆が慣れていたためか。


ちなみに刈り取ったその草は、一時的に馬車の中に集められていた。

より具体的に言うなら、馬車の後方部分に草が置かれ、それを取り囲むように一同が陣取り……。

そして、次から次へと入ってくるその草を、要るものと要らないものとに仕分けていたのである。


「これは傷に効く薬草です。こっちはやけどに効く薬草です。このギザギザなのはお茶にすると美味しい香草で、そこにある紫色の草は、魔物の狩りに使う毒草です。食べると3日間、お腹が下り続けるです」


「凄いですわね、マリーちゃん。そんなに沢山の葉っぱの種類を覚えているなんて……(って、この毒草、食べたのですの?)」


「も、もう……妾には、皆、同じにしか見えぬのじゃ……」


「(こ、これは、本格的にイブの立場が危ういかもだね……)」


まるで流れ作業のように草を分別して、必要なものだけ麻袋の中へと放り込んでいくローズマリーのその手腕に、舌を巻く一行。

なお、価値の無い雑草については、馬車の後ろから放り投げているので……。

彼女たちの載った馬車の後ろから別の馬車に乗って付いてきていた勇者たちは、迷惑そうな表情を浮かべていたようである。


そんな全自動草刈り機(?)、もとい冒険者のランクを上げるための、パワーレベリングマシン(?)と化していた馬車が、3時間ほど街道を走っていくと、


「見えてきたぞ?」


今日も御者台で、愛馬を操りながら、カペラと雑談していたロリコンが、おもむろにそう呟いた。


そんな彼が視線を向けた先では、これまで続いていた森が唐突に切れていて、その先には切り立った崖がまるで行き止まりのように立ちはだかり……。

そしてそこに、馬車がギリギリ2台入れるかどうかと言ったほどの大きな洞穴が開いていた。

馬車が進んでいた街道は、そのまま真っすぐに洞穴へと進んでおり、どうやらそこが、経由地点のダンジョンの入口らしい。


「これが『ニクスへーレ』の洞窟の入り口です」


「ふーん。そうなんだ」


「……もしかしてワルツ様。こういった場所はあまり好まれないのですか?」


「見たことがないものを見るのは大好きよ?景色とか、花とか、石ころ、町とかね。でもねぇ……穴蔵に入っても碌なこと無いし、狭いし暗いし怖いし……」


「えっ?」


「まぁ、早く入って、そのまま早く抜けちゃいましょ?ちなみにどのくらいの長さがあるの?」


「そうですね……今から入ると、明日の昼くらいには抜けられるくらい……でしょうか?(多分……)」


「随分と長いトンネルのようね……」


入ったすぐの場所から下り坂になっているその洞穴へと視線向けて、少しだけ嫌そうに眼を細めるワルツ。

しかし、ルシアの魔法や、自身の荷電粒子砲を使って、真っ直ぐにトンネルを穿つわけにも行かず……。

ワルツは大人しく、ダンジョンを通過して、山越えをすることにしたようである。



ニクスへーレの洞窟に入ってからというもの、草刈り(?)ができなくなり、やることが無くなった様子の一同。

時折、洞窟の横穴から魔物が現れても、それを狩り取って、馬車の中でリアルタイム解体をするわけにはいかなかったようで、皆、大人しく、洞窟の中の様子を眺めていたようである。


「なんかイブ……冒険者みたいになった気分かも!」


「うん、イブちゃん。冒険者みたいじゃなくて、本物の冒険者だよ?」


「そうかもなんだけど、実はイブねー……ビクセンにいたときは、Eランクの冒険者かもだったんだー。そう言う意味では、前から冒険者をやってたかもなんだけど、魔物なんて倒したことなかったかもだから、こんなところに来たことなくって……」


「そっかぁ……。強い魔物が出てきたら、危ないもんね。あ、魔物」ドゴォォォォン!!


「う、うん。それに、イブ……このままルシアちゃんたちに頼ってばかりだったら、ずっとFかEランクの冒険者止まりで、DランクとかCランクとかにはなれない気がするんだー。だから、少しは戦う練習をしたほうがいいかもって思うんだけど……」


そう口にしながら、ルシアの魔法を受けたために黒い炭になって、暗い洞窟の景色と同化してしまった魔物を眺めつつ、その眼を少しだけ細めるイブ。


そんな彼女の言葉に、狩人が反応する。


「……イブ。その心意気、悪くないと思うぞ?イブさえ良ければ、一緒に狩りをして、魔物を狩るときのコツを教えてもいいんだが……やるか?」


狩人の言葉を聞いて、イブは、んー、と唸って考え込んだ後……。

こう返答した。


「それって、この洞窟の中でも、やれるかもなの?」


「あぁ。もちろん、洞窟でもできる。ただ、流石に馬車が動いていると出来ないから、もしやるとすれば……馬車が止まっている朝早くになるだろうな」


「そっかー。じゃぁ……狩人さんのお言葉に甘えようかなー?」


「あぁ、いいぞ?」


と口にしながら、にっこりと満面の笑みを浮かべる狩人。


するとその会話に……どういうわけか、ユリアが入ってきた。


「……狩人様。よろしければ、マリーちゃんにも、狩りの方法を教えて下さいませんか?」


その言葉に、


「…………?」


と、小さく首を傾げるサキュバスの少女、ローズマリー。

どうやら彼女は何故このタイミングで自分の名前が出てくるのか、分からなかったようである。


すると、ローズマリーが事情を察せていないことを感じ取ったユリアが、補足の言葉を口にする。


「諜報部の仕事は、何も情報をかき集めることだけがすべてではありません。場合によっては、魔物とも戦ったりしなくてはならないんです(自分の身を守るために、ね)。マリーちゃんにとっては、魔物と戦う方法を学ぶ良い機会だと思うのですが……嫌ですか?」


「えっと……マリーもやりたいです!」


「そうですか。……狩人様?」


「あぁ、かまわないぞ?それに、ついでだ。テレサとベアトリクス、お前たちも来い」


「魔物狩りですの?……ワクワクしますわ!」にこにこ


「わ、妾も?」げっそり


「あぁ。ずっと馬車に揺られているだけだと、運動不足になるからな。……ヒント。体重計」


「「「?!」」」


「ヒントじゃのうて、真理じゃろ……それ……」がっくり


そして、複雑そうな表情を見せる馬車の中の一同。


こうして次の日の朝から、狩人による狩人講座の第2弾が始まったのである。




ここ最近、地の文の3点リーダーの使い方について考えておるのじゃ。

今まで、微妙な間を表現するのに用いてきたのじゃが、どうもそれが読み難さにつながっておる気がして、修正しようと思ってのう?

じゃから、ここ数話は、以前のあとがきであったように、できるだけ使わないようにして書いておったのじゃ。


じゃがのう。

まったく使わないというのも、大変なのじゃ。

特に、長い文を一旦切る時。

三点リーダー無しでいきなり切ると、読んでおって『……?』となってしまったのじゃ。

情報の表示量が多いPC上ではそうでもないのじゃが、表示できる文字数が少ないがために、必然的に改行が増えてしまう携帯端末上では、その傾向が顕著でのう。

それゆえ、文を一旦切るところでは、三点リーダーを書くことにしたのじゃ。

まぁ、そのくらいなら良いじゃろう。


あとは、セリフの中にある三点リーダーかのう。

この辺も、どうするか考えねばならぬのう……。


――――――――


……とある狐娘たちのある日の話。


「こ、ここがキツネ村……!」


「テレサちゃん……そんなに狐が好きなら、アメちゃんに頼んで、抱っこさせてもらえばいいのに……」


2人はそんなやり取りをしながら、受付に足を踏み入れたのである。

その先で、予想だにしないキツネワールドが展開されているとも知らずに……。


――――――――


という話を書きたいのじゃが、書いておる暇が無いのじゃ……。

もう、ダメかも知れぬ……。



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