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8.4-15 いばらの道15

それからルシアたち年少組が、最年少のローズマリーと打ち解け合い……。

爆発する正門を眺めながら、昼食を食べて……。


そして遂に……その時がやって来た。

そう、冒険者ギルドに向かう時間である。


「私たち……遂に冒険者になるのね……」


「お姉ちゃん。今まで冒険者ギルドに近づきたくないって言ってたけど……なんか、嬉しそう?」


「い、いいえ。う、嬉しくなんか無いわよ?緊張して心配して……と、とにかく、複雑な心境なのよ……」そわそわ


「そ、そうなんだ……(どう見ても、嬉しそうにしか見えないけどなぁ……)」


ゆるんだ顔を両手で抑えながら、必死に誤魔化そうとしているワルツに対し、微妙そうな視線を向けるルシア。

その際、ルシアは、もしも今のワルツに尻尾が生えていたのなら、ブンブンと左右に振っているかもしれない、と考えたようだが……今のワルツには尻尾はなく、ヌルの妹になりきるためか、色白な雪女モードである。


そんなやり取りを交わしながら……一行は冒険者ギルドへと足を踏み入れた。



そこは、ワルツの想像していたとおりの場所だった。

こげ茶色のレンガで作られていた建物の中には、いくつかの大きな掲示板と、受付用のカウンター、それに素材売買用のカウンターがあり、そこには様々な種類の武具を身につけた冒険者たちがいて……。

まさに冒険への入り口、といったような雰囲気に包まれていたようだ。


しかし、その光景がすぐには受け入れられなかったのか、


「…………」ぽかーん


と口を開けたまま、固まるワルツ。

普段、見せることのない姉のその表情を見て、ルシアは心配そうに問いかけた。


「お姉ちゃん……大丈夫?」


「……はっ!あまりの光景に、我を忘れていたわ……」


「えっ?(何か変なモノでもあったのかなぁ?)」きょろきょろ


「気にしないで?ルシア。さぁ、早速、登録しましょ?」


「うん!」


それから何列かに別れて、『受付』と書かれたカウンターへと並ぶワルツたち。

そこには既に冒険者たちが列を作っていて、時間がかかりそうだったので、皆別れて登録することにしたのである。


その後、最初に受付へと到達したのは……狩人だった。


「次の方、どうぞ?」


「あぁ。冒険者として新規に登録したいんだが……」


「…………えっ?」


「いや、こんな(なり)でも、これまで冒険者として登録したことは無かったからな」


「あ、はい。これは失礼いたしました。それでは、身分証をご提示下さい」


狩人の狩人装備を見て、少々戸惑い気味の反応を見せた受付嬢に対し、この町に入る際に作成した身分証のカードを提示する狩人。

それを受け取って、読み取り機(リーダー)と思しき魔道具に乗せたところで……受付嬢は、眉を顰めてこう言った。


「……か、狩人様でよろしいですか?」


「あぁ、狩人だ。それが何か?」


「い、いえ……」


色々と突っ込みたい様子の受付嬢だったが、狩人が自分のことを『狩人』だというので、受付嬢は仕方なく『狩人』として登録することにしたようである。

それが偽名であることが証明できない以上、そのままの名前で登録する以外に、受付嬢にはどうしようもなかったのだ。


「次に、こちらの魔道具に手を載せて下さい。鑑定用の魔道具で、狩人様の適正なジョブを確認します」


「ジョブ?」


「はい、冒険者と言っても、様々な役割を持った方々がいます。ウィザード、ソードマン、ヒーラーなどが代表的なジョブです。パーティーを組む際、円滑に手続きが進むよう、当ギルドではその方々に合ったジョブの鑑定を行っております。もちろん、異なるジョブに就きたいという場合は、別途対応させていただきますので、気兼ねなくおっしゃって下さい」


「そうか……。ここに手を載せれば良いんだな?」


「はい。3秒ほどで終わります」


そして鑑定用の魔道具に手を載せる狩人。


……結果、


「……は、ハンター(狩人)ですね」


「ん?そんなジョブがあるのか?」


「はい。『ハンター』と鑑定された方は、対魔物戦闘において、高い戦闘力を発揮する方が多いようです。その半面、チームでの戦闘には向かないという話も聞きます。もちろん、全員がそういう方ばかり、というわけではございませんので、参考程度に捉えて下さい」


「そ、そうか……狩人(ハンター)か……(なんか嬉しいような悲しいような……いや、嬉しんだよな?)」


「ジョブに変更はございませんか?」


「……いや、そのままでいい」


「かしこまりました。では少々お待ちください」


受付嬢がカウンターの中で何やら作業を始めてから、30秒ほど経って……


「お待たせいたしました。こちらが狩人様のギルドカードになります。また、これまでの身分証はこちらに統合されましたので、今後は、身分証の代わりに、こちらのカードをお使い下さい」


「あぁ。分かった」


「なお、新規登録された方は、ランクFからのスタートになります。そこにある掲示板に張ってある依頼書の内、Fランク以下の依頼しか受けることが出来ませんのでご注意ください。なお、ランクアップやその他ルールなどは、掲示板の隣りにある『冒険者心得』をごらんください。ほか何かご不明なことが有りましたら、当ギルドの職員にお尋ねください。お話は以上となります。それでは、良い冒険者生活を」ぺこり


「そうか……これで私も冒険者か……」


受け取った透明なカードに眼を落としながら、感慨深げな表情を見せる狩人。

これまで、騎士として、何度か冒険者ギルドに立ち入ったことのある狩人だったが、自分自身が冒険者になるとは考えていなかったためか、そのカードを見て特別な感情を抱いたようだ。



その隣では、狩人とほぼ同時に、別の人物が手続きをしていた。


「それでは鑑定しますので、こちらの魔道具に手を載せて下さい」


「鑑定……?貴様……私の能力を鑑定するというのか?!」ゴゴゴゴゴ


「い、いえ……きょ、拒否も可能です!」


「ふん!ならばそれを早く言うのだ」


相手によって、性格が180度以上変わるヌルである。


そんな彼女が鑑定を拒否したのは、何も気まぐれというわけではない。

というのも、もしもその鑑定用の道具に、ジョブを鑑定する以外の機能があった場合、自分が魔王であることがバレるかもしれなかったのである。

まぁ、背中のマントにボレアスの国章を背負う彼女が、自分の正体を隠すつもりがあるのかは(はなは)だ疑問だが……。


「では、ヌル様。ジョブ欄を空白には出来ませんので、希望するジョブをおっしゃって下さい」


「…………」


「……あの……ヌル様?」


「今考えている」


「は、はい……」


ヌルが腰に下げるその巨大な大剣を眼にしながら、一体何を悩むことがあるのか、と微妙そうな表情を浮かべる受付嬢。


それから間もなくして、ヌルの答えが出たようだ。


「では、ウィザードで」


「えっ……」


「……ダメか?」ゴゴゴゴゴ


「い、いえ。で、では魔法使いで登録させていただきます……」


そしてカードを受け取り、狩人と同じ説明を受けるヌル。

その際、ランクがFから始めることを告げようとした受付嬢が、どんな表情を浮かべていたのかについては、言うまでもないだろう……。



某狩人のギルドカードの内容

・氏名:狩人

・ジョブ:ハンター

・ランク:F


某魔王のギルドカードの内容

・氏名:ヌル

・ジョブ:ウィザード

・ランク:F


――――――――


この他にも情報を登録しようと思うのじゃが、その話は、まだ先にしようと思うのじゃ。

その前に書かねばならぬことが、山ほどあるからのう……。


さて……。

遂に、出してしまったのじゃ……。

冒険者ギルドについての話……。

正直のう、出すか出さないかで悩んでおったのじゃ。

出さなくても話は書けるのじゃが、出したら出したで、別の話も書けるからのう。

まぁ、せっかく、異世界の話を書いておるのじゃから、こう言った話があっても良いのではなかろうかの。


というわけで、明日と明後日は、残りのメンバーの登録風景なのじゃ。

じゃが……どうしようかと悩んでおるのじゃ。

似たような内容じゃから、1話に統合すべきか、あるいは2話のままにすべきか……。


……うむ。

手を抜くことにするのじゃ!

じゃが、サボるわけではないのじゃ?

金曜日から土曜日にかけて、行きたい場所があるからなのじゃ。


まぁ、その話は……その内しようと思うのじゃ?


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