表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/3387

3-06 工房作り

4章後半まで超修正中

村に帰ってきたら、とんでもないことになっていた。


村の人々が各々、武器を手にして一軒の倉庫を取り囲んでいるのである。

何があったのか。

ワルツ達が近づいてみると・・・確かに武器を構えたくなる状況だった。


血の海だ。

変形した倉庫の下からは血が滲み出し、入り口からは魔物の死骸がはみ出している。

まるで、倉庫が魔物を喰ったような、グロテスクな光景が繰り広げられていた。

要は、魔物を狩り過ぎて、倉庫がパンクしたのだ。


原因が分かっているので思わず苦笑してしまうワルツとルシア。

狩人は顔が青ざめ、カタリナはため息をついている。


「あー、皆さん。ご迷惑をお掛けしていますが、何も問題はありません。単純に獲物の狩り過ぎで倉庫がいっぱいになってしまっただけです」


そう口にするのは狩人だ。

狩人、そしてワルツ達一行の姿を見て、納得し立ち去っていく村人たち。

その中にいた酒場の店主に声を掛けられる。


「そうかそうか。じゃぁ、大漁だったんだな?」


さっきまで神妙な顔をしていたのに、急に嬉しそうな顔になる店主。

どうやらこの世界の人間は切り替えが早いみたいだ。


「はい。しかし、血抜きが不十分だったようで、迷惑をかけて申し訳ない」


と口にするのは狩人だ。


「倉庫が爆発しそうなくらい魔物を狩ってきたんだ。血抜きがうまく出来ていたとしても、それなりの血は流れるだろうよ」


と店主。


ところで、倉庫は中身を保存するための機能維持しているのだろうか。

魔道具によって保存の効果を付与されていた倉庫だが、この状態でもまだ効果は継続しているのだろうか、と狩人は心配になっていた。

それを確かめるためには、入り口からはみ出している獲物をどうにか処理して、内部に入らなければならないのだが・・・。


結果、入り口を塞いでいる魔物を処理すべく、村を上げての大焼き肉パーティーが開かれるのだった。

もちろん、無料で、だ。


以降、毎年この時期は「春の収穫祭」と呼ばれる肉の祭典が開かれるようになった。

なお、倉庫が変形している以外に、保存の機能には何ら問題はなかった。


ところで、前回と今回の狩猟では、森のなかで大量の獲物の血抜きを行ったわけだが、アンデッドが湧くような事態にはならなかった。

そもそも、この世界でアンデッドが湧くためには、土地の魔力と、死体が必要だ。

つまり、血だけではアンデッドは湧かないのである。


ただし、大量の血に反応した魔物たちが一箇所に押し寄せ、まるで蟲毒のように殺し合いをして、最後に生き残った最強の個体が森の主となって居座るようになったのだが・・・。


後に、近くのダンジョンに出現した2体の雑魚モンスターが、多くの冒険者を葬ることになるのだが・・・。

この話を語るのは、ずっと先の話・・・かもしれない。




昼前に狩りが終わったワルツ達は、今夜の焼き肉パーティーの準備(解体)がある狩人と別れ、工房に帰ってきた。

休憩がてら、昼ごはん(酒場の店主製)をいただく。

ちなみに、ワルツ達が食べたのは、玄米ご飯と魔物肉の野菜炒め、それにキノコのお吸い物だった。


(さすがに味噌汁を見かけたことは無いけど、お吸い物にダシを使っている時点で、どうやら普通に日本食もありそうね)


というわけで、昼食を撮り終わったワルツ達。


「さて、今日こそ、工房を完成させるわよ!」


「うん!」


「はい。がんばりましょう」


今日は、これまでに精錬したなんちゃってステンレスパネルを四方の壁と床、天井に設置する作業だ。

このパネルは、作成した合金のインゴットを重力制御で板状に加工したもので、所謂冷間鍛造というやつだ。


なお、冷間鍛造した意味は無い。

ワルツにとっては、丈夫で使える材料なら、どんな方法で製造したものでも構わなかったのだ。


庭で加工したパネルを、重力制御を用いて、工房内部に運び込む。

搬入が終わったら、次はパネルの固定なのだが・・・。

ここで、役割分担をする。


「じゃぁ、私がパネルを切断するから、ルシアとカタリナでパネルを繋げていって」


とワルツは告げるが、


「えっ?どうやって繋げるの?」


「ちょっと待ってね、今、準備するから・・・」


といって、パネルを適切なサイズにカットするワルツ。

ちなみに、機動装甲の指の先からレーザーが出るのだが、直視すると危ないので、機動装甲の身体に隠すようにして作業を行う。

しばらくすると、完璧なサイズでパネルが切断される。


「私がこんな風に板を切断するから、ルシアはこの板の端の部分を魔法で加熱して。カタリナは粘土細工みたいにこの金属塊を練って、それで、ルシアが加熱した板同士をくっつけていく、って感じ。じゃぁ、実際にやってみましょうか」


要は魔法を使った溶接だ。。

ワルツは部屋の角にパネルを3枚設置し、それぞれの端を合わせる。


「じゃぁ、ルシア。この縁の部分を温めて。あ、ついでに、この金属塊も。あと熱くなるから、カタリナはルシアと自分に結界を張ってね」


そうして、パネルの縁を温めていくルシア。同時に、カタリナが手で持っている金属(合金)塊を温めていく。

カタリナは結界を張りながら、赤熱していく金属塊を眺めていた。しばらくすると、粘土のように柔らかくなる金属塊。


「じゃぁ、それをルシアが加熱してくれたパネルの熱い部分にくっつけていって」


カタリナは、粘土で隙間を埋めるように、パネル同士の端を繋げていく。


「そうそう、そんな感じ」


多くもなく、少なくもない、適切な量の赤熱する粘土(?)を見て、満足するワルツ。

どうやら、母材との馴染みも悪く無さそうだ。


「じゃぁ、残りもそんな感じでお願いね」


「はい」


「うん、わかった」


こうして、大きなプラモデルを作るかのように、工房製作が進んでいった。




途中食事を挟んだ後、食べ終わった後も作業を続け、寝る頃になってようやくすべての作業が完了する。


「お疲れ様でした」


ワルツが言う。


「・・・魔力は大丈夫だけど、腰が痛い・・・」


と、子どもとは思えない発言をするルシア。

どうやら、中腰での作業が堪えたらしい。


「もう指が動かないです」


ずっと、金属塊を手で練っていたカタリナが辛そうな声を上げた。

後半はワルツも加わって接合を行っていたのだが、それでも、地下工房全体を覆い尽くすパネルを接合したのだ。

相当の量を練り続けていたのだろう。

途中、あまりの手の痛さに、回復魔法をかけながら続けていたようだが、それでも続ける彼女の精神力は大したものだった。


結果として、細長い通路に三つの部屋が並ぶ工房が出来上がった。

それぞれ、入口に近い場所から、カタリナ、ルシア、ワルツの工房だ。

言い換えれば、生体魔法研究施設、多目的魔法実験施設、半導体生産施設か。

設備の中身はまだ先だが、アンドロイド製造にむけた第一関門は突破したと言えるだろう。


その日は、二人共疲れて、すぐに寝てしまった。




次の日は、換気の問題と明かりの問題を解決することにした。

地下工房はそれなりの深さにあるため、空気が滞りがちだ。

また、半導体生産設備のクリーンルームには通気用のファンが必要だし、生体研究設備でも似たような設備が必要となる。

魔法を扱うルシアの部屋などで火魔法を使った暁には、酸素がなくなって窒息しかねない。

というわけで、換気の設備を用意しなければならないのだ。


方法はいくつかある。


一つが、手っ取り早く魔道具を使うこと。

この世界には扇風機など無いのだが、代わりに風の出る魔道具がある。

問題は一日に1度、魔力を充填しなければならないということだ。

つまり、何かあって魔力の充填が滞ると、常時換気が必要なクリーンルームが酷いことになる。

というわけで、この方法は却下された。


次に、電気を使う方法だ。

電気を作り出す方法はいくつかあるが、手っ取り早いのは銅線を精錬して、コイルを作り、磁石を水車か何かで回せば発電機の完成だ。

あとは、同様の作りのモータを用意してファンを取り付ければ換気用のファンも用意できる。

ただ、発電機から取り出される電気の種類と、モータに使える電気の種類がことなるため、そのままでは回せない(交流と直流の説明は省く)。

モータを回すための方法は2つあって、発電機側を改良するか、モータ側を改良するかなのだが、モータ側を改良するためには、部品製造にクリーンルームが必要になる。

なので、発電機側を改良するというのが妥当だろう。

幾つか課題はあるものの、この方法は可能か。


最後は、風車か水車からの動力を直接ファンにつなげて換気するという最もシンプルな方法だ。

幸いにも、近くに川があるので、水車ならどうにかなる。

風車は、風が吹いていないと止まるので、却下だ。

となると、水車から動力を引っ張ってくる・・・のは難しいので、水車のあるところまでダクトを引っ張って行かなくてはならない。

あとは、水車に取り付けたファンを回して換気するといった感じだ。

ところで、この方法には幾つか問題がある。


一つ目、水車の耐久性だ。

大きなものだと、軸の強度に不安が残る。


二つ目は、ファンの速度だ。

水車の回転数のままでファンを回しても、遅すぎて恐らく換気できない。

なので、増速するための歯車かベルトが必要になる。

そんな高速回転する機構を、湿気の多い水車の横に設置して、耐久性は大丈夫だろうか。


三つ目は、ダクトの距離だ。

長い距離をかけて通気しようとすると、その分、吸気・排気に大きな力を必要とする。

となると、ファンの回転速度が問題となり、結果として上の二番目の問題に上乗せされてしまう。

というわけで、この方法も現実的ではない。


結論として、電気を使う方法を採用した。


(異世界で発電することになるとはね・・・)


魔法があるのに、電気を使うという状況に、どこかやるせない気持ちになるワルツだった。




ところで、この日、商隊が村へとやってきた。

なので、以前、錬金術ギルドのジーンと交わした約束を果たすべく、前回と同量の鉄インゴットとオリハルコンを渡す。

なお、鉄の買取価格は、キロ12,000ゴールド。

前回は8,000ゴールドだったので、やはり()()()()()()()いたのだろう。


二種類の金属を渡し、合計で1,600,000ゴールドという大金をもらった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ