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8.3-35 セカンドコンタクト23

「あ、あなた……!」

「えっ……死んだはずじゃ……」

「あ!パパだ!」


町の外に着陸した十隻近い飛行艇。

その中から出て来た男たちの中に知っている顔が居たのか、町の入口にある大きな門の隙間から外をうかがっていた一部の町民が、嬉しそうに声を上げた。


それは、降りてきた男たちの方も、同様だったようである。


「まさか……生きて帰れるとは思わなかった……」

「あぁ、神よ……」

「王都についたか……。ここから歩いて、あと3日だな。待ってろよ!」


と、見慣れた故郷の姿を見て、感慨深げな表情を見せる者たち。

彼らが、何者なのかについては、もはや言うまでもないだろう。


そんなオリージャの男たちや、町の人々の反応を見ていたワルツは、近くにマクロファージが居ないかを探すこと無く、直接、無線機を使って、コルテックスに問いかけた。


『コルテックス?これ、どういうこと?』


すると、間もなくして、コルテックスから返答が戻ってくる。


『いえいえ〜、どうもこうも、見ての通りですよ〜?いつまでも家族を離れ離れにしておくのは、かわいそうではないですか〜』


『いや、あんた……それ絶対、本音じゃないでしょ?』


『はい、確かに方便ですね〜。でも、この際、細かいことはいいではないですか〜?せっかくの感動的なシーンなのですから〜』


『はぁ……。で、本当の目的は何なのよ?』


『まったく野暮ですね〜。まぁ、お姉さまらしいですけど〜』


露骨に溜息を吐いた姉に対して、コルテックスはそう返答すると、何処か嬉しそうな声色で、なぜこのタイミングでエンデルシアからオリージャの者たちを戻したのかについて、話し始めた。


『朝方の話で、オリージャを守る兵士が足りないから、という理由で、ミッドエデンの騎士たちをここに置いてく〜、という話になっていたではないですか〜?ですから、エンデルシアからオリージャの国民およそ10万人を戻して、守りを固めようと思ったのですよ〜。少ないなら、足してしまえ〜、ということですね〜』


『10万人って……じゃぁ、あと残りの60万人は?』


『オリージャ出身では無かったのですよ〜。一部はエンデルシアだったり、メルクリオだったり、その他小国の出身だったり〜……』


『なるほどね……。じゃぁ、何?もう人は十分いるから、騎士たちを全員ボレアスに連れて行けってこと?』


『さすがはお姉さま〜。話が早いですね〜』


『いや……別に、1500人が3000人に戻ったところで、問題は無いけどさ……。でも、この国の守りは大丈夫なの?このまえの戦いを見ている限りじゃ……ウチの騎士と、オリージャの兵士じゃ、話はまるで違うわよね?それに、その話しぶりだと、アトラスも連れて行くんだろうし……』


『戦力の低下を危惧しているのですか〜?それは全然問題ありませんよ〜?だって〜……』


コルテックスはそう口にすると、そのまま別の人物に対して、無線通信を接続したようである。

その接続先は……


『ポテちゃん?例のものをお願いしますね〜。こう、どっか〜ん、っと〜』


『おまかせ下さい!』


未だ空に真っ黒な船体を浮かばせたままのポテンティアだったようである。


彼はコルテックスから何やら頼み事を受けていたらしく、そのままワルツたちの頭の上を飛び越えて、王城の上空へと移動すると、さらにそこも通り過ぎ……。

最終的には、壊れてしまっていた教会の上空で静止した。

そしてそこで、


ガコンッ…………


と、船体の下部にあった全長200mほどのウエポンベイのようなものを開くと、彼はその場に浮いたまま、自身の下方に向かって、こんな警告を飛ばした。


『アテンションプリーズ!これより、この場所に、自動防衛システムの設置を行います。巻き込まれた方は、労災認定されない可能性がありますので、ご注意下さい』


『いや、この世界に、労災保険とか無いでしょ……』


『そんな細かいことは良いのです。さぁ、ポテちゃん!やってしまって下さい!』


『了解です』


と、ポテンティアが口にした直後だった。

彼の船体の内部にあった、全長180m程度の細長い柱のようなものの船体後部側のロックが外れると、機首側を軸にして振り子のように吊り下げられ……。

そして安定したところで……


ズドォォォォンッ!!


柱は、真下へと猛烈な速度で射出され、50mほどが地面に埋まった。

そしてポテンティアは、再び周囲へと言葉を投げる。


『ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。支柱の設置は完了しましたので、皆様、通常の活動にお戻り下さい』


それから彼は、別のハッチを開くと、地面からの高さが130m程度あったその柱の上に、白いドーム状の物体を速やかに設置して、そのままその場を離れていった。


それを見たワルツは、唖然とした表情を浮かべつつ、電波に質問を乗せる。


『何あれ……?』


『そうですね〜……命名権は私には無いと思いますが、それでも名付けるとすると〜……オリージャタワー?』


『いや、そう言う意味じゃなくて……』


『えぇ〜、分かっていますよ〜。あれは、ミッドエデンの王都に設置している自動防衛システムの旧型ですね〜。リサイクルですよ、リサイクル〜。まぁ、魔力さえ供給していれば、弾が無限に出るように改造していますけどね〜』


『なんであんなものを……』


『それはもちろん、この町をエクレリアから守るための(かなめ)が必要だと思ったからですよ〜?一般的な武器では、戦車相手にまともに戦えないでしょうから〜』


『そりゃそうかもしれないけど……これで良いのかしら……。なんか腑に落ちないんだけど……』


『これくらいしないと、一瞬でこの国は滅ぼされてしまうと思うので、良いのではないですか〜?では、電源入れますよ〜?ポチッとな〜』ピッ


その瞬間、


ウィーン、ガコンッ……

ズドドドドド!!!


と、人々があふれる町の中へと射撃を開始する自動防衛システム。

その様子には、さすがのワルツもコルテックスも、


『『?!』』


と、驚いてしまったようだ。


だが、自動防衛システムは、なにも誤作動をしたわけではなかったらしい。

それに気づいたのは、システムを管理しているコルテックスだった。


『ふむふむ〜……システムは正常のようです。どうやら、街の中に伏兵がいたみたいですね〜。昨日の生き残りでしょうか〜?』


『どうやって、そんなの検出してるのよ……』


『エクレリア出身のロリコン様の身体を詳しく調査させてもらいました〜。そこから、エクレリア出身の者たちだけが持つ、特有の魔力的波長を抽出して、捻って、混ぜて、捏ねて〜……この国やミッドエデンに敵意のある者たちだけを抽出できるようなアルゴリズムを組み立てたのです。詳しく聞きますか〜?』


『いや、いいわよ……。それにしても、嫌な響きね……ロリコンの身体を詳しく調査したとか。あ……ということは、ロリコンも今ので死んだってこと?』


『いえ、残念ですが、生きているようですよ〜?彼には敵意が無かったみたいですね〜。今は〜……狩人様に作ってもらった遅めの朝食を、馬小屋の中で泣きながら美味しそうに食べているようですが〜……気に食わないので、試しに脳天撃ち抜いてみますね〜』うぃーん


『かわいそうだから、止めときなさいよ……』


悪意のないロリコンを撃ち殺すのはどうかと思ったのか、コルテックスを制止させるワルツ。

やはり、ミッドエデン所属の男たちは、皆、虐げられる存在にあるようだ……。


ともあれ。

こうして、オリージャの王都に、簡易的な自動防衛システムが築かれ、防御だけを考えるなら、王都民だけでもこの町を守れるようになったようである。

そして、それと同時に……ミッドエデンの騎士たちが、この町に留まる必要は無くなったようだ。

鬼って……なんじゃろう……。

きっと、いつも優しげな笑みを浮かべて、さらっと、えげつn……いや、なんでもないのじゃ……。


まぁ、そんなよくある話は置いておいて。

この8.3章は、あと1話か2話で終わる予定なのじゃ。

と言っても、既に書き終わっておるのじゃがの?

それでも、話数にゆらぎがあるのは……2話に分割するか、1話に統合するかで悩んでおるからなのじゃ。

8.3章のふぁいならないずを2話も続けるのは、少々間延び気味かもしれぬ、と思ってのう。

巻き気味で行くなら……やはり、1話で終わらせたほうがいいのじゃろうのう……。


というわけで、間もなく、ボレアス編(2回目)に突入するのじゃ?

その際、少しだけ、異世界モノっぽい話を書こうと思うのじゃが……内容については秘密なのじゃ。

まぁ、駄文であることに、変わりは無いがの。

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