8.3-30 セカンドコンタクト18
中程度グロ注なのじゃ?
その頃。
野戦病院(?)と化していた、王城前の広場には……
「うぅ……。あいつら……関節技……おかしい……」
「か、下半身の感覚が無ぇ……」
「ひ、秘孔って……何だよぉ……」
と、うめき声を上げるけが人が次々と運び込まれてきていた。
内訳を割合で現すと、オリージャの兵士が4%、市民が1%、ミッドエデンの騎士が0%、そしてエクレリアの兵士が……94%である。
ワルツたちの初動が早かったためか、味方側に損害は殆ど出ていなかったようだ。
そんな、敵だらけの光景を前にして、そこに駆けつけて手伝いをしようとしていたアンバーとソフィアは……今この死ゅン感、戸惑っていた。
「ワルツさんが治療しなくても良いって言ってたんだけど……どうするソフィー?」
「そうね……。もしも、敵側の治療しなくてもいいって言うなら、けが人は殆どいないみたいだから……私たちの出番は無さそうね。これならこの町の術師でも十分対処できるでしょ」
「放っておいても、本当にいいのかな……」
「敵なんだし、気にしなくても良いんじゃない?一応、薬は調合しておいたから、あとは傷に塗り込むだけだけど、無限にあるわけじゃないから勿体無いし……」
と、口にしながら、肩から下げていた大きなバッグを、パンパン、と叩くソフィア。
恐らくそこに、ソフィアの調合したという薬が入っているのだろう。
そんな時。
彼女たちの後ろから、よく似た顔の2人の姉妹と、彼女たちと雰囲気はよく似ていたものの、見た目はかなり異なる女性が現れた。
シリウス姉妹の3人組である。
その内、最も背が高く、全身に甲冑を身に着けていたヌルが、ソフィアを見て……何故か悔しそうにこう呟いた。
「くっ……ソフィーちゃんに先を越されるとは……!」
そんな彼女に対し、ソフィアは、ニヤリと笑みを浮かべて返答する。
「あら?ヌルちゃん?随分と遅かったわね?」
「ふん!貴様のように……私は暇ではないのだ!」
「暇じゃない、ねぇ……。どうせ、寝てたんでしょ?ヌルちゃん、昔から寝起き悪いから……」
と、御年500歳を超えるヌルのことを、まるで昔から知っているような様子で話すソフィア。
そんな彼女の発言に、ヌルは、ムッ、とした表情を浮かべた後で……どこからともなく取り出した金属製の道具をちらつかせながら、ニンマリと笑みを浮かべて、こう言った。
「何なら……貴様も体験してみるか?我ら『ボレアス』式の拷問を、な!」ガチャリ
「ほう?それは面白そうね?ならこちらも、『マギア』式の、拷問を紹介しなきゃダメよね!」
ゴゴゴゴゴ……
膨大な魔力が身体から漏れ出しているのか、周囲の物理現象を捻じ曲げながら、睨みを交わす2人。
一方、そんな2人のやり取りを見ていた、アインスとツヴァイ、それにアンバーの3人は……
「あー、また始まった……」
「では、ボクたちはボクたちで、尋問しましょうか」
「それ……私も参加させてもらっていいですか?ソフィーがあんなんになっちゃったら、私にできることは何も無いですし……」
2人に付き合うのが面倒になったのか、彼女たちは彼女たちだけで動くことにしたようである。
「尋問……尋問ですか……。どんなことを聞くんですか?」
「この方々は、恐らく、ボレアスの首都のビクセンを襲った国の者たちと同じ出身のはずです。ですから、本当にエクレリアから来たかの確認や、何が目的なのか、といったことを中心に聞こうと思います。……ですよね?ツヴァイ?」
「はい、アインス姉様。確かに彼らと同じ面妖な装備を身に付けた方々が、魔王が何だとか、勇者が何だとか言いながら、ビクセンの王城に土足で上がり込んでいました。こうした装備が一般的ではないことを考えるなら……この者たちは、ほぼ間違いなく、ビクセンを襲ったものたちと同一の国出身の者たちかと思います。この際、徹底的に、聞き出しましょう!」
と、ロープで縛られた上、所狭しと並べられていた敵の兵士たちの近くまで来て、そんな会話を交わすアンバー、アインス、ツヴァイの3人。
そんな彼女たちの目的は、その言葉通りに尋問……。
アインスの言葉通り、彼らが何者で、どこから来て、そして目的は何なのかを聞くつもりだったようである。
ただし、ヌルの例にあった通り、平和的な問いかけとは限らないが……。
「ではまず……どこから聞きます?」
「手当たり次第、片っ端からで良いのではないですか?壊れてしまったら、次の人物がいるのですし……」
「それもそうですね」
「流石、魔王……。言ってることが、恐ろしいですね……」あたふた
と、アインスとツヴァイが、非人道的な発言を交わしている様子に、アンバーが引きつり気味の表情を浮かべた……そんな時だった。
「…………っ!」
それまで大人しく寝ているだけだったはずのエクレリア兵の一人が、隠し持っていたナイフでロープを切り、拘束から逃れて立ち上がると……
「動くな!さもなくばこいつの命は無いぞ!」
アンバーの首元にそのナイフを突きつけながら、そんな言葉を口走ったのである。
どうやら彼は、アンバーを人質に取るつもりらしい。
その様子に……
「「っ……?!」」
と、戸惑ってしまった様子のアインスとツヴァイ。
2人とも、自分たちの気が抜けていたことを、今になって自覚したようである。
だが……そんな彼女たちよりも、はるかに戸惑っていた人物がいた。
「う、うわっ!?」
男に捕まってしまったアンバー本人である。
彼女は後ろから男性に抱きつかれて、その上、ナイフを突きつけられるとは微塵も思ってなかったらしく……それはもう、パニックに陥ってしまったようである。
その結果……アンバーは魔法を使った。
彼女が唯一、使える魔法を。
本来、都市を守る結界の中では使えないはずの転移魔法を……。
ブゥン……
と、いつも通りに低い音を周囲へと響かせて、発動する転移魔法。
……しかし、今回に限っては、それだけでは済まなかったようである。
ガシャァァァァン!!
空に白い亀裂が入ったかと思うと、触れることの出来ない透明なガラスの欠片のようなものが、空から舞い落ちて、街全体へと降り注いだのである。
……その欠片は、この町を守るための結界そのものだった。
どうやら、ルシア並の魔力を有している彼女の転移魔法は、本来その効果を無効化させてしまうはずの壁すらも、訳なく破壊してしまったようである。
そしてもう一つ。
ブシャァァァァッ!!
転移魔法が発動した瞬間、その場に真っ赤な噴水が生じたのだ。
その出処は……
「「「うわっ?!」」」
ナイフが突きつけられていたアンバーの首……ではなく、彼女のことを後ろから羽交い締めにしていた男性の上半身からだった。
彼女の転移魔法が消し飛ばしたのは、エクレリア兵の身体の一部。
より正確に言うなら、腹部から上の部分だったようである。
「なん……なんてことしてるんですか?!アンバーさん!」
「い、いや……えっと……すみません……。急に掴まれたので、思わず取り乱してしまいました……」
「「(取り乱しただけで、そうなるんですか?!)」」
そんなアンバーの一言を聞いて、ある種の恐怖に襲われるユキたち姉妹。
その際、彼女たちは、人間側の領域にある『魔女狩り』の意味について考えたようだが……果たしてその懸念が『魔女狩り』の目的と関係があるかどうかは、不明である。
それから、下半身だけが残ったエクレリア兵が、光の粒子になって消えて……
「これ……以前にも見たことがあります」
「死ぬと……消えるのですね……」
「あ!血も無くなりました!良かったぁ……。シミになるかと思いましたよ」
「「…………よ、よかったですね……」」
3人は、三者三様の表情を見せながら、次の尋問相手を探すことにしたようである。
なお、そんな彼女たちのやり取りの一部始終を見ていたエクレリア兵たちが、彼女たちに向けて、どんな表情を浮かべていたかについては……筆舌に尽くし難い表情だった、とだけ述べておこうと思う。
この話はのう……実は、昨日の内に、書き上がっておったのじゃ。
そして今日、あっぷろーどしたわけじゃが……もしも今日書いておったなら、集中力的な事情から、まともに書けなかった……そう思うのじゃ。
そして、明日は……どうやって書こうかのう……。
それと明後日の分も……。
……うむ。
旅先におる内は、どうにか時間を見つけて、昼間書くしかなさそうじゃのう……。




