8.3-29 セカンドコンタクト17
中度グロ注なのじゃ?
それと、あとがきはネタ的な事情から省略させてもらうのじゃ?
それとはまた別の場所……より具体的に言うと、市壁の上部では、
「やっぱりこれ……俺がやるんだろうな……」
グォォォォォ!!
ゴガァァァァ!!
ドゴゴゴゴゴ!!
町の外に集結した無数の魔物たちが上げる雄叫びを聞きながら、アトラスがいつも通りに、疲れたような表情を浮かべていた。
そんな魔物たちが、皆一様に首輪のような者を付けているところを見ると……彼らは、ボレアスにやって来たという魔物たちと同じく、エクレリア兵に操られているのだろう。
「こいつら確か……自己再生するんだろ?」
アトラスが、どこへとなく、そんなつぶやきを向けると……彼のその質問に対して、返答が戻ってくる。
『ユキA様とユキB様の報告によると〜……攻撃しても攻撃しても、まるでゾンビのように立ち上がって、襲い掛かってくるという話でしたね〜。諦めの悪いボクサーみたいなものでしょうか〜』
「いや、その例え……どうかと思うぞ?」
いつの間にか自分の真横にいた透明なスライムのような物体から飛んできた言葉に、微妙そうな表情を浮かべながら、首を傾げるアトラス。
そんな彼が、一体誰と話をしていたかについては、言うまでもないだろう。
すると今度は、マクロファージの……その向こう側にいるだろうコルテックスが、おもむろにこんなことを言い始めた。
『そう言えば〜……細かいことを気にしてたら、誰だったかとはやっていけない……そんなことを口にしていた人物が居たようですね〜?一体どこの誰が、誰に対して向けた言葉なのでしょうね〜?ね〜?アトラス〜?』
「コルテックス……お前、聞いてたのかよ……」
『しかも、世の中には、主のことをほっぽりだして、女遊びに感ける、議長専属の騎士がいるとかいないとか〜。ね〜?アトラス〜?』
「いや……カタリナ姉は女遊びの対象にはなりえないだろ……。っていうか、こっち来てるなら俺のこと呼べよ……。それに、そもそもお前、俺の主じゃねぇだろ……」
途切れること無く飛んでくる剣山のような言葉に、アトラスは思わず両手で頭を抱えてしまったようだ。
それからアトラスは大きくため息をして、その内側に溜まっていた鬱憤を吐き出すと……。
市壁の壁なのか、それとも都市結界の壁なのか、ガリガリと爪を立てて、何かを削ろうとしている魔物たちの姿を、市壁の上から眺めつつ、彼はこんな質問をコルテックスへと投げかけた。
「で、俺はどうすりゃいいんだ?コルテックスの方でも動いてるんだろ?」
それに対し、コルテックスは……
『このタイミングを見計らって、エンデルシアからオリージャの国民たちをそちらに転移させ、魔物たちを背後から襲わせて、大団円〜……そんな虫の良い話が、あると思いますか〜?(投入するなら、もっと効果的なタイミングで、投入しますよ〜?)』
と、暗に、まだ準備中であることを仄めかした。
「じゃぁ、今回に限っては、俺が動くってことで良いんだな?」
『そうですね〜……。これは政治の絡んだ難しい話なので、私からすぐにどうしろ、という返答は出来かねます。……アトラスはどう思いますか〜?どうやったらオリージャ王国を〜……ミッドエデンの傀儡政権に出来ると思いますか〜?』
「傀儡化するつもりかよ……」
『国家統一ですよ〜?この大陸に、2つ以上の国は必要ありませんからね〜』
「ずいぶん大きく出たな……」
もしも、ワルツがそれを聞いたなら、顔を真っ青にして止めさせるか、あるいは聞かなかったことにするか、そのどちらかだろうと予想しながら……アトラスはどこか呆れた様子で相槌を打った。
それから、行動の決定権が自分にある事を知った彼は、自ら動くことにしたらしく、戦闘用の黒い手袋を装着すると、
「じゃぁ、片付けてくる!」
その言葉だけを残して、市壁の上から街の外へと飛び降りたのである……。
……まぁ、飛び降りたのは、アトラスだけではなかったようだが。
「さてと……それじゃ、早速、お手並み拝見と行こうか?」
無数の魔物たちが所狭しと蠢く街の外へと降り立ったアトラスは……本格的な戦闘を始める前に、その場にいた一際大きな魔物を相手に、準備運動をすることにしたようである。
その最初の対象は……背中から無数の触手を生やしたバッファローのような魔物だ。
その魔物もやはり、ユキBの報告にあった通り、首に金色のリングのようなものを装着していたようである。
それを見たアトラスは、
「……なるほど。これから先、エクレリアとドンパチやることを考えるなら、あの首輪を分析したほうが良さそうだな」
その首輪を回収して分析することにしたらしい。
なお、それを実際に分析するのはコルテックスになるわけだが……彼女なら喜んで解析することだろう。
そして、彼が最初に取った行動は……そこに落ちていた手頃な石を2個拾い上げるという、何気ないものだった。
その後、手にした石の1個を……
「ほら、こっち向け!」
テンタクルバッファローに向かって、投げつけたのである。
ただし、相手の殺傷を考えているとは思えないほどに、ゆっくりと優しく……。
ポコッ……
…………?……フンッ!!
その瞬間、バッファローのような見た目の魔物は、アトラスがそこにいることに気づいたらしく、鼻息を荒くして、彼の方へと真っ直ぐに振り向いた。
アトラスが肉塊になる数秒前……そんな状況である。
そんな緊迫した状況の中、アトラスの頭の上から、再び聞き慣れた声が飛んできた。
『ダメですよ〜?アトラス〜。ちゃんと、『僕たちの町から出て行け〜』って言いながら投げつけないと〜。それもできるだけ、あどけなく、ですよ〜?』
「何だよそれ……っていうか、いつの間に頭の上に乗ったんだよ……」
『ほらほら〜?よそ見をしてると、轢殺されちゃいますよ〜?まぁ、ぶつかって死ぬのは、相手の方でしょうけどね〜』
「はぁ……」
アトラスは、妹の言葉を聞いて、心底疲れたように大きくため息を吐いてから……
「えーと?ボ、ボクタチの街から出て行け?」
ドゴォォォォン!!
真っ直ぐに自身へと突進してくるバッファローに対して、持っていた2つ目の石を投げつけたのである。
その投擲先は、立派な角が生えているバッファローのその眉間だ。
ドシャァァァァン!!
……その瞬間、バッファローは弾け飛んだ。
アトラスから極超音速で放たれたその石は、頭部を撃ち抜いた後、リングの付けられていた首の内側を経て、その体内へと侵入し、そのまま貫通して、臀部から外へと抜けていったわけだが……その際に失われた運動エネルギーは、石と共に出ていったわけではなく、その大半が体内に残ったのである。
結果、戦車の主砲に撃ち抜かれたリンゴのような見た目で、バッファローの身体は四散し……
カランッ……
その場に、赤い液体と固形物、それに金色のリングだけを残した。
『うわ〜、グロいですね〜。発言と行動がまったく合っていませんね〜』
「出て行け、って言えって言ったのコルテックスじゃねぇか……。で……どうすんだコレ?いるんだろ?」
『もちろんですよ〜?これでまた、ミッドエデンの技術力に磨きがかかるわけですね〜』
と、コルテックスはマクロファージ越しに首肯すると、
にゅるにゅる……
マクロファージから何やら突起物のようなものを伸ばして、その金色のリングを掴み……
ゴクリ……
そのまま、マクロファージの体内へと取り込んでしまった。
そして、金色のリングは、マクロファージの透明な体内で、みるみるうちにバラバラになって……。
間もなくして、消化されるように、消えてしまったようである。
「どうなってんだ?コレ……」
『魔素粒子のレベルまで分解して、構造の情報だけをこちらに飛ばしました〜」
「こいつ……見た目によらず、随分万能なんだな……」
『実はその子、体内に、魔道具を構成する要素が、数億個程度詰まっていて〜……それらをうまく組み合わせれば、どんな魔道具にでもなるという優れものなのですよ〜。電子部品でいうCPLDやFPGAみたいなものですね〜』
「よくそんなもん作ったな……」
『このくらい、朝飯前ですよ〜?……ほら、アトラス〜?人の機嫌を取っている暇があるなら、さっさと手を動かしてください。サンプルは1つより2つ〜。2つよりも3つ〜。より多いほうが、様々な情報の分析が可能になるのですから〜』
「しゃぁねぇな……(やっぱり、ダメか……)」
アトラスは妹の機嫌を取ることに失敗したことを悟ると、彼女の言う通り、手当たり次第、その場にいた魔物たちを狩り始めたようである。
ただし、金色のリングをできるだけ傷つけないようにしつつ、その場を血の海に変えながら……。
グォォォォォ!!
ゴガァァァァ!!
ドゴゴゴゴゴ!!
…………zzz。




