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8.3-25 セカンドコンタクト13

「もしかしてこれは……私に対するあてつけですか?」ゴゴゴゴゴ


「「ひ、ひぃ?!」」


写真に眼を通した途端、妙な雰囲気を纏いながら、曇りのない晴れやかな笑みを浮かべたカタリナの姿を見て……フォークで刺した肉料理を、再び、皿の外に落としてしまった様子のヌルとソフィア。

そんな2人にとっては、カタリナのその微笑みが、よほど恐ろしいものに見えてならなかったようである。


一方。

ビクセンが魔族たちにとってどのような人物なのか知らず、その上、普段からカタリナに慣れ親しんでいる者たちにとっては、ビクセンとカタリナが似ていようが、あまり気にならない話だったようだ。

……まぁ、一周回って、カタリナならありえる……と考えている可能性は否定できないが。


「あ……ほんとに、カタリナお姉ちゃんにそっくり……」

「どっぺるげんがー、ってやつかもだね……」

「ほう?イブ。随分と難しい言葉を知ってるんだな?兄ちゃん、嬉しいぞ?」

「いや、もうそのパターン、イブはもう十分かもdもがぁぁぁぁぁ!!」


「あと、違う部分って言ったら……白衣の隙間から、シュバルが飛び出てるか出てないかくらいじゃない?」


「…………」にゅる?


頭と思しき突起物をカタリナの白衣の隙間から見え隠れさせて、部屋の中やその場にいる者たちを興味深げに眺めているシュバル。


そんな彼(?)のことを眺めつつ……ワルツは間違い探しをするように、その場にいたカタリナと、小さな絵画に書かれたビクセンの姿を比較した。

それはもう、マジマジと、である。


するとカタリナは……


「…………///」かぁ


何か恥ずかしいことでもあったのか、顔を真赤にして、顰め面を浮かべてしまったようだ。

そんな彼女の事が微笑ましかったのか、ワルツは小さく笑みを浮かべた後で口を開いた。


「ま、偶然じゃない?カタリナが違うって言うんだから、違うんでしょ?きっと」


ワルツのその言葉に、


「すみません。ワルツさん……」


と、一旦は安堵したような反応を見せるカタリナ。

しかし彼女は……その表情を晴らすこと無く、続けてこう口にする。


「ですけど……ビクセン様、と言われるのが、気になって仕方ないんですよね……。テレサ様みたいに、記憶が欠けているわけではないですが、どうも一致しないですし……。ビクセンの教会とか、町並みの風景とか……」


「別に良いんじゃないの?数年も町にいなければ、見た目くらい、大きく変わるでしょ。っていうか、うちの王都を見てみなさいよ。たった数日いないだけで、王城が無くなったり、巨大な構造物が建ったり、大きな木が生えたり、王女が死んでみたり……色々変わるんだから」


「んぐ?」もぐもぐ


「そうですね……」


テレサが美味しそうに食事を頬張っている姿を見て……というわけではないようだが、カタリナはワルツの言葉を聞いて、苦笑を浮かべた。

自身の記憶に整合性が無い事に、未だ不安が消えたわけではないようだが……彼女は、少なくとも、自分が魔王ビクセンではないか、という懸念に対して、無駄に頭を悩ませるのは止めたようである。




「テレサ……。魔王って、いったい何なのかしら?」


「む?そりゃ……魔族たちがおる地域で、国王をしておる者たちのことではなかろうかの?それと……妾が知っておる限りじゃと、今のところ、女性しかいなさそうじゃの」


「そうなのですの?逆に人間側の領域では、国王は男性しかいないのでは……」


「いや、エクレリアの(あるじ)は、アル○○ルという話じゃから、そうとも言い切れぬのではなかろうかの?まぁ、部下(すいりゅう)たちからは『魔王』と呼ばれておるみたいじゃがの……」


と、料理の最後に出てきたデザートをつまみながら、会話を交わすテレサとベアトリクス。

その際、テレサが、アルタイルの名前をスムーズに誤魔化したわけだが……それがあまりにも滑らかな滑舌(?)だったためか、ベアトリクスは単に名前を聞きそびれてしまっただけだ、と思い込んだようである。


すると、2人のその会話に、食後の紅茶を楽しんでいたワルツが入り込んできた。


「それよね……。アル○○ルはなんか例外な感じがするけど、国王とか魔王とか、ホント不自然なのよね。こっち側の……人間側の領域だけで行われている魔女狩りとかさ?」


と、以前、自分も巻き込まれた魔女狩りについて口にするワルツ。


そんな『魔女狩り』は……人間側の領域において、ある一定以上の魔力を持った女性たちばかりを狙ったものだった。

しかし、魔族側の領域では、ヌルやソフィア(?)、それに魔王ベガの例にあるように、どんなに強い魔力を持っていても、彼女たちが迫害されるような制度も法律も存在しなかったのである。


ワルツには、『魔王』が女性ばかりであることと、『国王』が男性ばかりであること……それに人間側の領域だけにある『魔女狩り』の存在が、無関係だとは思えなかったらしく……。

彼女は続けて、こんな仮説を口にし始めた。


「で、こう考えてるわけよ。もしかして魔女狩りって、人間側の領域に魔王……いえ、女性の国王を誕生させないためにしてるんじゃないか、って。もしかしたら、安直すぎる推測かもしれないけどさ?」


それを聞いたテレサは……難しそうな表情を浮かべながら、こう返答した。


「なるほどのう……。もしも、大きな魔力を持った女性たちが、そこら中にぞろぞろ居ったとするなら……今頃、このオリージャや、エンデルシアも、首脳は女性だらけになっておるはずじゃからのう……。……いや、本来、そうなっておらねばおかしいはずなのじゃ。身内の女性たちを見ておる限り、そうとしか思えぬ……。じゃが、そうすると……人間側の領域において、妾たち――いや、ミッドエデンという国は、他の国にとって、煙たがられる対象になっておるのではなかろうかの?特に、例の『神』や『天使』などと自称する者たちにとっては、頭の痛い国のはずなのじゃ」


そう言ってから、チラッ、とルシアに対して、視線を向けるテレサ。

するとそこには、デザートの冷凍稲荷寿司を美味しそうに頬張っているルシアの姿が……。


「ん?ふぁに()?」もぐもぐ


「い、いや、なんでもないのじゃ……」


今、食事を食べたばかりだと言うのに、更なる炭水化物を摂取しているルシアの姿を見て、胸焼けしてきたのか、ゲッソリした表情を浮かべるテレサ。


まぁ、それはともかくとして……


「そうね……。そう考えると……エンデルシア国王が言ってた『気をつけろ』って忠告は……それを指して言ってたのかもしれないわね……」


ワルツはそう口にしながら……皿に載った最後のひと切れのケーキを挟み、今なお睨み合っている(?)様子のヌルとソフィアに視線を向けて、眼を細めたようである。


そこにいたのは、化物でも何者でもなく、ただ魔力が強いだけの女性2人で……。

そんな彼女たちが、人間側の領域にいるという『神』たちによって、『魔女』として処刑される理由が……ワルツにはどう考えても、分からなかったようである。


もしも、化物がどうこうという話をするのなら……彼女以上に、その話が当てはまる人物は、この世界には存在しないはずなのだから……。

昨日は耳に違和感があって、音が聞こえにくかったのじゃ。

こう、風邪を引いた感じでのう?

じゃから、早めに寝たのじゃ。

すると、朝はまだ調子が悪かったのじゃが、昼には治っておったのじゃ。

それ自体は結果的に問題なかった、と言えるじゃろう……。


じゃがのう。

一つ問題があるのじゃ。

……今度は歯が痛いのじゃ。

もう、ダメかも知れぬ……。


まぁ、それは置いておいて。

今日の話では、さらっとこの世界が抱える闇(?)について、触れたのじゃ。

それがどんな意味を持つのかについては、まだ先の話じゃがの?

問題は……いつも、書くタイミングを逃しておることなのじゃ……。

これから先で、その本質をちゃんと書けるか……それが心配なのじゃ……zzz。

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